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正義が恐怖の的になっている、と石田衣良氏
石田衣良氏 日本にも「物乞いする子ども」が出現すると危惧
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140104-00000008-pseven-soci
NEWS ポストセブン 1月4日(土)7時5分配信
NEWSポストセブンの年始恒例企画、直木賞作家石田衣良氏へのインタビューをお届けする。「2013年、世界は日本化した」。(取材・構成=フリーライター神田憲行)
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2013年は世界中が「日本化」して苦しくなったと感じました。「日本化」というのは、低成長、デフレ、格差、国の債務の大膨張の4点セットですね。ダメになるときはみんな同じ経路をたどる。景気が悪くなって中間層が削られて下にどんどん落ちていって、権利とか頭、アイデアで稼げる人が安い労働力を使ってどんどん収益を上げていくというのが全世界の共通パターンです。
日本ではそれを「格差社会」と呼んでいますが、去年、フランスのリヨンでブックフェスティバルに参加して驚くような経験をしました。向こうのジャーナリストにインタビューを受けていて「格差社会」と私が言うと、現地のフランス人通訳が「訳せない」というのです。「ピラミッド型社会でいいですか?」と言われました。リヨン滞在中、あちことで子どもの物乞いをみました。先進国にそんな人たちがいることも衝撃的で、もう「格差」というのはフランスでは当たり前だったんですね。アメリカや日本のようにぶ厚い中間層がいてみんな自由で、という感じではなかったんだな。
格差社会の嫌なところは、ヘイトスピーチのような民族主義が頭をもたげてくるところです。これは生活保護バッシングと同根だと思います。
いま日本人の中で正義感がものすごく敏感なものになっている。自分は辛い苦しい生活だけど「正義」を貫いて生きている。そこにちょっと豊かだったり不正義が社会にあると、猛烈な嫉妬心で叩きまくる。今の若者は非正規労働者が多い。バイトして生活していたら、憎しみがたまるのも仕方ないんですよね。自分たちのアガリをかすめて良い暮らしをしている奴らがいるわけですから。正社員でも若い人はどこでも死ぬほど働かされますから、彼らも怒りがたまっていく。いまいちばん怖いのは「正義」ですよ。今の社会の恐怖の的は「正義」ですね。
自分を相対化してみる目も、なかなか育ちにくい。みのもんたさんの問題もそうなんですよ。バッシングを始めると集団で歯止めがきかない、思考停止してしまうところが私たち日本人の中にすごくあると思うんです。あの流れのなかで「そこまで叩くこともないんじゃない?」とひとりも言えない。みんな正義とか世の中の暴風雨のなかには立ち向かえない。今の日本ではある種引いた目だったり、世の中を相対化したり、時代性をもって見る目がもう機能していないなというのが、実感です。今の社会は次から次へとターゲットを探しているからそれに当たってしまうとどうしようもない。
社会に恭順の意を示すかどうか。いまだに世間が王様なんです。なんの罪もなくて裁かれるのが日本なんです。いまだに法の前に徳がある。その徳っていうのがすごくいい加減なんだよなあ。
ヘイトスピーチみたいなのは日本だけじゃなくて、どこの国でも出てきているんですね。これからもう一段階景気が悪くなってくると、民族主義者、伝統主義者が政治の世界に入ってきますから、どうなりますかね。まるで100年前に様変わりした気がします。帝政ドイツが経済的に大成長してヨーロッパの序列を揺るがすようになる。それで第一次世界対戦になるんですが、支配体制の違う新興国・中国が出てくるということと似ている。
中国が戦うとなると、一人でやることになるから、周りがみんな敵になる中でひとりで戦争始めるほどバカじゃないと思うんですよ。ただ日本が戦争しないかってというと、それもわかんないなあ。ヘイトスピーチみたいな21世紀の文明国ではもうないよねということが平気で起きてますから、先祖返りする可能性も捨てきれないんだよなあ。
今の日本人は疲れすぎていて、景気が良ければあとはなんでもいいよという気分なんです。ヘイトスピーチは怖いんですけれど、それよりもっと中国・韓国への恐怖感と嫌悪感があるので……。ただ2013年はアベノミクスの「陽の部分」で来年はどうなるかわからないですね。アベノミクスで上はどんどんよくなるけれど、真ん中から下の人には回ってこない。正社員の給料は上がってもアルバイトの時給は上がらない。本当はこんな急激な円安は本当はアメリカは絶対に認めるはずがなかったんですけれど、中国が怖いし、日本の国力を上げるために円安を認めるよと容認してくれた。ある意味で「中国バネ」が効いているわけで、アベノミクスは運が良かった。
フランスのリヨンでは物乞いする子どもが多くて辛かった。でも日本もあと何年かするとそうなるだろうと思います。(談)
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