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円安の天井どこに 歴史が示す6つの目安 編集委員 田村正之
http://www.nikkei.com/money/column/teiryu.aspx?g=DGXNMSFK1304E_13122013000000
2013/12/16 7:00 日経新聞
「為替を長期的な視点で見る場合、最も確かなのは購買力平価(PPP)。購買力平価では1ドル=105円(グラフAのd)程度が本来の安値の天井。ただし相場は一時的に行き過ぎるので、来年は110円程度まで行くかもしれない」と話すのは竹中正治龍谷大学教授。竹中教授は金融機関での為替ディーラーや国際通貨研究所のチーフエコノミストも務めた、理論と現場の両方を知るエコノミストだ。
みずほ銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストも「為替変動要因は短期は金利、中期は貿易収支などの需給、長期は購買力平価というのが国際金融のセオリー」と話し、購買力平価から105〜106円(グラフAのcなど)を年度内の円安の天井とみる。
購買力平価というのは、2つの通貨で同じモノを買える力が等しくなるように為替レートが決まるという考え方。この結果、インフレ率の高い国の通貨は買えるものが少なくなるので長期的に価値が下がり、為替レートは下落する。
グラフAでは、企業物価ベースの購買力平価を日米の物価統計などから計算してみた。購買力平価がずっと右肩下がりだったのは、ずっと日本が米国よりインフレ率が低く(あるいはデフレ)で、相対的に通貨価値が高まってきたからだ。
実際のレートは時期により購買力平価に比べ円高にも円安にも振れる。しかしいずれは購買力平価が示す中心値に戻ることを繰り返している。購買力平価からの過去の乖離度合いが、円安の天井を占う参考になる。
まず企業物価ベースの購買力平価は現在、約98円(グラフAのe)。ただし実際の相場は必ずしも購買力平価に沿って動くのではなく、過去は73年以降平均では購買力平価より10%円高だった。これが歴史的な中心値で現在87円(グラフAのf)。
つまり「現在の103円近辺は、すでにかなりの円安水準」(唐鎌氏)。それでも「貿易赤字への転落という大きな変化や、来年米国が緩和縮小に向かう一方で日本は緩和拡大という流れを考えれば、基本円安トレンドは続きそう」とみる。
90年以降、実勢レートが購買力平価よりもっとも円安に乖離したのは円キャリートレードが話題になり「円安バブル」とも呼ばれた金融危機前の07年夏で、7%円安方向に解離した。現在の為替にこれをあてはめると、105円(グラフAのd)となる。
ちなみにグラフAのcの経済協力開発機構(OECD)算出の購買力平価(106円)は、消費者物価がベース。国際取引のできない散髪代などサービス価格が含まれ、購買力平価の計算として妥当ではないという指摘もある。本来はグラフAのadefのように企業物価ベースで考えたいところだが、もちろんOECD推計値も重要な参考値の一つではある。
少し視点を変えてやや長期のチャートも眺めよう。過去、ドル円相場は52週移動平均で見ると、おおまかにはプラスマイナス15%の範囲で動いていた(グラフB)。5月の急激な円安時も、上限の15%をわずかに超えたところで急速に押し戻されている。
最近の円安の前にはすでに平均レートが円安に動いていたので、プラス15%にあたる水準は110円(グラフAのb)に切り下がっている。チャート上ではまだ円安の天井と言える水準まではきていない。
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「日銀のかくもとっぴな緩和を考えると、過去より大きく円安に乖離する想定も自然」と話すのはドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジスト。米景気の堅調という追い風に加え、やがて円キャリートレードが再び始まると見て、14年末に115円、15年末に120円を予想する。
ちなみに購買力平価との乖離が過去最大だったのは、82年に起きた26%の円安解離。この水準を現在にあてはめると124円(グラフAのa)となる。
ただし80年代前半は資本の自由化直後で国内生保がいっせいに大量のドル投資に動いた時期で、同時に米国が極端なドル高政策をとっていた。「この時期の乖離度合いまでいくのは少し考えづらい」(竹中教授)との見方もある。
米国がやがて緩和縮小に向かう一方、日本は来年の追加緩和が見込まれる状況を考えると、このさきも円安が続くという流れは自然に思える。「日米金利差の拡大見通しに基づくと来年後半には106〜109円まで円安が進みそう」(JPモルガン・チェース銀行)との声は多い。
過去40年にわたり数年規模で繰り返されてきた「円高・円安の波」は、一つの波が大きかったほど、その後の反動も激しい傾向があった。直近の07年から12年までの「円高の波」の期間が長かっただけに、まだしばらく「円安の波」が続く可能性は高そうだ。
しかし過去数十年にわたってなりたってきた購買力平価のセオリーからは、もうかなり円安水準にきていることも一方では頭に入れておきたい。
唐鎌氏は「基本円安」とみながらも「理論値より円安な水準だけに、例えばアベノミクスへの信認が崩れるような事態があれば、一気に90円台前半くらいまで円高転換してもおかしくない」とみる。
冒頭の竹中教授は「100円を超えたあたりで、今後円高に転換してもいいように、自分のドル資産のうち65%程度はヘッジをかけた」。経済状況が促す円安と、理論値が示す行き過ぎ感がしばらくせめぎ合うかもしれない。
一方、アベノミクスは購買力平価の水準そのものに影響を与え始めている。米国が低インフレに陥る一方で日本は物価が上向いてきたため、ここ数カ月、日本の企業物価上昇率が米国を上回ってきている。
インフレ率の高い国の通貨は下落するというのが購買力平価の考え方なので、これは購買力平価の理論値を円安方向に変えることになる。少し見づらいが、グラフAの購買力平価の線(e)は、ここ数カ月分は円安方向に上向いている。
「日米インフレ率格差が長期で逆転することまではまださすがに考えづらい」(竹中教授)という見方が自然だが、購買力平価の円高方向へのトレンドが一時的に止まるだけでも、過去にはあまり見られなかった変化だ。
消費税率上げもあって、例えば来年末まで日本の企業物価が米国を2ポイントずつ上回る状態がもし続けば、07年夏と同水準まで円安かい離が進んだ場合の円安の節目(グラフAのd)は、現在の105円から109円程度に円安方向にシフトする可能性がある。
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