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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131216-00011395-president-bus_all
プレジデント 12月16日(月)9時45分配信
今年10月、札幌市内の衣料品チェーン「しまむら」で店員に土下座をさせて、その様子をツイッターに投稿した女性が強要罪で逮捕された。女性に前科がなく反省していたことから強要罪については起訴猶予になったが、追送検されていた名誉棄損で略式起訴されて、罰金30万円の支払いを命じられた。女性がクレームをつけたのは、同店で購入したタオルケット。30万円あれば、良質なタオルケットを何枚も買える。この女性にとっては、じつに高い買い物になった。
普段からお客に振り回されがちなビジネスマンは、悪質なクレーマーが強要罪で逮捕されたと聞いて大いに留飲を下げただろう。しかし消費者の立場に立つと、警察の対応を喜んでばかりいられない。企業のリスクマネジメントに詳しい浅見隆行弁護士は、「クレーマーを強要罪で逮捕するのは非常に珍しい」という。
「警察は民事不介入が原則。お店と客にトラブルがあっても、金品を脅し取るレベルになってようやく恐喝罪で逮捕するという対応が一般的でした。ところが今回は恐喝にいたる手前の段階で強要罪を適用しました。強要罪の構成要件は、脅迫や暴行によることと、義務のないことを行わせることの2点。警察にとっては使い勝手が比較的いい罪であり、今回の対応は非常に積極的な印象があります」
店員に土下座させる行為に強要罪を適用するのはいいが、正当なクレームと罪になるクレームの境目が曖昧だと、消費者はおちおちクレームをつけられなくなる。はたして、どこからがアウトになるのか。
「社会的相当性の範囲を超えると違法と判断されます。要は消費者が受けた被害と、企業に要求する内容や方法のバランスです。たとえ不良品をつかまされたという正当な理由があっても、数百円のタオルケットで店員に土下座をさせるのは明らかにバランスを欠いています」(同)
あくまでもバランスなので、土下座の要求が即、強要罪の成立になるわけではない。たとえば死亡事故があって遺族が加害企業の社長に土下座をさせたというケースなら、強要罪と判断される可能性は低い。結局はケースバイケースで常識を働かせるしかないようだ。
一方、企業は土下座を求めるクレーマーにどう対応すべきだろうか。相手の気が済んで丸く収まるなら土下座ぐらい平気だという人もいるかもしれないが、浅見弁護士は「土下座する必要はない」とアドバイスする。
「土下座しても相手の怒りが収まるとはかぎりません。また一度、土下座すると、他のお客からも要求される可能性が高まります。向こうに正当な理由があっても、“代金を返して、立って謝罪”が鉄則です」
注意したいのが、自分の要求をはっきり伝えないクレーマー。常習クレーマーは、慰謝料などの名目で金品を要求すると恐喝でつかまることをよく知っている。そこで言質を取られないよう「誠意を見せろ」などといって金品を暗に求めてくる。
「『誠意は? 』『社会的責任は? 』『顧客満足は? 』は、クレーマーが使うフレーズのベストスリー。相手の意図がわかっても、開き直って『これが私たちの誠意です』と通常の対応をすることが大切です。それでもしつこいようなら、バックヤードに合図を送って110番通報をしたほうがいい。警察は民事不介入ですが、通報するほど悪質なクレーマーにはきちんと対応してくれます」
文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=アサミ経営法律事務所弁護士 浅見隆行 図版作成=ライヴ・アート
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