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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131221/ecn1312211618003-n1.htm
2013.12.21
「中国を批判するなら世界貿易機関(WTO)から直ちに脱退せよ」「日米欧も対中ハイテク輸出を規制している」
今年10月、中国によるレアアース(希土類)輸出規制を不当として共同提訴していた日本と米国、欧州連合(EU)の主張をWTOが大筋で認め、中国へ是正勧告する中間報告をまとめたとの報道に、中国版ツイッター「微博」で一斉に反発の声が上がった。レアアースはハイブリッド車(HV)やIT(情報技術)機器に欠かせない材料で、日本企業はかつて、90%以上を中国産に頼ってきた。
WTOに2001年に日米欧の支援で加盟した中国は、その際、レアアース輸出税の原則撤廃を取り決めていた。だが、尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖での10年9月の中国漁船衝突事件を受け、日本などに事実上の禁輸措置を取り、“外交カード”をチラつかせてキバをむいた。
WTOは中国の約束違反を突いたが、実はWTOで審議が行われているうちに、中国にとり最大の輸出先だった日本が海外調達先の多様化やリサイクル技術開発など対中依存度を大幅に減らし、形勢が逆転した。
「輸出はボロボロ。お手上げだ」。中国のレアアースを扱う貿易会社の台湾人経営者(46)は嘆いた。中国政府が定めた今年の輸出枠は3万1001トンだが、実際の輸出量は半分以下の1万5千トンに届きそうにもない。輸出量が輸出枠を割り込むのは3年連続となる。
しかも、1トン当たりの平均価格が前年比60%以上も下落。内モンゴル自治区では7月、最大手の包鋼稀土高科技がレアアース鉱石選別場の操業停止に追い込まれるなど、中国レアアース業界は崖っぷち。WTOや日米欧を非難するネット上のコメントは、数年前まで世界を支配した「レアアース王国」崩壊の危機へのいらだちとも読める。
◆部品企業に合弁誘致
だが、中国は起死回生の戦略を練っている。「お手上げ」と話した台湾人経営者は2月、レアアース産地の江西省のある街の役所で、日本人のビジネスマン数人とすれ違った。「確か日本で会ったことがある」
この町で日本人を見るのは珍しい。経営者は地元政府の幹部を酒席に誘い、内部情報を聞き出した。「日本の自動車部品や電子部品の大手企業に、産地でのレアアース加工合弁事業を誘致している」。この時点で既に数社が積極的になっていたという。役所で見かけた日本人は以前、レアアースを納入した自動車部品大手の担当だった。
地元政府が描いたシナリオはこうだ。地元企業との合弁でHV向けの部品工場を江西省につくらせ、HVの製造に欠かせない最先端のレアアース加工技術を日本から持ち込ませる。高度な加工技術を手中に収め、輸出に頼らずにレアアースを国内で売る戦略だ。日本へのしたたかな巻き返しが始まっていた。
◆販売優遇を持ちかけ
自動車業界関係者は、こうした部品メーカーのレアアース産地への工場進出は、大手の完成車メーカーの意向に基づくと話した。中国は今年、歴史上初めて一国で新車販売台数が2千万台を超えることが確実。一方で昨年秋の反日デモによる不買運動で、日系ブランド車は中国で苦戦が続く。「江西省でレアアースを使う工場を建設する見返りに、中国でのHV販売の優遇措置を与えるとの取引条件を持ちかけられた」という。
こうした日本企業の引き込み作戦は江西省に限らない。別のレアアース産地の内モンゴル自治区や広東省でも、地元政府が電子部品大手の日本企業に対して、市場参入への便宜や税制面など優遇と引き換えに、門外不出だった高い技術を中国に持ち込ませる戦術に転換した。
中国の最高指導者だったトウ小平は1992年に、「中東に石油あり。中国にはレアアースあり」と豪語し、戦略性の高いレアアースの使い方を説いた。輸出が不調でも国内でレアアース産出から加工、製品化、販売まで完結でき、国際価格下落にも歯止めがかけられる、いわば反撃策。トウ小平の言葉は生き続けている。(上海 河崎真澄)
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