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[ニューズウィーク日本版12・24 P.18]
ボルカー・ルールは銀行縮小の大きな一歩
金融危機を防ぐことを目的に作られた法律だがこのルールの重要性は別のところにある
オバマ米大統領が、アメリカの金融の在り方を抜本的に変える歴史的な金融規制改革法に署名してから3年余り。その中核となるボルカー・ルールを先週、FRB(米連邦準備理事会)など5つの金融監督機関がようやく正式決定した。
このルールは法律全体の中ではやや性質が異なつている。08年の金融危機とは直接関係がなく、それでいて銀行業界の規制を進めるには決定的に重要だ。
ポール・ボルカー元FRB議長は、70年代末のカーター政権から80年代前半のレーガン政権にかけてのインフレ退治で名を成した米金融界の巨人。民主党員でもあり、オバマが彼を経済再生諮問会議議長(当時)に据えて、その威光を借りようとしたのも無理はない。
ボルカーの意見は、当時のガイトナー財務長官やサマーズ国家経済会議委員長、バーナンキFRB議長らとは多くの意味で違っていた。だが、預金を預かる銀行はヘッジファンドまがいの投機的な取引をすべきではない、という彼の意見をオバマは気に入った。大銀行に批判的な政治家の支持もあった。
ボルカー・ルールはその後何年も、政治と官僚主義のはぎまでもまれることになる。
米議会は金融監督当局に対し、銀行が自己資金で株や債券の短期売買で利益を上げる自己勘定取引を禁じるルールをつくるよう命じた。だが一方で議会は、それと極めて似通った2つの取引は認めるよう求めた。1つ目はリスク回避のために債券を売買するヘッジ取引。航空会社が将来の航空燃料の値上がりによる損失を避けるために先物を安く買っておくのと同じだ。
もう1つは、銀行が同じ債券の買い手と売り手を同時に務めるマーケットメーキング(値付け)業務。通常、市場の取引を活発化させるために行う。
大銀行は儲けにくくなる
だが5つの金融監督当局は、こうした例外親定がいずれ巨大な抜け穴になることを懸念した。それから監督当局が一部で巻き返し、最終ルールは銀行の意に染まないものになつた。これをどう判断するかは、大銀行を気の毒と思うかどうかによる。
ボルカー・ルールは銀行の自己勘定取引を禁じた。ヘッジ取引も、投機の隠れみのになりそうなものは禁じられた。こうした取引が金融危機の大きな原因になっているというのが前提だが、あいにくその前提は間違っている。
金融危機前夜、銀行に巨額の損失をもたらしたのは、不動産価格が上がり続けると信じて行った住宅や商業用不動産への無謀な貸し付けだ。これはボルカー・ルールでは防げない。つまりこのルールは金融危機につながる具体的なリスクを防ぐためのものではなく、業界全体に予期せぬ綱をかけるものになった。
ある意味では、だからこそボルカー・ルールが重要なのだ。オバマが目指したのは金融システムを安定化することであって、巨大銀行の破綻リスクを回避することではない。だがボルカー・ルールの導入で、オバマは銀行の規模縮小への一歩を踏み出した。
政治的にも無理がない。銀行の大半は中小企業で自己勘定取引は行わないし、大銀行の競争力がそがれるのは中小の彼らにとって悪いことではないからだ。
今後も銀行部門のさらなる変革への支持が広がるとしたら、ボルカー・ルールのような厳格な規定がどんどん導入されていくだろう。
ボルカー・ルールだけでは不十分でも、似たようなルールが束になれば、大銀行が牛耳ってきたアメリカ経済のパワーバランスが変わるかもしれない。
マシュー・イグレシアス
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