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ますます難しくなる安倍政権の財政運営 2014年度予算案 国債費の膨張に歯止めかからず
http://toyokeizai.net/articles/-/27470
2013年12月28日 長谷川 高宏 :東洋経済 記者
「財政健全化と景気回復の優先順位はどちらが高いかといえば、経済成長のほうが高い。(これは)はっきりしている」(麻生太郎副総理兼財務相)――。
経済成長と財政再建の両立は可能とする安倍首相。2014年度の政府予算案は、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字幅を前年度から5兆円超改善し、新規国債発行を1.6兆円減らすとした。「2020年度のPB黒字化」の国際公約達成への道筋は依然として見えないが、「対GDP(国内総生産)比でのPB赤字を2010年度から半減する」という2015年度の目標達成が視野に入ったとして、安倍政権は自信を深めている。
前年度比5.2兆円のPB改善は、欧米のバブル景気を背景に日本もプチバブルに沸いた2007年度の6.8兆円に次ぐ水準。それを可能にしたのは、いうまでもなく消費増税である。
■ PB改善は消費増税によるもの
税収は、同じく2007年以来7年ぶりに50兆円の大台を回復するが、前年度比6.9兆円の税収増の中身のうち大半の4.5兆円が、安倍首相がギリギリまで最終判断を先送りし続けた消費税率の引き上げによるもの。安部政権はアベノミクスの成果を強調したいところだろうが、景気回復による法人税や所得税の伸びは、あくまでも副次的要素に過ぎない。
しかも、そうした税収見込みは、民間予測を大幅に上回る強気の経済成長率が前提だ。2014年度の実質GDP成長率見通しは、民間予想の平均が0.8%なのに対して、政府は1.4%を掲げている。
■ 予算執行の遅れで成長率は下方修正
優先させるとした経済成長は、本当に思惑どおりに実現できるのか。
予算編成が大詰めに向かいつつあった2013年12月。先行きに不安を抱かせる統計データが公表されている。速報値で1.2%だった2012年度の実質GDPが、国民経済計算確報で0.7%へと0.5ポイントも下方修正されたのだ(景気実感に近いとされる名目では0.3%のプラス成長から0.2%のマイナス成長に転落)。
理由は公共事業が推計を大幅に下回ったこと。深刻な人手不足から入札が成立せず、予算執行が思うように進んでいないのである。もちろん安倍政権の10.2兆円の大型補正予算が成立したのは2013年2月下旬であり、この低成長に対する責任のほとんどは、その前の民主党政権に帰する。だが、安倍政権もまったく無関係とは言い切れない。
建設業界での人手不足というボトルネックはアベノミクスによって一段と深刻化しており、公共工事の入札不調は全国で続発している。予算の執行は滞りがち。2013〜2014年度にかけても、政府の経済成長見通しが未達に終わるリスクは否定できないのではないか。
財政出動による景気浮揚が思いどおりにいかなくなれば、税収も見込み違いとなる。おまけにGDPの絶対額が下振れすることによって、対GDP比のPB赤字縮減は政府の見積もりを下回る可能性が強まってくる。
では、想定する成長率が実現できれば、政府が掲げるような財政再建との両立が出来るのか。実は単純に喜んでもいられない現実がある。
そもそも、2014年度予算案でも税収が増えたわりに国債の新規発行額が減らなかったのは、国債費が増加したから。つまり、これまでに発行した国債の利払いや償還費用が足を引っ張っているのだ。
■ すでに国債費の管理は難しくなってきている
よく知られるように、日本の財政を圧迫しているのは、医療や介護、年金など高齢化で増え続ける社会保障費。だが、前年度比での歳出増加額を主要経費別に見てみると、国債費は1兆円で、社会保障費の1.4兆円に次ぐ。やり玉に挙がることの多い公共事業費6832億円と比べても、1.5倍もの増え方だ。
「毎年1兆円」といわれてきた社会保障費の自然増は、2014年度に関していえば6000億円程度。自然増という意味では、国債費がすでにナンバーワンの財政悪化要因になっている。
一般会計予算を見れば、国債費だけで23.2兆円と全歳出の約4分の1を食われ、うち利払い費だけで1割を使い果たす状況だ。一方の歳入サイドは公債金が41.2兆円。毎年半分近くを国債発行(借金)に頼り、借金が積み上がる構図から抜け出す見通しはまったく立っていない。日本銀行による異次元緩和によって異例の超低金利がこのまま続いたとしても、政府債務の総額が増えるにつれて国債費は自動的に膨れ上がっていく。
さらに問題なのは今後、金利にも上昇圧力がかかってくる可能性が高いことだ。経済再生・デフレ脱却を目指す安倍政権は物価上昇率2%を目標に掲げ、緩やかなインフレを起こすとしている。今後、意図したとおりに物価上昇が本格化していくとしたら、金利も上がるのが通常の姿だ。
確かに足元では、日銀による国債の大量購入によって国債市場が事実上、機能不全に陥っているため、10年債の利回りは0.7%程度と低位安定。金利が上昇基調にある米国やドイツとは対称的な状態が続いている。とはいえ、日銀も永遠に国債の大量購入を続けることはできないだろう。いずれは、米国のQE(量的緩和政策)縮小が問題になっているのと同じく、日本でも異次元緩和の出口論が国債市場の波乱要因となるはずだ。
意図したような成長率が実現できなかった場合でも、安倍政権の財政運営は高い経済成長率を前提としているだけに、財政悪化への不安感が高まり、金利への上昇圧力となる可能性がある。
要は、どちらに転んでも今後は、積み上がった借金を前に、国債費をどうコントロールするかが、極めて悩ましい問題になってくるということだ。
■ 金利上昇に直面するリスクも高まっている
もちろん、大幅な金利上昇となれば致命傷である。政府も、あらゆる政策を総動員して金利を抑え込もうとするだろう。だが、累積した国の借金はあまりに大きい。少しの金利上昇ですら、財政運営には無視できないインパクトをもたらすだろう。
一方で、歳出削減の余地はといえば、公共事業予算はこれまでに行った圧縮の悪影響が目立ちはじめ、減災・防災や国土強靱化の必要性が叫ばれるに至っている。オリンピックに向けたインフラ整備もあり、当面は増加傾向だろう。防衛予算も、北朝鮮の政情不安や尖閣問題などから膨張方向への圧力がかかる。社会保障費は、爆発的なスピードで高齢化が進むため、増加幅を抑制するだけで精一杯だろう。つまり、歳出カットは重要な課題とはいえ、そこにはおのずと限界がある。
毎年度の借金依存度を継続的に低下させるには、同時にかなりの規模で税収の拡大も進めなければならない。2015年10月に予定されている10%への消費税率の引き上げどころか、その先の増税を実現しないことには、立ち行かないのが現実だ。安倍首相はこれまで増税議論の矢面に立つことを避け続けてきたが、そろそろ逃げ回るわけにも行かなくなるだろう。
政権発足から1年。アベノミクスの3本の矢が放たれた当初から指摘されてきた金利上昇のリスクを前に、安倍政権の財政運営はいよいよ正念場を迎える。
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