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中国も賃金高騰。グローバル企業の進出余地はどんどん少なくなっている(写真は中国と北朝鮮の国境)
見えてきた資本主義の限界、寿命はあと何年か 新興国の成長率は10年後、3%にも満たない
http://toyokeizai.net/articles/-/26675
2013年12月18日 中原 圭介 :エコノミスト 東洋経済
資本主義の成長は、先進国を本拠地とするグローバル企業が、労働コストの安い新興国や途上国で大量に安い商品を作り、それを先進国で売りさばくことで成り立ってきました。
グローバル企業が進出することで、新興国や途上国では雇用が増え、経済成長を続けることができます。労働者の賃金水準も生活水準も上がっていきます。
■資本主義サイクルの宿命とは
ところが、賃金水準が上がるにつれて、その国で作られる商品は、国際競争力が徐々に低下していきます。価格での強みが失われていくからです。そこで、グローバル企業はさらに安い労働力を求め、別の新しい新興国や途上国で商品を作るようになります。
資本主義はこのようなサイクルを繰り返して、市場を拡大し、成長を続けてきました。IMFの2014年の予測では、世界全体の成長は3.3%に落ちています。その予測の内訳は、先進国が2.1%、新興国が5.4%です。アメリカの住宅バブル崩壊前は、世界経済で5%成長していたといわれています。
大雑把な内訳は、先進国が3%弱、新興国・途上国が8%弱、これで平均して5%だったわけです。世界経済の平均成長率は、先進国の低成長と新興国・途上国の高成長が埋めることによって成り立っているのです。
しかし、そういった資本主義の成長サイクルにも限界が見えはじめてきました。
中国ではすでに急激な賃金水準の上昇がはじまっていますし、東南アジアの賃金も、たとえばタイかインドネシアの中心部になると、中国の沿海部に肉薄してきています。
■少なくなってきた、フロンティア
労働コストがアジア最低水準にあるバングラデシュでさえも、工場労働者による賃上げストが頻発しています。新興国や途上国では、これまで以上に賃金の上昇に拍車がかかっていくでしょう。
世界のグローバル企業が新しく進出できる新興国や途上国は、もう残り少なくなってきています。
グローバル企業はすでに、東南アジアから南アジア、北アフリカや南アフリカに至るまで進出しています。ZARAやマクドナルド等、皆さんもおなじみの企業が、南アフリカを拠点に展開をはじめています。
資本主義のフロンティア開拓に残されているのは、もはや東アフリカと西アフリカ、アフリカ内陸部くらいしかありません。そこでも、早くから進出をはじめた中国や、地理的な条件で有利なヨーロッパ企業等が進出をはじめているほどなのです。
しかも、アフリカには治安の問題もあり、日本企業が進出するにはかなりのリスクを意識しなければならないでしょう。開発の進む北アフリカや、南アフリカなどは、まだ治安が極度に悪くないと思いますが、内陸部については、先に進出している中国やインド企業の従業員が身代金目的に誘拐されるという事件が多発しています。
また、近年は、テロ組織がアフリカに拠点を移しつつあるようです。その背景には、先進国の軍隊による駆逐作戦を受けたテロ組織がアフリカに逃れている、ということがあります。
■見えてきた、資本主義の限界
だから、日本の企業が本当にそういう場所に行っていいのかは、企業の経営者が「人の命の重さ」を見るのか「利益」を見るのか、という話になると思います。
グローバル企業が最後のフロンティアであるアフリカ全土に進出し、アフリカが高成長を達成して人件費が上がってくると、すべての伸びしろを失うことになります。このとき、資本主義の限界がはっきりと見えてくることが避けられないでしょう。
これ以上、安い労働力が手に入らない状況になったとき、資本主義はその成長の原動力を失ってしまうのです。おそらく、これから20〜30年以内に、資本主義の限界が意識されるようになるのではないかと思います。
実際、新興国・途上国の成長率についても、10年後にはおそらく3%にも達していないでしょう。その結果、世界経済の名目成長率は、20〜30年以内には1%未満、あるいは0〜1%の範囲内に収まってきてもおかしくない、と考えるのが自然な流れだと思います。
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