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これは経済版「尖閣紛争」だ 三菱東京UFJ・三井住友・みずほ 日本の三大メガバンクが「中国」に乗っ取られた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37880
2013年12月26日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
BBT大学教授田代秀敏と本誌取材班
日本は「中国と戦争ができる」防衛大綱を定めるが、その裏でひたひたと「紅い魔の手」が忍び寄っている。しかも日本の心臓部を掴んでいるのだから穏やかでない。中国の「経済戦」の実態を暴く。
■ナゾの大株主が現れた
11月23日に中国が突然、設定を宣言した尖閣諸島海域の防空識別圏は、新たな日中間の緊張を呼んだ。日中間には非常時の話し合いを行うホットラインもなく、12月2日に来日したバイデン副大統領も「日中間の衝突を懸念している」と述べた。また、安倍政権も特定秘密保護法案などに見られるように、中国と「戦争ができる国」への道を走り続けている。
このように日中間の緊張が、急速に高まっている。そんな中、非常にショッキングな事実を、われわれは突きとめた。
日本経済の屋台骨とも言えるのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱東京UFJ)、三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友)、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)の、いわゆる3大メガバンクである。何とこの3大メガバンクの事実上の筆頭株主に、中国の政府系ファンドが収まったというのだ。
にわかには信じがたい話だ。この3社の9月末日時点での大株主(トップテンの株主)の上位を確認すると、次のようになっていた。
●三菱東京UFJ
(1)日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社 5・21%
(2)日本マスタートラスト信託銀行株式会社 4・14%
(3)ザ バンクオブニューヨークトリーティジャスデックアカウント 2・19%
●三井住友
(1)日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社 5・07%
(2)日本マスタートラスト信託銀行株式会社 4・69%
(3)株式会社三井住友銀行 3・02%
(4)ザ バンクオブニューヨークトリーティジャスデックアカウント 2・42%
●みずほ
(1)日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社 4・80%
(2)日本マスタートラスト信託銀行株式会社 3・78%
(3)ザ バンクオブニューヨークトリーティジャスデックアカウント 1・95%
3行とも1位にランクされている日本トラスティ・サービスと、2位の日本マスタートラストは、メガバンクが中心になって設立した資産管理専門の信託銀行であり、いわば「身内」だ。見慣れないのは、三菱東京UFJとみずほの3位に、そして三井住友の4位にランクされている「ザ バンクオブニューヨーク……」(以下、BONYT JA)である。
話は、いまから6年前の'07年9月に遡る。北京オリンピックを1年後に控えた中国は、外貨準備が世界一の161兆円に達していた。
シンガポールが、政府系ファンドを設け外貨準備を投資に回し、高利回りで運用していることを伝え聞いた温家宝首相は、中国も同様の機構を作ることにした。そこで中国政府が国策投資会社として、外貨準備から17兆円あまりを拠出して設立したのが、中国投資有限責任公司(以下、中国投資)だった。中国投資の楼継偉会長は、今年3月に中国の財政大臣に抜擢された。
今年の年初に本誌が調査したところでは、中国投資はオーストラリアのシドニーに信託名義「SSBT OD05 Omnibus Account-Treaty Clients」(以下、「OD05」)を設立し、そこを隠れ蓑にした。その登記された住所へ行ってみると、そこは雑居ビルの小さな一室で、入り口のドアは閉ざされたままで、人の気配はなかった。郵便受けは空になっており、郵便物は他所に転送されていることが分かった。
■突然の名義替え
中国投資は世界中に投資しているが、尖閣諸島問題で中国が「敵国扱い」している日本も、例外ではない。
今年3月末、「OD05」は日本の上場企業167社もの大株主となっており、その時価総額は約4兆2000億円に達した。有価証券報告書に記載されない11位以下の株主であるケースも含むと、とてつもない規模で日本株を保有していると想定された。「OD05」の常任代理人(窓口となる銀行)は、当初は三井住友銀行であり、'09年9月からは、英国に拠点を置く香港上海銀行の東京支店になった。
ところが、今年9月末のデータで、「OD05」は少なくとも127社の日本企業の大株主から姿を消した。保有時価総額で見ると、1割以下の約3200億円に縮小した。大株主として残っている企業でも、多くは保有株数が半減している。
ところが、「OD05」と入れ替わるように、今年9月末、別の見慣れない信託名義が、多数の日本企業の大株主に躍り出ていたのだ。それが「BONYT JA」だ。
金融庁の資料で確認すると、「BONYT JA」が大株主になっている日本の上場企業は170社に達する。半年前に167社の大株主になっていた「OD05」と、ほぼ入れ替わった形なのだ。「BONYT JA」の常任代理人は、三菱東京UFJ銀行であることが多いが、みずほ銀行の場合もある。
そこで問題になってくるのは、「OD05」と「BONYT JA」の関係である。
例えば、9月末にこの両社がともに大株主になっているソニーは、四半期報告書で同一の注記を付け、「主として欧米の機関投資家の所有する株式の保管業務を行うとともに、当該機関投資家の株式名義人」と説明している。
この説明から、両社が「同一(形態)」であることが推察されるが、前述のように「OD05」は、「欧米の機関投資家」ではなく、中国投資の信託名義である。
