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網で魚をすくいとる/(C)日刊ゲンダイ
脱サラ希望者も急増中 本紙記者も漁船に乗って「漁師」を体験!
http://gendai.net/articles/view/life/146975
2013年12月31日 日刊ゲンダイ
「魚が逃げてるじゃねえか! もっと網を引け!」。ベテラン漁師の怒号が飛ぶ。船内にさらに緊張感が走る。若手漁師が歯を食いしばりながら、必死に網を引く――。
■戦闘服はカッパ、長靴、ゴム手袋
三浦半島(神奈川)の漁場で、日刊ゲンダイ本紙記者が厳しくも温かい漁師の仕事を体験したのは11月末。
近年、脱サラ後、定年後の再就職先として漁師になりたいと考える人が増えているという。漁師の就業斡旋をする全国漁業就業者確保育成センターによると、東京で13年に行われた漁業就業支援のセミナーには400人ほどが参加した。
「昨今の不況で一般企業の給料は下落傾向。東京や神奈川など大都市のサラリーマンの参加も増えている」(同センター)
記者は沖合で定置網漁(沿岸にある魚の通り道に網を仕掛けて捕獲する漁法)を行う初声漁協(三浦市)に漁師体験を申し込み、漁師として必須の「カッパ」「長靴」「ゴム手袋」の3点セットを購入。出航前日、まだ見ぬ大海原に気持ちが高ぶっていく。
しかし翌朝、記者は自然に対する人間の無力さを痛感させられる。早朝4時、初声港に到着すると、台風並みの強い風が吹き荒れていた。
「この風では船は出せない。今日は中止です」
初声漁協の山崎組合長から無情の通告を受け、記者は思わず膝から崩れ落ちた。
三浦半島は前夜から強風が続いた。このまま出航すれば、船が転覆する恐れがあるという。特に冬場は、日本海に低気圧が停滞すると太平洋には南西から強い風が吹く傾向がある。そんな日は漁はできない。漁師たちは漁船の塗装をするなど、雑務をこなすしかない。
その後、2度の中止を経て、いよいよ出航の日がやってきた。風は強くなかったが、波は決して穏やかではなかった。
「今日はちょっと海が荒れてますから、いい記事が書けますよ」
と、山崎組合長も気合十分。12人のメンバーは、高卒から漁師になった10代から60代まで幅広い。記者は“戦闘服”に着替え、定員10人程度の小さな漁船に乗り込んだ。
漆黒の海は荒れ、激しい波が船を襲う。波しぶきでズブ濡れになりながら、15分後に何とか漁場に到着。出航前、「船酔いには気をつけろ」と言われていたものの、あまりの揺れにすでに気分が悪い。
■想像を絶する網の重さ
2隻の船が縦100メートル×横200メートルの仕掛け網の両サイドに。加えて補助作業をするボート2艘(そう)がスタンバイ。網を船にくくりつけると、漁師が一斉に網を引き始めた。掛け声も何もない。慌てて記者も網を掴む。
瞬間、海に引きずり込まれそうになった。
「何じゃこりゃー!」と記者は思わず大声を上げた。網の重さがとにかくハンパない。感覚的には20〜30キロくらいだろうか。まるで海の中から巨大怪物に引っ張り込まれるような……。
腕がもげそうだ。疲れ果てて一瞬、網から手を離した。隣で作業をしていた40代の漁師Bさんから、「手を止めちゃ駄目だぞ」と声を掛けられた。
出航前、Bさんからこんな話を聞いていた。
「前は某水産会社の社員として、市場でマグロの仲買人をやっていた。20代の頃に金を貯めて、世界一周やってね。そんで日本に戻ってきて。でも、仕事もなかなか見つからないし、漁師をやろうと思ったんだ」
脱サラして漁師になったBさんから、「まだ半分!」「もうちょいだ!」と、励まされながら、必死で網を引き続けた。30分くらい経っただろうか。網の中で魚が姿を見せ始めた。前方にもう1隻の船が近づいてくる。
記者は度肝を抜かれた。<バシャ、バシャ、バシャ!>サバ、アジ、カンパチ、イワシ……。網が手繰り寄せられるにつれ、無数の魚たちが激しい音を立てて躍り狂うのだ。
各漁師が船上を縦横無尽に動き回り、それぞれの持ち場につく。海に落ちたら死の危険すらあるというのに、うねる波をモノともせず、船からボートに飛び乗り網を扱う漁師の姿は圧巻だった。
「よし、揚げろ!」
ベテラン漁師の掛け声で捕獲が始まった。クレーンを使って魚をすくい上げ、氷が敷き詰められたクーラーボックスに入れていく。魚がビシャビシャ跳びはね、大量の氷水と魚のうろこが記者を襲う。
■ものになるのは10人に3人
すべての魚を収容し終えた。2.5トンの大漁だった。記者は船にへたり込んだ。緊張感から解放されたからか、一気に船酔いに襲われた。
「顔が真っ白ですね?」
山崎組合長の心配する声にも生返事しかできない。「何で、こんな大変なことを……」と後悔の念にさいなまれつつ、景色を見た。そこには、朝日に輝く富士山がそびえ立っていた。
朝焼け空に見える富士の山。まるで、葛飾北斎「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」ではないか。
船酔いに襲われつつ、力いっぱい網を引いたこと。圧倒的な魚の躍動。そして漁を終えた後の漁師たちの笑顔……。激しくも温かかった海での戦いを思い返し、自然と涙がこぼれた。
「漁師になりたいとウチに来て、モノになるのは10人中3人くらいです。漁師はチームワークが大事。体力勝負のところもあるが、自分から仲間に溶け込んでいって何の仕事をやればいいかを考えて動けるか。どんな仕事でも同じだと思います」とは、山崎組合長。
その日の夜、おすそ分けしてもらった大量の魚を仕事仲間で食べた。身が透き通った新鮮なアジの刺し身を口に放り込んだ。今まで食べたどの魚よりもウマかった。漁の苦労が報われた気がした。漁師になるのも悪くないと思う自分がいた。
■漁師転職Q&A
Q/漁師になるには?
A/直接、募集をかけている漁協に面接のアポを取る。漁業体験を行う漁協もある。漁師の仕事を知りたければ、全国漁業就業者確保育成センターが年に数回実施する「就業支援フェア」や各都道府県が開催する説明会に参加してみるのも手。実際に漁協との面談の場もある。ちなみに14年2月8日に東京、2月15日に大阪で開催予定。
Q/給与は?
A/漁協によってさまざま。今回、記者が体験した初声漁協は月給20万程度で、漁獲量によって歩合がプラスされる。月100万円程度の歩合がついたこともあるとか。
詳細は「漁師.jp」のホームページに掲載されている。
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