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日産、業績低迷で加速するゴーン社長の孤立〜コミットメント経営の弊害、社内外で不満高まる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131228-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 12月28日(土)7時54分配信
日産自動車は11月1日、志賀俊之COO(最高執行責任者)が代表権を持った副会長に退く人事を発表した。この“電撃的解任劇”以降、カルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)への不信が、同社内外でかつてなく広まっているという。そんな不安をかき立てているのが、「ゴーン社長の『コミットメント(目標必達)経営』の迷走と強気の弁明、日産向けとルノー向けのダブルスタンダードの使い分け」だと、業界関係者のひとりは指摘する。
この指摘を裏付けるかのように、12月16日付日本経済新聞は今回の志賀COO退任の舞台裏を次のように報じている。
「ゴーンが業績の(14年3月期通期における業績下方修正の)報告を受けたのは会見(=11月1日)の4日前。その前の週に日本入りしていたにもかかわらずだ。通期業績を引き下げるのは2年連続になる。このままでは自身が掲げてきた『コミットメント経営』が揺らぐ。(略)(ゴーンは)ナンバー2を8年間務めた志賀のCOO退任を決めた」。
同記事内で日産関係者は「ゴーン社長は世界で最も多忙な経営者。日本にいる時間は平均すると月に5日ぐらい。昔のように社内を見て回る時間はない。経営はいきおいレポートで判断せざるを得ない状況にある」「ゴーン社長の機嫌を損ねる数字は隠したり、報告を先延ばしする風潮が蔓延している」と打ち明けている。ゴーン社長は日産と仏ルノーのトップを兼任し、さらに今年6月にはロシア最大の自動車メーカー、アフトワズ社の会長にも就任しているためだ。
また、12月18日付同紙によれば、11月20日の東京モーターショーでゴーン社長は、北米での業績低迷に関し「米国でトヨタ自動車に負けぬ投資をし、ホンダを上回る製品があるのに追いつけない。何かがおかしい」と会場に詰めかけた報道陣にまくし立てたといい、ゴーン社長のいらだちの原因について、次のように解説している。
「米国市場でトヨタの『カムリ』に対抗すべく日産は新型『アルティマ』を用意していたが、予定通り出荷できないことにあった。その理由は、16年度750万台の世界販売を目指す日産が、平均で6週間に1回、世界中のどこかで新車が発売される過密スケジュールを組んでおり、それに一部の部品メーカーが追いつけていない」。
「アルティマ」は北米市場の戦略車であるが、社内から十分な情報が入ってこないゴーン社長の前のめりな計画が災いして部品調達不足になり、生産開始が計画より遅れ、販売機会ロスを引き起こしている。のみならず、追い打ちをかけるように今年3月にエアバッグの欠陥が発覚、4月から12万台超のリコール(無償修理)に追い込まれた。これで同社は約300億円のリコール費の出費を強いられた。
日産関係者は「ゴーン社長の鼻息をうかがい、役員たちが世界販売を11年度の480万台から16年度に750万台へと、一挙に56%増もの無理な計画を立てた当初から、現場では誰もが計画は狂うと思っていた」と、アルティマ不振の要因を打ち明けている。
●「コミットメント経営」の弊害
ゴーン社長の掲げる「コミットメント経営」の弊害も、このところ目立っている。
日産は現在、11年6月に発表した中期経営計画「日産パワー88」で、17年3月期までに世界シェア8%(12年3月期は6.2%)、売上高営業利益率8%(同5.6%)の目標を掲げている。
志賀COO退任を発表した11月1日の記者発表でも、ゴーン社長は「『パワー88』が正しい計画であり、目標達成に向け集中する」と何度も繰り返していた。だが、業界内には「身の丈以上の高い目標を設定し、それを達成するコミットメント経営への執着こそが、業績低迷の根本原因」と指摘する声が多い。
また、市場関係者のひとりは「日産は必達目標を重視するあまり、利益が出にくい体質になっている」と次のように説明する。
