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榊原英資『これから7年、先読み! 日本経済』〜第1回〜 2014年、2%成長は充分可能だ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37922
2014年01月02日 榊原英資『これから7年、先読み! 日本経済』第1章より一部抜粋 :現代ビジネス
■2014年、2%成長は充分可能だ
これから7年、日本経済は、いったいどうなるでしょうか。この問いに私は、本書でわかりやすく答えていきたいと思います。
2013年には、安倍晋三政権のアベノミクス、いわゆる「3本の矢」のうち、2本が放たれました。異次元の金融緩和と積極的な財政出動です。これが功を奏して、円相場は円安方向に動き、日本の株価は上昇しました。第2章で詳しく論じますが、通信簿をつけるとすれば5段階評価で「5」を差し上げよう、と私は高く評価しています。やや気がかりですが、避けることができない消費税増税については、第3章でお話ししましょう。
日本は13年9月、2020年オリンピック東京大会の招致に成功しました。早速、その効果が生じてゼネコンやスポーツ関連の株価が上昇し、首都圏のインフラストラクチャー整備や観光立国への期待がふくらんでいます。これについては、第4章で見ていきます。
さらに、アメリカとヨーロッパ経済については第5章、中国とインドといった新興国の経済については第6章で見ていきます。
しかし、「14年は、一言でいえばどんな年になるのだ?」「細かい話はあとでじっくり読むから、14年の日本経済は明るいのか暗いのか、それをまず教えてほしい」という読者が少なからずいるのではないか、と思います。
そこで、まず結論から申し上げることにしましょう。
14年は、日本経済にとってとてもよい年になる、と私は考えています。
14年はGDP(国内総生産)でおそらく2%を超える経済成長が可能だ、と私は見ているのです。
12年度(12年4月〜13年3月)のGDP成長率は実質1.2%、実額519.7兆円でした。四半期ごとに見ると、12年4〜6月▲0.3%(▲1.2%)、7〜9月▲0.9%(▲3.5%)、10〜12月0.3%(1.1%)、13年1〜3月1.0%(4.1%)です。▲はマイナス、カッコ内は年率換算です。
ようするに、日本の経済成長は、安倍政権の誕生が確実視された12年秋からはっきりプラスに転じ、13年春には年率換算で4%という高成長でした。年度を通してならせば1.2%成長だった、ということです。
13年度は4〜6月の実質成長率(季節調整済前期比)が0.9%(年率換算3.8%)でした。これは内閣府・経済社会総合研究所(国民経済計算部)が13年9月9日に発表した2次速報値です。7〜9月は11月14日発表の1次速報値で0.5%(同1.9%)でした。なお、10〜12月の1次速報値は14年2月17日に発表される予定です。
こうしたプラス成長が、消費税増税が始まる直前の14年3月まで続くから、13年度のGDP成長率は2%台後半になるだろう、というのが大方の予測です。13年8月2日に発表された日本政府による見通し(平成25年度の経済動向について)も「平成25年度のGDP成長率は、実質で2.8%程度、名目で2.6%程度と見込まれる」としています。
ところが、その後は伸び率が鈍化し、14年暦年(1年間)の成長率は1.2〜1.3%程度と予測する調査機関が多いようです。右の政府見通しにも、平成26年度1.0%程度という参考試算の数字が紹介されています。
しかし、私は14年暦年に実質2%成長を続けることは充分可能だ、と考えています。
■私が「政府見通しよりも高い成長を続けられる」と考えるこれだけの理由
2014年も2%程度の成長を続けることができる。そのように私が考える第1の根拠は、積極的な金融緩和が続くからです。
黒田東彦(はるひこ)・日銀総裁が「異次元の金融緩和」と表現し、消費者物価上昇率2%の「物価安定の目標」を2年程度を念頭に早期に実現する、金融市場調節で年間60〜70兆円の資金供給量増加を目指す、などと表明したのは13年4月4日でした。日銀の黒田さんは2年間の金融政策をコミットしたわけで、これが15年4月まで続きます。
ということは、現在の為替レートの水準、つまり1ドル=100円台前後(13年11月29日現在102.40円)は、その時点まで基本的には維持される、と考えてよいのでしょう。
もちろん、主としてアメリカ経済の動向によって95円に近づくようなケースもありえますが、流れがそう大きく変わるとは考えにくいのです。
