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金融市場、2014年のバラ色の予測に要注意
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39451
2013.12.16 Financial Times :JBpress
(2013年12月14/15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
登場するのがどんどん早くなるクリスマスデコレーションのように、投資界は2013年がまだ数週間残っているうちから、急いで新年の予測を発表している。
そうした予測自体は予測可能だ。ポジティブな内容なのだ。投資商品を売る機関から出てくる予測なのだから、それは驚くに値しない。
だが、心地よいコンセンサスは普段以上に強い。ごく少数の例外を除くと、以下が金融界が2014年に予測していると話している基本シナリオだ。
■投資界は楽観的な基本シナリオを描くが・・・
危機の様相がようやく後退し、世界経済は2014年に、危機以降最も力強い成長を遂げる。中央銀行の政策引き締めが始まり、企業の設備投資が増加するに従い、危機後の正常化が本格的に始まる。
正常化は、投資収益が今年の実績に及ばないことを意味する。何しろ米国株は既に回復を織り込んでいる。だが、米連邦準備理事会(FRB)や他の中央銀行が着実に圧力をかけ、それに応じて金利がじわじわ上昇し、正常化のプロセスは円滑に進んでいく。
中国の成長は、これまでよりわずかに鈍いだけで、従来より持続可能なペースになる。欧州の成長は活気を欠くものの、少なくともプラス成長ではある。
これは悪くない基本シナリオだ。他の多くのシナリオよりは実現する可能性が高い。また、今年の多くのリスクを避けた投資家は、米国株のパーティーに乗り損ねた。
だが、それでも筆者は「物事がうまくいかない可能性はあるか」と問うてみることをお勧めする。自然災害を別にすると、答えのいくつかは以下のようなものだ。
■欧州のデフレ
コンセンサスでは、ユーロ圏経済の来年の経済成長率が1%前後になり、良性のインフレが生じると予想されている。だが、大した問題がなくても、こうした目標は未達に終わる。あと1年停滞が続けば、有権者の忍耐力が試されるし、デフレに陥れば、債務負担が一段と膨らむため、周縁国が債務を返済するのが一層困難になるからだ。
楽観論を抱くだけの理由はある。外国の投機筋は概して不在で、欧州中央銀行(ECB)は信用されている。デフレになれば、彼らが真価を問われるだろう。
■アベゲドン
日本への投資は今年、非常にうまくいったが、インフレを取り戻すように設計された積極的な金融政策を掲げた「アベノミクス」が狙い通りにいかなかったら、どうなるか?
「アベゲドン*1」の名付け親であるUBSのアレックス・フリードマン氏は、日本がインフレをもたらすことに成功するが、成長を生み出すことができなかった場合には、アベゲドンが待ち受けている恐れがあると指摘する。このような環境では、莫大な債務を抱えた国は、自国債に対する信頼の崩壊を目の当たりにする可能性がある。
世界第3位の経済大国での正真正銘の危機は、特にそうした事態に備えている人が少ないことから、大混乱を生むだろう。
■ぐらつくBIITS
今年、少しだけ話題になった「BIITS」は、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの頭文字だ。いずれも多額の経常赤字を抱えた大規模な新興国で、FRBが市場を下支えする量的緩和を縮小する方針を示唆した時に通貨が急落した国々だ。これらの国の通貨下落は、米国債利回りの上昇と並行して進んだ。
現金が米国へ引き揚げられるに従い、資金を切に必要としていた国々――主にBIITS諸国――は無防備になった。
FRBが緩和縮小を見送ると、この問題は和らいだが、インドネシアのルピアは最近、年初来の安値を更新した。心地よいコンセンサスは、FRBが緩和縮小に踏み切る時に同じことは起きない、というものだ。この自信の根拠ははっきりしない。
■原油価格のピークアウト
原油価格はもう3年ほど、安定の源になっており、ブレント原油は1バレル110ドル近辺の狭いレンジで取引されている。こうした油価の安定は、リビア(市民の騒乱の影響)やイラン(制裁の影響)、イラクといった国々での産油量の急減にもかかわらず達成された。主に北米のシェールガス革命が原油価格に下落圧力をかけてきたからだ。
*1=Abegeddonは字の如く、Armageddonをもじった造語
シェールは消えない。だが、現時点では、イランの輸出が再開される見込みで、リビアとイラクでも産油量が増加する可能性がある。
原油市場以外ではほとんど議論されていないが、ブレント原油は1バレル90ドルを大きく割り込む水準に急落する可能性がある。そうなれば、多くの企業の助けになり、消費国への圧力が和らぐだろう。だが、ロシアなど、石油輸出に依存する国々には打撃になる。
■米国債のアクシデント
2013年に入ろうとする時の最大のリスクが、恐らくこれだった。FRBが緩和縮小について話し始めると、あわや実現するところだった。10年物米国債の利回りは短期間で2倍に跳ね上がり、一時は3%に達した。今でも、それに近い水準で推移している。
経済の正常化に伴う緩やかな利回り上昇は健全だ。だが、FRBの発表に市場が過剰反応を示し、利回りが急騰して5%に向かったら、その他すべてのものを危険にさらす可能性がある。
■中国のバブル崩壊
最後に、中国の指導部は経済改革を試みているが、世界第2位の経済大国は依然、多くの主要市場で不動産バブルを抱えており、融資残も莫大だ。もう数十年間にわたり、中国が躓くことに賭けてお金を儲けられたことはないが、リスクはまだ残っている。
心地よいコンセンサスの展望と上記のリスクのリストに共通するテーマは、世界は微妙なバランスの上に成り立っているということだ。今年、金融当局はそのバランスを乱すことを避けるのに成功した。当局が2014年も同じ芸当を繰り返せる可能性は高い。
だが、その確率は圧倒的に高いわけではない。物事が2013年のようにはうまくいかないリスクに備えて保険をかけるのが賢明だろう。
By John Authers
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