http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/738.html
Tweet |
榊原英資『これから7年、先読み! 日本経済』〜第2回〜 3〜5年のうちに日本の国債が暴落することはないが・・・
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37924
2014年01月03日 現代ビジネス
榊原英資『これから7年、先読み! 日本経済』第1章より一部抜粋
■3〜5年のうちに日本の国債が暴落することはないが・・・
消費税については、第3章で改めて論じますが、ここでどうしても強調しておく必要があるのは、日本経済の将来を考えれば、現在の財政状況を続けるわけにはいかない、ということです。
いま、国債・借入金・政府短期証券の残高を合計した「国の借金」が1,000兆円を突破しました。
2013年度の政府予算フレームは、丸めた数字で歳入が93兆円。内訳は税収43兆円・その他収入4兆円・公債金43兆円・年金特例公債金3兆円です。公債依存度という「借金依存度」は実に46.3%に達しています。歳出の93兆円のうち国債費という「借金返済額」は22兆円で、一般的な経費として使うことができるのは70兆円強にすぎません。
12年度の当初予算は、歳入が90兆円で税収42兆円・公債金44兆円でしたから、基本的な構造は同じです。自民党政権だろうが民主党政権だろうが、46〜47%を国債という借金に依存する政府予算のフレームに変わりはないのです。
ところで、消費税を5%から10%に上げたとき見込まれる税収増は10兆円程度です。だから、年42〜43兆円の借金を32〜33兆円程度まで減らせるだけで、まだまだ国の赤字は巨大なままです。
結論は明らかで、将来的には消費税を15〜20%くらいまで引き上げなければ、日本国はやっていけません。現在そんな財政状況にあるわけですから、消費税の増税はどうしても避けられないことなのです。
いままでのところは、国の借金が1,000兆円まで積み上がっても、まだ何とかなっています。では、この状態を借金1,500兆円、2,000兆円とずっと続けていくことができるかといえば、絶対に無理です。
問題はタイムリミットがいつごろかですが、3年や5年ということはないでしょう。日本の財政赤字が積み上がった結果、国債が暴落するなどして国債市場が混乱する事態が、あと3年や5年で起こるかといえば、起こりません。
日本は家計の金融資産が大きく、国債残高は13年に対GDP比224%ですが、家計の金融資産残高(13年6月末現在1,590兆円)の対GDP比は290%以上ありました。
この残高はボーナスが出た直後は大きくなりますし、株価が上下しても変動します。さらに家計の負債が357兆円ありますから、これを差し引きした正味(1,233兆円)で考えると、家計の金融資産残高の対GDP比は250%前後で、国債残高の対GDP比224%をやや上回っています。
上回っている限りは、まだ大丈夫です。家計の預金や保険・年金準備金(掛け金)は、回り回って国債の購入に向かっていますから、国債の引き受け手に余裕があります。国債市場が暴落などで混乱することは、まだしばらくは考えられないのです。
ただし、だからといって、放っておいてよい状況ではありません。何の手も打たなければ、10年後は危なくなります。このままの状態が10年続けば、そのときは国債市場の混乱がありうると考えて、いまから手を打たなければなりません。
■なぜ国の借金が増えて、国民の貯金が減っているのか?
というのは、いまから20年ほど前、1984年くらいまでは、日本の家計貯蓄率は15%以上と高水準でした。しかし86年に14%を下回り、バブル経済崩壊直後の91年と金融危機直後の98年に先行き不安から貯蓄がやや増えた以外、貯蓄率はほぼ一貫して下がっています。2001〜02年の4%前後が、08年には2%を割り込んでいます。
一方、国の財政赤字は、この10年間で毎年平均30兆円ずつ増えました。とくに11〜13年の3年間は、東日本大震災の影響もあって毎年50兆円ずつ増えています。
ですから、政府の財政赤字は着々と積み上がっているのに対して、国民の金融資産の積み上がりは、それほど大きくありません。両者の残高の差は、だんだん小さくなっていきます。差がほとんどゼロに近づけば、危機的な状況になってしまいます。財政の立て直しは、そのときまでに必ず断行しなければいけません。
貯蓄率低下の背景について、ちょっと解説しておきましょう。
背景の一つは、急激に進む高齢化です。みんな現役時代に貯蓄に励み、引退後は貯蓄を取り崩して生活しますから、高齢者が増えれば貯蓄率は下がります。1970年代に年金などの社会保障制度が整ったことも、その後の貯蓄率を低下させました。
もう一つ大きな背景は、70年代以降に住宅ローンや消費者金融制度が整備され、さらに最近クレジットカードが普及して、貯蓄の必要性が薄れたことです。とくにITの発展でネット通販が普及し、アマゾンや楽天市場などでパソコンを通じて買い物をするなど消費しやすい社会になっていることが大きいでしょう。
10年ほど前までは、銀行から現金を引き出して東京・秋葉原や大阪・日本橋に出かけ、値下げ交渉をして冷蔵庫やテレビを買ったものですが、いまは価格コムで調べてカードで買います。カードでは「リボ(リボルビング)払い」という分割払いもできますが、これは平たくいえば借金で、昔の月賦と同じです。しかし、月賦の時代にあった何となく後ろめたい不名誉な感じは、リボ払いにはありません。もう数十万円や数百万円といった現金(円)を我慢して貯めるのは必要ないのです。
さらに、グローバル化などによって格差が広がった結果、年金でギリギリの生活をする高齢者や、非正規雇用で年収200万円以下といった若者など、貯蓄する余裕のない人が増えたことも、貯蓄率の低下につながっています。
日本がまだ貧しかった1952年、「貯蓄増強中央委員会」という組織がつくられ、政府、地方自治体、日銀、民間金融機関などと協力して盛んに貯蓄奨励をやっていました。
これは88年「貯蓄広報中央委員会」に、さらに2001年に「金融広報中央委員会」と衣替えして、貯蓄運動も消滅しました。かつて銀行はよく貯金箱をオマケにくれたものですが、最近では一向に見かけません。
第3回に続く
榊原英資(さかきばら・えいすけ)
1941年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。大蔵省入省後、ミシガン大学で経済学博士号取得。IMFエコノミスト、ハーバード大学客員准教授、大蔵 省国際金融局長、同財務官を歴任。97年〜99年財務官を務め、「ミスター円」の異名をとる。慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、青山学院大学教 授、財団法人インド経済研究所理事長。2004年より高校生向けの合宿研修会「日本の次世代リーダー養成塾」を定期的に開き、日本の将来を担う人材の育成 にも携わっている。著書に『「通貨」で読み解く世界同時恐慌』(アスコム)などがある。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。