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2014年度の景気・予算はどうなるか。消費税増税のマイナス緩和へ、「中身」より「量」の景気対策を
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37813
2013年12月16日(月)高橋 洋一 :現代ビジネス
2014年度の景気はどうなるのか。消費税増税があるので、今年度より当然悪くなると予想される。民間エコノミスト41人の予測をまとめたESPフォーキャスト調査によると、14年度成長率の平均は実質が0.8%、名目が2.3%である。筆者は実質▲0.1〜0.9%、名目1.9〜2.9%とみている。幅をみているのは、以下に述べるように、補正を含む財政政策如何だからだ。
なお、政府の14年度の経済見通しは実質1.3%、名目で3.3%だ。8月に発表した実質1.0%、名目3.1%を上方修正するという。13年度はアベノミクス効果で実質2%が確保され、その上に消費税の駆け込み需要が加わり、実質2.8%と見通されている。14年度もアベノミクス効果は維持されるが、駆け込み需要の反動減と消費税による景気後退で成長が鈍化するのは確実と、民間も政府も見通している。
アベノミクスの効果による実質2%がベースとなり、駆け込み需要の反動減で▲0.6%程度になるのはほとんどの人で同じだろうが、消費税のマイナス効果や財政の下支え効果の意見が異なり、どこまで鈍化するかの見通しが異なっている。
■金融緩和していれば、財政政策は十分効く
消費税のマイナス効果を楽観視する人の中で、しばしば、マンデル=フレミング効果を持ち出す人がいる。「日本は変動相場制なので、金融政策は有効だが財政政策は効かない。従って、財政政策の一種である増税をしても大きな景気の落ち込みはない」というロジックだ。
こういう人は、文字でしか経済を理解できないのだろう。マクロ経済に限らず、経済学ではほとんど数式で記述することができる。いくつかの連立方程式体系でマクロ経済を記述すれば、変動相場制であっても財政政策が効くかどうかは、金利にどういう影響があるかどうか、つまり金融政策の状況に依存することがわかる。十分に金融緩和していれば、財政政策も十分に効くのである。
今は異次元の金融緩和をしているので、積極的財政政策も緊縮的財政政策も両方ともに効くと言える。従って、消費税増税も景気をかなり落ち込ませると考えたほうがいい。
消費税増税のマイナス効果を緩和するためには、金融政策と財政政策というマクロ経済政策による景気対策しかない。マクロ経済対策の場合、有効需要の観点からみて、まず重要なのは量である。はっきり言えば、中身は二の次である。
まず金融緩和である。しかし、金融政策では本格的な効果は2年程度のラグがあるので、来年4月からの景気の落ち込みにはちょっと間に合いそうもない。ただし、来年後半の落ち込みには不十分ながら間に合うので、やらないよりやったほうがいい。
もう一つは積極財政である。これは、執行すれば即効性がある。少なくとも1年以内には効く。今回5.5兆円の補正予算ということになったが、これは今年1月の10兆円補正に比べて半分なので、決して十分とは言えない。1年前と比較すればマイナス要因だ。今年1月には、政権交代したので、民主党政権時代にため込んだ国債整理基金をはき出して財源にした「政権交代祝い」補正だ。
■間違った増税には愚かな財政支出が必要になる
実は、今回も同じ手法が使えるのに、やらないのはおかしい。消費税増税という財政政策で有効需要を少なくするので、同じ財政政策で中和するのが正しい。その中身も、増税に対して減税か給付金がいい。ここまで話すと消費税増税はやらないほうがいいとわかるが、間違った増税には愚かな財政支出が必要になるのは、なんとも皮肉である。
政府の楽観論は、財政の下支えがあると見込んでいるからだろう。筆者も財政が当初予算で膨らめば、それなりに下支え効果があると思っている。これが冒頭に述べた幅をみているという話だ。
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実は、財政支出にはある種の経験則がある。一般会計でいえば、夏に各省庁からの概算要求(グラフ@)があり、それを12月末までに削って予算の政府原案を作る。その政府原案は、翌年1月からの国会審議で3月末までに成立して予算となって、4月から予算執行される。
2001年度から2013年度まで当初予算(グラフA)と概算要求の間には、リーマンショック(2008.9.15)に対応せざるを得なかった09年度をのぞき、安定的な関係がある。当初予算は概算要求を4%程度カットした水準で決まっている。
しかし、当初予算はしばしば補正予算(グラフB)で修正される。その場合の歳出総額は、リーマンショックに対応せざるを得なかった09年度と東日本大震災(2011.3.11)で予算規模を膨らまさざるを得なかった11年度を除いて、もともとの概算要求を1%程度上回る水準だ。
何のことはない。事後的にみれば、概算要求を4%カットして当初予算を作るが、補正予算でカット分の予算をつけて、当初の概算要求を1%程度上回る水準になるわけだ。
■経験則から見れば、14年度歳出総額は100兆円規模
まだ、2014年度予算の数字は出てきていない。概算要求は99.3兆円だったので、これまでの経験則でいえば、4%カットである。これは財政当局のこれまでのリークの数字とほぼ同じである。今月末に決まる2014年度当初予算であれば、歳出総額は96兆円程度だろう。
しかし、これも従来の経験則どおりに、来2014年度は補正予算を4〜5兆円程度追加して、結果的には100兆円規模になるだろう。
グラフをみればわかるように、政権交代以前の自公政権の歳出総額規模は当初ベースで82兆円、補正後でも85兆円と安定していた。その一方で、景気拡大があり税収が伸びたので、基礎的財政収支は2002年度▲28兆円が2007年度に▲6兆円と、劇的に改善した。
民主党政権の歳出総額規模は当初ベースで92兆円、補正後でも102兆円と明らかに段差がある。東日本大震災の影響を考慮しても、歳出が膨らんだのは明らかだ。
昨年12月に安倍政権になったが、2013年度予算は民主党政権の性格を引きずっている。来年度から本来の安倍カラーが出るはずだが、それはまだ個別予算の中身にとどまるだろう。歳出総額については、省庁の要求圧力を押さえきれずに、概算要求が膨らんでしまった。
結局、民主党時代に水膨れした歳出を抑えられずに、拡大した財政支出になっている。この点でも、やはり、間違った増税には愚かな財政支出が必要になるという結果になっているが、それは景気のためにはやむを得ない面もある。
ただし、財政再建のために増税が必要との財務省のロジックはウソであったのが明白になっていることは強調しておこう。財政再建を狙うのなら、増税はせずに歳出圧力を押さえて、その一方で金融緩和によって景気をよくして税収増を図るのが正しい。これは財務省の150年の歴史でもしばしば当てはまる黄金則である。
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