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http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131223/wec13122318010007-n1.htm
2013.12.23 18:00
今月12日にまとまった平成26年度の与党税制改正大綱。軽自動車税の引き上げや給与所得控除の縮小といった家計への増税項目が目立つばかりか、消費税10%時の軽減税率制度をいつスタートするかの結論は出さず、対象品目の絞り込みも来年末に持ち越した。26年4月にはいよいよ消費税が8%に上がる。ずしりと増税の重みを実感する年だが、増税はこれで終わりではないようだ。大綱には「今後、内外の社会情勢の変化を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進める」との文言が明記され、さらなる増税に布石が打たれた。今度はいったい、どこからとるつもりなのか。
■「担税力」は何に?
133ページに及ぶ大綱の主文にあたる1ページ目の「税制改正の基本的考え方」の登場したキーワード「担税力」。税金が増えても、がまんできる経済力のことだ。お金持ちや土地などの資産を持っている人を思われがちだが、たばこや酒も嗜好品とみなされ、増税の検討対象になりやすい。
何が増税のターゲットかは、大綱ではつまびらかになっていないが、目下、新たな課税の有力候補にされそうなのが、携帯電話などの情報通信分野、海外からインターネットで配信されるゲームや書籍の電子商取引。パチンコといった娯楽分野だ。
実は“ケータイ増税”は以前から狙われている。東日本大震災後の復興財源の一つとして、「(1台あたり)1日5円から10円程度もらえば数千億円の規模になる」と、与謝野馨経済財政担当相(当時)がぶち上げたことがあった。具体化しなかったものの、携帯電話の通信会社などが払っている電波利用料の引き上げなどが取り沙汰された。
携帯電話の累計加入件数は1億3000件を超え、国民1人1台の時代。広く、薄く税金をかければ、お金持ちでなくても、負担には耐えられるとの考え方だ。しかも多少、増税で価格が上がっても、なかなか手放せない存在になったのが携帯電話。通信業界は、景気に大きく左右されにくい業種に育っていて、課税しやすいとの思惑も働く。
■海外取引には課税方針
海外でも、フランスの有識者委員会が今年5月、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末を販売する会社などを対象に課税する案を政府に提言。税収は仏文化の発信に役立つコンテンツの育成に充てる狙いで、実現すれば、米アップルやグーグルも課税の対象になるとみられる。
一方、財務省は海外からインターネットを経由して国内に配信される音楽やゲーム、電子書籍に消費税を課税する考えだ。現在は、海外の企業から商品を買えば消費税は非課税だが、国内企業から購入すると課税される。政府税制調査会で検討されており、来年に消費税法を改正して、27年度から適用する方向だ。
海外との電子商取引で昨年1年間で約247億円の税金を取り損ねているとの試算(大和総研)もある。インターネットを十分に使いこなせる世代が増えるにつれて、現状のままの税制だと、税収が漏れる穴がどんどん広がる。消費税分が割高になっているとし、日本の書籍販売会社などが「不公平だ」との声をあげるのはもっともだが、税金分は消費者が払うことになる。
娯楽分野への課税も復興財源として一時、浮上したことがある。「射幸税」ともいわれ、パチンコや競輪・競馬などを想定。さらに日本でカジノの設立が可能になれば、収益に対する税率をどう置くかが議論のマトになりそうだ。
■「損して得とる」はナシ
消費税率アップで社会保障費の財源の一部を手当てすることができたが、財務省はまだまだ増税の手綱を緩める気はない。基幹税である法人税率の引き下げの要望が経済界に根強いためだ。「消費税1%分を上げた負担を法人税でカバーするなら、5%程度(法人税を)下げないといけない計算」(SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミスト)ともいわれる。
消費税率の引き上げ後、半年程度は、マイナス成長に陥るとの見方が強く、景気刺激のための減税や財政支出を求める要望が高まるのは必至。26年度税制改正で復興特別法人税が1年前倒しで廃止さることになったが、東日本大震災後の復興予算がいらなくなったわけではなく、財源を工面する必要がある。
企業の活力を減税や規制緩和で、設備投資を刺激して持続的な経済成長のサイクルをつくろうとしている安倍晋三政権だが、「損して得とる」の発想に乏しい財務省は、減税の大盤振る舞いによる税金の食いっぱぐれだけは、なんとしても避けたいとの思いでいっぱいだ。
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