また、「OD05」が大量に売却した日本株を、中国以外の世界の機関投資家が、「BONYT JA」を通して買ったという仮定は無理がある。
なぜなら、運用資産額が昨年末に約50兆円に達した中国投資に代わって、日本株を1兆円単位で保有できる機関投資家は、世界にノルウェイ、サウジアラビア、アブダビの政府系ファンドくらいだ。だが、いずれも買い進めた気配はないのだ。
このため、中国投資が「OD05」名義から「BONYT JA」へと名義替えを行ったと見るのが自然である。
■登記された住所は架空のもの
「BONYT JA」の住所は、EUの本部がある金融の本拠地ベルギーにあった。
本誌記者がその住所を訪れてみると、そこはブリュッセル市の東南に位置する金融街の一角にあった。モダンな大型オフィスビルが建ち並び、ブリュッセル公園や王宮なども徒歩圏内にある。国際的な銀行、保険会社、IT企業などがオフィスを構え、各国の大使館も固まって建っている。
だが、「BONYT JA」が登記された住所は、存在していなかった。
4年前に付近のビル群を解体した際、登記上の住所名称が変わったとのことだった。以前のこの住所には、ベルギーの日本大使館が入っていたことも判明した。
「BONYT JA」を管理・運用しているバンクオブニューヨークメロンの自社ビルは、付近に新しく建っていて、壁やフロアは、一面の大理石だった。
通りからは一切、中の様子を窺うことはできない。ビルの入り口にはデジタルのID認証が必要で、まさに鉄壁のガードを施している。
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時折出入りするのは、ヨーロッパ人のエリート行員ばかりで、中国人は見当たらない。オフィスの中は受付に二人と警備員が常駐していて、出入りを厳しく警備している。オフィスの中を覗き込んでも、中国人らしき人影はなかった。
このすぐ近くに、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行の関連会社がオフィスを構えていた。そこでこの2社に足を運び、「BONYT JA」と中国政府との関係、3大メガバンク及び日本企業の株を買い進める理由などについて訊ねた。だが2社とも、「特定の個人や企業情報に関してはお答えできません」と、丁重に断られてしまった。
本誌は、ブリュッセルで調査を進めていく中で、中国投資はベルギーと密接な関係にあることが分かった。
例えば、ベルギー国有の資産運用会社「SFPI-FPIM」は、中国投資と提携し、EUから中国の都市化関連事業の未公開株への投資ルートを作っている。昨年5月にブリュッセルで行われた提携の調印式には、中国から李克強筆頭副首相(現首相)と楼継偉中国投資会長(現財政大臣)が参列し、ディルポ首相と長時間の会談を持っている。
ともあれ、中国投資が3大メガバンクの株式を、4644億円も保有し、事実上の筆頭株主となっているのは間違いない。中国政府の狙いは、一体何なのか? そのヒントは、李克強首相が主導している上海自由貿易試験区にあった。
中国の経済発展は、'80年にケ小平が深圳などに経済特区を設置し、日本企業などを誘致したところから始まった。李克強首相は、現代版の経済特区を、9月末に上海に設置したのだ。
そのため、日本の3大メガバンクを上海自由貿易試験区に引き入れるのは、最優先事項である。実際、11月28日に、3大メガバンクに出張所開設の許可が下りていることが発表された。
3大メガバンクとしても、自由貿易試験区内では金利規制が撤廃され、資本取引が相当程度に自由化されるので、大きな利益を得ることができる。
例えば三菱東京UFJ銀行の決算短信を見ると、今年4月から9月までの半年間で、中国子会社の貸し出しが3月末から13・5%増えて1兆1289億円に達している。貸出先の大半は日系企業で、金利は6%を超える。そのため、利息収入だけで677億円も叩き出しているのだ。これほどオイシイ融資は、日本国内ではあり得ない。
これは、経済的に見れば、日中両国がウインウインの関係にあると言える。だが周知のように、日中間の政治リスクは、日増しに増大する一方だ。
■中国の思惑一つで日本は崩壊
今後、さらに日中間に緊張が増した場合、中国投資が3大メガバンクの保有株を一気に売却する恐れは捨てきれない。信託銀行と異なり、自分の意志で売却は可能だからだ。
実際、「OD05」は今年3月末時点で、トヨタの9番目の大株主で、保有株の時価総額は3001億円に達していた。だが半年後の9月末には、「BONYT JA」に引き継ぐこともなく、大株主から消えている。
もしも習近平主席の「鶴の一声」で中国投資が3大メガバンクの全保有株式を売却した場合、株価は急落し、自己資本比率が下がったメガバンクは貸し渋り、貸し剥がしに走る。その結果として、日本経済はたちまちのうちに行き詰まってしまうのだ。換言すれば、中国が日本の3大メガバンクの生殺与奪どころか、日本経済そのものの生殺与奪を握っていることになる。
本誌は3大メガバンクに対して、中国政府が実質的な筆頭株主になっていることへの見解を聞いた。各行の回答は次の通りだった。
「『BONYT JA』は、実質の株主である海外機関投資家の株式を管理している金融機関の名義であり、実質の株主についてはわかりません。一般論とはなりますが、内外の機関投資家に対して、IR活動を積極的に行い、当社の経営方針の理解を得て、当社株式を保有していただくことは望ましいことと考えています」(三菱東京UFJ)
「弊社株主の弊社に対する評価、投資行為については、コメントを差し控えます」(三井住友)
「株主の方々は、各自の判断によって投資活動を行っているものであり、個別企業による投資の多寡や良し悪しについて弊社としてコメントする立場にございません」(みずほ)
このように、3行とも「見えない株主のことは関知しない」という態度だった。そして3行とも、「上海自由貿易試験区への準備を進めている」と回答した。
重ねて言うが3大メガバンクは、日本経済の屋台骨だ。その実質的な最大株主が中国の政府系ファンドというのは、尖閣に先がけて日本経済を中国に乗っ取られたようなものなのである。
「週刊現代」2013年12月28日号より
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