03. 2013年12月16日 15:34:47
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焦点:短観でわかったデフレ脱却の現実味、企業は増税が正念場 2013年 12月 16日 14:09 12月16日、日銀が発表した12月短観では、デフレ体質に変化が起きている姿が浮き彫りとなった。写真は2008年12月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao) トップニュース 焦点:米アップル、中国移動との販売提携後も顧客争奪戦に直面へ アングル:短観先行き小幅マイナスに市場反応、消費増税後の見方は交錯 午後の東京市場は円高/株安進行、日経平均一時250円超の下落 ドル102円後半、株安やさえない中国指標で圧迫 [東京 16日 ロイター] -日銀が16日に発表した12月短観では、デフレ体質に変化が起きている姿が浮き彫りとなった。大企業で先行していた値上げが中小企業にも幅広く浸透、販売価格の上昇が着実に進んでいることをうかがわせる内容だった。 民間調査機関でも物価見通しは月ごとに引き上げられており、日銀が掲げる物価見通しとの距離感は縮小しつつあり、一部では2%目標の達成可能性が高まっているとの見方も出ている。値上げ実施により企業の利益率も向上しているが、消費増税後の需要落ち込みを吸収できる体力を備えることができるのか、来春に正念場を迎えることになりそうだ。 <販売価格判断、資源高の08年に迫る勢い> 日銀短観でデフレ脱却を占う格好の材料となるのが、企業の販売価格判断。安倍晋三政権が誕生して以来、過去3回の短観では大企業も中小企業も上昇方向にシフトしてきた。企業が円安や建設関連資材高騰、人件費上昇などをコスト転嫁実施している状況が鮮明だ。 大企業では12月短観でこの勢いが止まったが、「すでに値上げが一巡した後のデータ」(伊藤忠経済研究所・主任研究員・丸山義正氏)との見方が出ている。特に非製造業では「下落」との回答を「上昇」が上回っており、価格転嫁は進んでいる。 素材業種では円安が再び進行し、仕入れコストが上昇しているが「それを吸収する余裕が大企業には出来ており、むしろ駆け込み需要を取り込もうと販売価格を据え置いているのだろう」(RBS証券チーフエコノミスト・西岡純子氏)との見方も出ている。 他方、中小企業の値上げの勢いは止まらない。建設関連に加え駆け込み需要のある卸売や小売にとどまらず、幅広い業種で上昇方向となり、足元の販売価格判断DIは資源高でDIが跳ね上がっていた08年に迫る勢いだ。 政策当局からは、これまで遅れているとみられていた中小企業の価格転嫁の動きが、景気回復など需給の改善もあり、広がりが出てきているとの判断も出ている。 <進む需給の引き締まり、高まるデフレ脱却の可能性> 企業の値上げが順調に進んでいる背景には、モノの需給が引き締まっていることがある。製品やサービスの需給判断DIは、特に国内で改善が進んでいる。 また、人手不足感も強まっている。雇用判断DIは非製造業で不足超過となっており、特に中小企業の非製造業はバブル期以来のひっぱく度合いだ。 「人手不足がここまで進むと、賃上げせずに人を集められない。値上げがどの程度通りやすいかが勝負だ」(JPモルガン証券・チーフエコノミスト・菅野雅明氏)と指摘されており、中小企業が人件費を価格転嫁せざるを得ない状況にあることがうかがえる。 こうした状況は、単に円安といった外部環境だけでなく、日本経済が需給面からのデフレ脱却を図る上で、一つの転機を迎えているともいえそうだ。 第一生命経済研究所・主席エコノミスト・熊野英生氏は「労働・財サービス市場の需給バランスが改善基調を強めて、企業の価格転嫁力が備わっていく姿になっている」と分析。 その上で「そのクライマックスは、4月の消費税率の引き上げであり、ここで企業の価格転嫁が促進されれば、その余勢を買ってデフレ体質からの脱皮に弾みをつけることができるであろう」とみている。 <日銀に接近する民間物価見通し> こうした変化を織り込んで、最新のフォーキャスト調査では、物価見通しが月を追って上方修正されており、14年度消費者物価見通しは消費税の影響を除き0.81%、日銀見通しの1.3%に徐々に近づいている。15年度は民間見通しが0.96%となり、こちらも少しずつ上昇している。 西岡氏は「CPIにおけるデフレの主な原因だったテレビなどの価格も上昇に転じており、そうした代表的な品目が上がり出すと、円安によるコスト上昇だけではなく、本当に物価が上がり出すとの期待が強まってくる可能性がある」と分析。「日銀が掲げる2%目標も、1年後に見れば、現実離れした数字ではなくなっている可能性も出てきた」と語る。 また、今回の短観では、大企業、中小企業とも経常利益率は大きく改善。中でも大企業非製造業は過去最高を記録し、15年間にわたったデフレ体質が大きく変化しつつある可能性を示している。 ただ、来春4月の消費増税の影響には不透明感が強い。住宅と関連する産業では、政策当局の想定を上回って駆け込み需要が生じている可能性があるとの見方も出ており、4月以降にその需要動向がどうなるのか、慎重に判断することになりそうだ。 外食産業など一部の非製造業では、消費増税に伴う値上げ後に売上高が急減することを懸念する声もある。食品は輸入品の割合が高く、すでに円安によるコスト増を合理化で吸収するのが難しくなっており、こうした業種では売上高減少が利益率の急低下を招きやすく、あるエコノミストは「アベノミクスが来年、成功しているかどうかは外食産業の業績が1つの判断材料になる」と指摘する。 今回の短観で示された脱デフレの流れが来年4月以降も継続するのか、その点が政府・日銀の政策動向を大きく左右することになるだろう。 (中川泉 取材協力:伊藤純夫 編集:田巻一彦) © Thomson Reuters 2013 All rights reserved関連ニュース 日経平均反落、先行き慎重な日銀短観が重し 日経平均反落、先行き慎重な日銀短観が重し 2013年12月16日 大企業製造業の業況判断DI、2007年12月調査以来の高水準=日銀短観 2013年12月16日 ロイター企業調査:消費増税「影響なし」7割、財政再建が最優先 2013年12月10日 焦点:正念場のアベノミクス、金融政策が再び切り札に 2013年11月20日 |