「13年上期(4-9月期)連結ベースで、販売台数が前年同期比3%増えたが、車1台当たりの営業利益は逆に5.2%減少した。『パワー88』はシェアと売上高営業利益率を8%に引き上げる経営計画だったはずだが、『シェア追求優先、利益追求後回し』になっているようだ。ちなみに、14年3月期の同社業績予想でも売上高営業利益率は4.8%にとどまっている。ゴーン社長が『パワー88』の見直しをせず、今のコミットメント経営を続ければ、日産の業績低迷は昔のように常態化する可能性がある」
●ゴーン社長のダブルスタンダード
今の日産にとって、コミットメント経営以上に悩ましいのがゴーン社長の「ダブルスタンダード」といえるかもしれない。
今年2月下旬、日産と取引している部品メーカーが一堂に集まった場で、日産の13年度国内生産計画が提示され、会場がどよめいた。日産はそれまで、部品メーカーに対して「国内100万台生産体制は死守する」と、当時の志賀COOがことあるごとに言明してきたにもかかわらず、日産がその日に示した計画は95万台だったからだ。円高による国内生産コストの上昇抑制が目的だったが、部品メーカーの間には日産への不信感と、「いつ調達を減らされるかわからない」の不安感が広まった。
このように日産では常に「合理的経営判断」を行うゴーン社長であるが、ルノーに対してはまったく対照的な“やさしい”姿を見せている。
ゴーン社長が05年、日産兼任でルノーのトップに就任して策定した中期経営計画「コミットメント2009」では、世界販売台数をそれまでの年間250万台から330万台へ引き上げる目標が打ち出されているが、労働時間増になるとの労組の反対などで頓挫した。11年に策定し直した中計では、13年に世界販売台数を300万台とする緩い目標に修正したが、12年の販売実績は255万台で、過去10年間「250万台ペース」はほとんど変わっていない。
こうしたゴーン社長の経営の下、欧州経済危機の影響もあってルノーの業績は低迷、12年度決算で自動車部門は2500万ユーロの営業赤字に転落した。13年1-6月期もルノーは1億ユーロの純利益を確保したが、これは日産から約8億ユーロの収入があったからと見られている。
かつてはゴーン社長を送り込むなど日産の救世主であり、親会社同然のルノーが今では日産の重荷になっている。それにもかかわらず、「コミットメント経営を振り回して日産には厳しく、ルノーにはリストラひとつ断行できないゴーン社長のダブルスタンダードに対し、日産社内では冷めた空気が広がっている」と業界関係者は指摘する。
そんな中での志賀COO解任劇。別の業界関係者は「近年は『不在社長』のゴーン社長をけなげに補佐し、実質的に経営を切り盛りしていた志賀さんの職務を分担することになった3名の副社長は、いずれも部下の能力を引き出せない減点主義者やゴーン社長の顔色うかがいに熱心な平目役員たち。志賀さんに代わってゴーン社長を補佐できる器ではない」と評する。
一方、経営コンサルタントの大前研一氏は、今のゴーン社長は「外交官活動」にうつつを抜かしていると指摘し、その一端を13年11月13日付「nikkei BPnet」記事で次のように書いている。
「モロッコでは国賓級の扱いを受け、現地に部品メーカーがないのにタンジールに工場を建設している。ブラジルではすでにルノーの工場があるのに、リオデジャネイロにマーチとヴァーサのために新工場を建設している。ブラジル育ちというゴーン社長の『個人的地元恩返しではないか』と揶揄される所以である」。
側近であった志賀COOを切り捨て、社内の求心力が低下するゴーン社長。「バリュークリエーターの資質がないゴーン社長に率いられている日産は、商品戦略面でもトヨタ・ホンダと差別化できる新車開発力や技術力はない。このままでは存在感が薄れていた元の日産に先祖返りするしかないだろう」(業界関係者)との見方もある中、志賀氏解任の代償は高くつきそうだ。
そんなゴーン社長が経営の舵取りを担う日産は、業績的に「大手自動車メーカーの中でひとり負け」ともいわれる苦境から、脱却を果たすことができるのか、業界内の注目が集まっている。
福井晋/フリーライター
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