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有料会員制図書館が続々オープン、なぜ静かなブーム?民間企業が街おこしを担う例も
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20131223-00010003-biz_bj-nb
Business Journal 2013/12/23 15:20 山田ひとみ
かつて図書館といえば、学習や調べ物をするための誰にでも開かれた空間(学校図書館など一部を除く)であり、学びの場だった。
しかし近年、飲食ができないことや、館内で携帯電話を使用できないことなどが利用者の不満を誘発し、さらに、限られた開館時間によって、働く人にとっては足が遠のく存在となった。働く女性が増えたいま、利用者のほとんどは子ども、学生、乳幼児連れの保護者となり、静かな空間という代名詞すら今は昔の話。
そんななか、今、少しずつ増えつつあるのが「会員制図書館」だ。2003年に、森ビルが運営する会員制図書館「六本木ライブラリー」が、六本木ヒルズ(東京・港区)にオープンした。10年が経過したいま、30代のビジネスパーソンを中心に約3,000名の会員が利用している。
森ビルは、10年7月には「平河町ライブラリー」(東京・千代田区)、今年7月には「アークヒルズライブラリー」(東京・港区)をオープンした。このことから、確実に会員制図書館のニーズがあることは想像するに難しくない。
12年4月には大阪市で、司書が個人経営する会員制図書館として「ビズライブラリー」が開館した。
そこで今回は、なぜ会員制図書館の利用者は、近所にある無料の図書館ではなく、会費を払ってまで通うのかを探るべく、08年に渋谷区の複合施設ヒルサイドテラス内にオープンしたヒルサイドライブラリーを訪ねた。
●本がない街
ヒルサイドライブラリーは、渋谷区代官山に位置する。代官山は、1980年代後半より起こったバブル景気の末期以降、おしゃれな雰囲気の街並みへと変貌し、2000年以降は原宿・表参道エリアに次ぐ高感度なファッションタウンとして広く認知される街となった。ブティック、洋菓子店、レストラン、カフェなどの商業施設も多く見られるが、大部分は閑静な住宅街であり、住みたい街のアンケートなどでもしばしば上位にランクインする人気地域となっている。
ヒルサイドライブラリーがオープンするまでは、代官山には図書館や本屋がなかった。そこで、ヒルサイドテラスが「新たに本を通じて人がつながっていける施設をつくろう」と考え、会員制図書館・ヒルサイドライブラリーは誕生した。
本屋がなかった街。「それこそ本屋にする、というのでもよかったし、すべての人に解放した図書館でもよかったが、限られた空間を気持ちよく利用していただくために“会員制”というかたちを取った」とヒルサイドライブラリーのコーディネーター・前田礼氏は言う。そのなかで、自分たちにとってどういった図書館が望ましいかを検討した結果、ネットワークを生かして、人を介してつくり上げていくことをコンセプトにした。書架に並ぶ本は、各界で活躍する“目利き”が選書した、とっておきの本。それは、人の家にお邪魔した時に、そこにある本棚をのぞく楽しみに共通するものがある。
●本のない街から本の街へ
ヒルサイドライブラリーのオープンから3年半がたった11年12月、近隣に代官山T-SITEがオープンした。代官山T-SITEは、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が運営する書店だが、スターバックスコーヒーを併設し、コーヒーを飲みながら、そこにある本を自由に読めるというスタイルの店舗だ。
本を提供する施設としてライバル関係にあたりそうだが、前田氏は「人の流れが増え、街が活性化したことを、とても嬉しく思う」と語る。その根底には「“本”を通じて“人”がつながっていけたらいい」という、ライブラリー開設当時からのブレない代官山への愛情があるゆえの言葉だろう。
実際にヒルサイドライブラリーを訪れると、そこはこぢんまりとしたギャラリーのような空間で、静かな落ち着いた雰囲気だった。サロンも併設し、さまざまなセミナーやイベントを開催している。会員自身が勉強会、読書会などを企画して開催することもできる。現在の会員数は、法人・24組、個人183人。法人会員だけではなく、個人会員にも家族会員制度を設けており、会員になれば、その家族は誰でも利用することができる。
夏休みには、ビジネスパーソンが調べ物をしている横で、小学生が宿題をしている姿なども見ることができ、なかなか面白い空間になるのだそう。
●隙間産業でも差別化でもない
元図書館員の筆者は当初、会員制図書館とは、公共の図書館に足りないもの、欠けているものに目を向けた隙間産業なのではないかと考えていた。“公共”に甘んじる運営には、民間企業よりも時代を読む力や新しいものを受け入れる姿勢が確実に欠けている。だから「新しい本がない」「暗い」「飲食ができない」「携帯電話が使えない」など、いつまでも変化しようとせずに利用者の不満を誘発することもある。そのような不満を持つ利用者が、お金を払ってでも、もっと高いサービスを提供してくれる民間サービスに流れているのだろうと推測したためだ。
しかし取材を通じて見えてきたものは、そういったビジネス然としたものよりも、民間企業が街おこしを担う姿と、街やそこに住む人たちへの愛情だった。
東京の中でも、ひと際にぎやかな街、渋谷。人があふれるようにいるけれど、孤独な大都会。そんな喧騒から少し離れたところに位置する代官山と、そこにあるライブラリー。「ひとりになりたいけれど、孤独ではない」そういう場所をつくりたいと、前田氏は話してくれた。
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