http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/556.html
Tweet |
(資料:日銀、FRBのデータにより作成)
アベノミクスによって円安になったというのは本当か?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131220-00030844/
2013年12月20日 15時5分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
第二次安倍政権になって1年が経過しようとしています。
アベノミクスによって日本経済は明るさを取り戻したようにも見える訳ですが‥では、本当にアベノミクスが功を奏したと言えるのでしょうか?
とはいっても、アベノミクスには3本の矢があり、その3つについて全てレビューする余裕はありません。本日は、その3本の矢のうちの金融政策について考えたいと思うのです。
いずれにしても、超円高が修正され円安がもたらされたという事実は、認めない訳にはいきません。
では、何故円安になったのか?
どうお考えになりますか?
アベノミクスというかリフレ派的な考えを支持する人々は、それはマネーを大量に市場に放出している効果だと主張するのではないでしょうか?
黒田総裁が4月4日の記者会見で、今後2年間でマネタリーベースを倍増すると断言したのは事実です。
では、日本のマネタリーベースがどんどん増加しているから円はドルに対して安くなったのでしょうか?
そうに決まっているだろうと思う人が多いと思います。
しかし、仮に日本のマネタリーベースが今年の春以降急増しているのが事実だとしても、それと同じように米国でもマネタリーベースが増加しているとしたら、どうなのでしょうか?
それでも、円はドルに対して安くなるのか?
そんなことはないですよね。米国ではマネタリーベースがそれほど増えない一方で、日本のマネタリーベースが増えるから円安になるのですよね。
では、米国では最近、マネタリーベースは増えていないのか?
グラフをご覧ください。
日銀と米連銀のバランスシートの増大ぶりを示したグラフです。まあ、それがマネタリーベースの増加ぶりを表していると考えてもいいでしょう。
ところで、日銀のマネタリーベースが今年の春頃から急増しているのは事実ですが、米国の場合には、昨年の秋頃から再び急増しているのです。どうしてでしょうか?
それは、まさにその時からQE3を実施し始めたからに他ならないのです。
つまり、最近まで日本と米国は、同じようにマネタリーベースを拡大し続けてきたのです。なのに、どうしてドルが強くなり円が安くなるのか?
おかしいでしょう?
確かに、市場にはアベノミクスの効能を信じる投資家も多いので、その意味で‥つまり心理的効果として円安が生じている可能性はあるのですが、こうして米国も日本と同じようにマネタリーベースを増やしているのですから、アベノミクス或いは異次元緩和策を実施しているから円安ドル高が起きているというのは筋が通らないのです。
では、何が円安の原因なのか?
やっぱりユーロ危機が一段落していることが最大の理由でしょう。つまり、一応危機が遠ざかった格好になっているので、逃避通貨としての円に対するニーズが急減しているのです。
ということで、そもそもマネタリーベースが通貨の価値を決める、などという単純な話は通用しないということなのです。
仮にマネタリーベースが通貨価値の最大の決定要因だというのであれば、米国は今でもこうしてマネタリーベースを急増させている一方で、ユーロ圏においては、昨年の夏ごろからバランスシートを縮小し始めている、つまりマネタリーベースを減少させているので、従って、ドルの価値がユーロに対して著しく低下しなければ話の辻褄が合わない訳ですが‥
グラフをご覧ください。
(資料:FRBのデータにより作成)
確かに、今年に入ってから、ユーロの価値がドルに対して上がってきてはいるのですが、その上がり方は比較的緩やかなものに留まっていて、それぞれのマネタリーベースの増減をしっかりと反映しているとはとても考えられないのです。
ということで、私は、日銀がどんどん国債を買い入れてマネタリーベース増やしているからといって、それで必ず円安が起きるという主張を受け入れることはできないのです。
ただ、その一方で、幾ら根拠のない考えであっても、そのような説を信じる人が市場に存在するならば、円安になることは十分に考えられるのです。
結局、市場参加者が合理的な発想をしないから今の円安が起きていると考えていいでしょう。
但し、繰り返しますが、最大の円安の原因は、ユーロ危機が遠のいているからでしょう。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。