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<リニア輸出>政府、米に5000億円融資提案
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140105-00000001-mai-pol
毎日新聞 1月5日(日)7時15分配信
安倍晋三首相が昨年2月、オバマ米大統領とワシントンで会談した際、ワシントン−ボルティモア間に超電導リニア新幹線を導入する構想について、総工費の半額を国際協力銀行を通じて融資する意向を伝えていたことが分かった。日本政府関係者が明らかにした。総工費が約1兆円と見込まれるため、日本政府は首相が再訪米した昨年9月までに、5000億円規模の融資を米側に追加提案した。実現すれば日本政府の対外融資で最大規模になる。【宮島寛】
JR東海はリニア新幹線の特許技術の無償提供を米政府に申し入れ、首相はリニア新幹線導入を「日米同盟の象徴」と位置づけ、昨年2月の日米首脳会談で実現を提案した。しかし、融資に言及したことについては両政府とも公表していない。
米国のリニア新幹線構想は、ワシントン−ニューヨーク−ボストン間(約730キロ)の3都市を結ぶ。このうちワシントン−ボルティモア間(約60キロ)を早期開業区間としている。現在、この区間は約1時間かかるが、リニアを導入すると15分程度に短縮できる。
首相は昨年9月の訪米時に講演した際も、リニア新幹線について「日本では東京と名古屋間で開業に向けた準備が進んでいる。その前に、まずはボルティモアとワシントンをつないでしまおう」とアピールした。
日本政府関係者は「大統領は前向きだ」と話し、2014年11月の米中間選挙前にも判断する可能性があると見ている。ワシントン−ボルティモア間は東京−名古屋間(約286キロ)より大幅に短いため、14年中に計画が具体化すれば、27年開業予定のリニア中央新幹線を追い抜き、世界初になるとの見方もある。
一方、日本政府が行った対外融資では、12年末に契約した4250億円(1ドル85円換算)が最大。オーストラリアの液化天然ガス(LNG)事業に対する融資だった。日本は資源権益を獲得する目的以外で同規模の融資を実施したことがなかったが、同盟強化を重視する首相が押し切った。
日本としては、リニア技術が海外で採用されれば、国内関連産業の裾野が広がり、リニア中央新幹線の導入コストを引き下げるメリットも期待する。首相のブレーンであるJR東海の葛西敬之会長は14年4月、代表権を持つ名誉会長に就き、国際交渉に専念することもあり、官民挙げての働きかけが加速しそうだ。
【ことば】超電導リニア
日本だけが開発に成功している世界最速の次世代陸上交通システム。特殊金属をマイナス269度に冷やし、電気抵抗をゼロ(超電導現象)にして強力な磁力を発生させ、車両を10センチ浮かせて時速500キロ台で走行する。中国・上海などで運行中の常電導方式より最高速度が100キロ程度速い。JR東海は2027年に東京−名古屋間、45年に名古屋−大阪間で超電導リニアを開業予定。
◇資金・世論 米側に課題
安倍首相がリニア新幹線の輸出を目指し、オバマ大統領に巨額の融資案を示したのは「日米同盟の絆強化」という狙いが大きい。破格の提示に「大統領も導入に前向き」(日本政府関係者)とされるが、米側が資金をどう調達するかなど課題は多く、本格化する事前協議がヤマ場になる。
「この計画は従来のインフラ輸出とは次元が異なる。米国民の生活様式を一変させ、日米同盟の絆の証しとする大構想だ」。首相官邸関係者はそう語る。ワシントン−ニューヨーク間をリニア新幹線で結べば移動時間を3分の1にでき、航空会社は近距離便を高収益の長距離便にシフトできるメリットもある、と話す。
JR東海もリニアの特許技術を無償供与する方針を表明。「米国が、虎の子のステルス機技術を開放するような」(大手行幹部)踏み込んだ提案に、オバマ大統領は昨年2月の日米首脳会談で公式にリニア構想に「関心」を表明した。
しかし、ワシントン−ボルティモアの先行開業だけで建設費を回収するのは難しい。建設費の調達に米政府の関与は不可欠だが、歳出増につながる政策のハードルは低くない。
日本政府やJR東海は、米国要人と接触し、リニアの利点を説明するなど地ならしを進めている。ただ、長距離移動には航空機という意識が米国民には浸透している。首相官邸筋は、実現性について「米国民がどれだけ有益性を理解するかにかかっている」と話している。【宮島寛】
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