日本の日経平均株価を見ても、13年は最安値1万398円(1月9日)から1万6,000円近く(5月23日に最高値1万5,942円)まで一貫して上昇しました。本書を執筆している13年11月には再び1万5,000円を超えました。
ここまで株価を上昇させた推進力は、基本的に外国人買いです。日本の機関投資家というのは、もともと非常に保守的で慎重ですから、まだ様子見の段階です。13年秋にはまだ市場に参加していませんから、日本の機関投資家が本格的に入ってくれば、さらに上昇する可能性があります。
第2の根拠は、いま申しあげた円安のせいもあり、日本企業の業績が好調だからです。
株価がさらに上昇する可能性があるというのも、企業のパフォーマンスが株価をフォローしているからです。業績が好調なのは、円安の恩恵を受けるメーカーなど輸出企業だけではありません。復興需要が本格化してきたうえに、積極的な財政出動の恩恵を受ける国内企業の業績も、好調に推移しています。
円高から円安になると、しばらくは貿易収支が悪化し、一定期間が経過してから、貿易収支は黒字に向かって好転しはじめます。為替の「価格」は一瞬で動きますが、輸出入の「量」が動くには時間がかかるからです。グラフに描くと必ずJ字型になるので「Jカーブ効果」と呼びますが、これが本格化するのは13年後半から14年にかけて以降だ、ということも考えに入れておくべきでしょう。
第3の根拠は、自民党・公明党の安倍晋三政権が安定しており、その経済政策に対する国民の期待も続いているからです。
安倍政権の外交・安全保障政策は、周辺国を刺激しすぎる面がなきにしもあらずだ、と私は思っています。尖閣諸島や竹島など領土問題で譲ることはできないし、いわゆる従軍慰安婦問題はいつまで謝罪外交を続けてもキリがないというのは、そのとおりです。しかし、それは日本国民が腹の底にしっかりすえて思いを共有していればよく、わざわざ表に出して中国や韓国を刺激する必要はないでしょう。
外交・安全保障面を除けば、安倍政権が打ち出している経済政策に異論はほとんどありません。消費税増税も仕方がありません。アベノミクスは続いていくと思いますし、そのことが2%成長を可能にするのでしょう。
もちろん国際社会では、予測しがたいさまざまなことが起こりえます。あとで見ていくように世界経済は減速に向かっていますから、それが日本経済の成長にマイナス要因として働くこともあるでしょう。しかし、日本経済が世界のなかで、とくに先進国のなかで非常によいという状況は、2014年も続くでしょう。
■消費税増税によるマイナス影響は、それほど深刻にはならない
第4の根拠は、消費税増税によるマイナスはそれほど深刻にはならないだろう、と私は比較的、楽観視しているからです。このことは、各調査機関より私のほうが高めの経済成長を予測している理由の一つでしょう。
というのは、2014年4月に消費税が5%から8%に上がることは、以前から決まっていました。しかも、年金や医療に巨額な政府支出が必要であることに加え、東日本大震災の深刻な状況もあって、国民の過半数が消費税増税もやむなしと考えています。そもそも増税は前政権時代に、民主党と自民党・公明党が与野党一致で決めたことでした。
ですから、これはすでにマーケットに織り込み済みの話です。織り込み済みの増税ならば、ネガティブなインパクトはそれほど大きくないはずで、大騒ぎするのはマスコミくらいでしょう。
若干は物価が上がるでしょうが、その程度の話であって、しかも一時的です。5→8%と、8→10%の2回上がっても、物価上昇率の前年比何%増が毎年続くわけではないのです。もちろん増税直前に駆け込み消費が発生し、増税直後に消費が落ち込む反動はありますが、その後も消費が大幅に落ち込んだままということはない、と私は見ています。
第2回に続く
榊原英資(さかきばら・えいすけ)
1941年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。大蔵省入省後、ミシガン大学で経済学博士号取得。IMFエコノミスト、ハーバード大学客員准教授、大蔵省国際金融局長、同財務官を歴任。97年〜99年財務官を務め、「ミスター円」の異名をとる。慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。2004年より高校生向けの合宿研修会「日本の次世代リーダー養成塾」を定期的に開き、日本の将来を担う人材の育成にも携わっている。著書に『「通貨」で読み解く世界同時恐慌』(アスコム)などがある。
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