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[真相深層]スーパー、需給ギャップ拡大
消費増税にらみ再編加速 店舗増加、売り上げは伸びず
製造業の業績不振を示す言葉だった「六重苦」。今は店舗過剰、円安に伴う原材料高、パート不足、建設コストの上昇などスーパーの苦境を映す。地方スーパーの体力低下が続く中、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は10日、岡山県地盤の天満屋ストアへの出資を発表。消費増税をにらみ、業界再編の動きが加速している。
16年連続の減少
「業績が悪い方が、好調時より説明しやすい」。11月中旬、中部が地盤の大手スーパー、バローが都内で開いた決算説明会。田代正美社長はこう切り出した。
自前の物流・情報システムを武器に低価格競争を仕掛け、デフレ時代の勝ち組として名を上げた同社も既存店売上高は2012年10月からマイナス。13年4〜9月期の連結決算は3年ぶりの最終減益に陥った。
次々に不振の要因を挙げた田代社長。震災復興と景気回復に伴う建築資材の値上がりを受け、「店舗の建設コストも1年前より上がっている」と指摘。「ビジネスモデルを変えなければならない」と言い切った。
バローと同じように価格競争力を武器に北海道、東北で買収攻勢をかけて急成長した北海道地盤のアークスも13年3〜8月期は営業減益となった。
日本チェーンストア協会によると、スーパーの既存店売上高は12年まで16年連続マイナス。それでも地域シェアの高いバローやアークスは強かった。その構図も崩れた。多くのスーパーは円安・原料高、異業種との競争激化、建設コストや電気代の上昇、パート社員の不足、食品市場の縮小の「六重苦」にあえぐ。
スーパーにとって、最も重要なのは価格だ。だが、現状の円安・原材料高ではメーカーが打ち出す値上げをスーパーも受け入れざるを得ない。特売のための販促費が削られる中、「集客力が低下している」(大手スーパー幹部)。低価格のプライベートブランド(PB=自主企画)は輸入品への依存が大きく、円安は収益を圧迫。価格戦略の自由度は失われつつある。
同じ日常消費でも単身世帯やシニア世帯をうまく取り込んだコンビニエンスストアに対し、4〜5人の家族向けのスーパーは成長不安がつきまとう。既存店の苦戦にもかかわらず、新店開業が相次ぎ、需給ギャップは広がるばかりだ。10月時点で10年前と比べると、スーパーは売り場面積が19%増える一方、売上高は14%減っている。
単独成長難しく
「最近は年商200億〜300億円超のスーパーを買わないかというM&A(合併・買収)の持ち込みが増えてきた」。アークスの横山清社長は話す。理由は14年4月の消費増税。さらに「ディスカウント競争が激化する」(横山社長)というのが業界の一般的な見方だ。単独での成長は難しいとみて、M&Aにたけたチェーンに支援を求めるスーパーが増えている。
実際に中堅・中小を中心にM&Aが目立ってきた。ヨーカ堂は7月にも北海道・十勝が地盤のダイイチに出資し、今月3日には同じ地区のいちまる(帯広市)をイオンが傘下に収めた。本業との相乗効果を見込む異業種もスーパーに目を付け、外食のゼンショーホールディングスはここ1年で首都圏の3社を買収した。
日本スーパーマーケット協会によると、加盟企業全体の10月の既存店売上高はプラス。しかし、店舗数25店未満の企業ではマイナスが続く。スーパー最大手のイオンリテールの梅本和典社長は「増税のインパクトは大きく、コストアップ要因も増えている。それを吸収するスケールメリットがさらにものをいう」と話す。
電気代をみても、スーパーでは前年比20〜30%の負担増。イオンはすでに全店の照明を発光ダイオード(LED)に切り替え、前年並みに抑えている。体力格差が広がる中、大手を軸にさらなる再編が進むのは間違いないようだ。
(編集委員 中村直文)
[日経新聞12月19日朝刊P.2]
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