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リニア新幹線、採算は取れるのか?巨額建設費と債務を一社負担、コスト上昇、運賃収入…
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131210-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 12月10日(火)3時19分配信
東海旅客鉄道(JR東海)は、2014年度着工予定のリニア中央新幹線の詳細なルートと駅設置場所を発表した。27年にまず東京(品川)-名古屋間、45年に大阪までの全面開業を目指す。
リニアの最高速度は時速500キロ。400キロ台の上海リニアをしのぎ、陸上の交通手段としては世界最速になる。超高速を最大限に生かすために、ルートは直線に近いかたちになる。東京-名古屋間は総延長286キロで、最速の40分で走り切る。東海道新幹線の同区間より走行距離を2割短縮した。南アルプスなど山岳地帯を貫く名古屋までのルートの86%は地下やトンネル内の走行となり、およそ旅情とはかけ離れた移動手段になりそうだ。
リニア新幹線が日本経済に与えるインパクトは大きく、安倍首相は「日本のインフラ輸出の大きな武器」と評価している。JR東海などは米国など海外への輸出を視野に入れており、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは東京-名古屋間の開業で10.7兆円、大阪延伸で16.8兆円の経済効果があると試算している。
沿線ではその経済効果への期待が高まっているが、現在の新幹線の駅以上に「観光客は通り過ぎるだけ」との冷ややかな見方もある。
最大の懸念は、JR東海という民間企業が9兆円もの建設費用を全額負担することだ。政府の支援は一切ない。山岳地帯を貫くトンネルは難工事が予想され、建設費が膨らむことは避けられそうにない。アベノミクスで長期金利も上がると見込まれている。
1964年10月1日、東京オリンピックの開催に合わせて東海道新幹線が開業した。新幹線に関して必ず出てくる批判は「世界三大馬鹿論」である。新幹線は「戦艦大和、万里の長城、ピラミッド」の世界三大馬鹿と並ぶ愚行であるという批判だ。「世界三大馬鹿と並ぶ愚行」というフレーズは、新幹線批判派が盛んに使い、新幹線が成功した後には、新幹線に携わった関係者が著書などで「心ない批判の例」として引用してきた。この「新幹線愚行」論が再燃したのは、国鉄分割・民営化の時だ。新幹線が開業した64年度から国鉄収支は赤字に転落し、以後、赤字は拡大。結果的に新幹線建設は国鉄の経営破綻の元凶といわれた。
旧国鉄から新幹線事業を引き継いだJR東海の葛西敬之現会長は「東海道新幹線はあくまで内部留保された資金と借金で建設資金を賄い、それらを運賃・料金収入のみですべて回収するものであり、新幹線建設が国鉄破綻の引き金を引いたという認識は誤りだ」と反論している。
●JR東海にのしかかる巨額建設費
そして今、葛西会長が主導するJR東海のリニア中央新幹線建設計画にも懸念の声が上がっている。国鉄分割民営化当時の債務37.8兆円のうち、設備投資分5.93兆円をJR各社が、5.63兆円を新幹線鉄道保有機構が引き受け、残り25.52兆円を旧国鉄清算事業団が引き継いだ。新幹線鉄道保有機構の5.63兆円は新幹線を保有する東日本、東海、西日本がリース料として分割して支払うことになり、設備投資分と新幹線分を合わせて11.56兆円をJR各社が負担した。
このように旧国鉄の債務はJR各社が分担して引き継いだが、今回のリニア中央新幹線の建設資金は、JR東海1社が全額負担することになるわけだ(ちなみに今年9月末現在のJR3社の「鉄道施設購入長期未払金」は、JR東日本が7410億円、JR東海が9435億円、JR西日本は2333億円。これは設備投資を引き継いだ分であり、新幹線のリース残高は各社の貸借対照表に出てこない)。
確かにJR東海の業績は好調である。14年3月期の連結決算の売上高は前年同期比2.3%増の1兆6210億円、営業利益は同4.2%増の4440億円、純利益は同14.5%増の2290億円の見通しで、純利益は2期連続で最高益を更新しそうな勢いだ。
リニア中央新幹線のビジネスモデルは東海道新幹線と同じである。内部留保(利益剰余金)と借金で建設費を賄い、運賃・料金収入でそれを回収するというものだ。JR東海の9月末時点の内部留保は1兆5841億円と厚いが、一方で借入金・社債・鉄道施設購入長期未払金の有利子負債として2兆6022億円を抱える。来期にリニアに着工すれば、借入金はさらに増える。全線開業時の債務は5兆円程度に膨らむ見通しだ。ここに安倍晋三政権が掲げる2%の物価上昇がもし実現すれば建設費は高騰し、金利も上昇する。
●第2のJAL化を懸念する声も
一方で、運賃収入は東海道新幹線開通時のようにはいかない。リニアを開業しても既存の新幹線から乗客がシフトするだけで、東海道新幹線開通時ほど大きな運賃収入は見込めないといわれている。最悪9兆円に上る巨額建設費を回収できない場合、JR東海は過剰債務を抱えた旧国鉄に逆戻りする危険性を指摘する声も上がっている。JR東海の山田佳臣社長は「リニアだけでは絶対にペイしない」(9月18日の記者会見)と発言しているが、JR東海も「リニア単独での投資回収を目的とする計画ではない。新幹線の経年劣化と大規模災害に備えるために大動脈を二重化する」との公式見解を示している。
また、全国的に広がる原発停止も影を落とす。リニアの消費電力は新幹線の3倍といわれており、葛西会長が「全原発の再稼働」を主張するゆえんでもある。
リニア建設・運営の採算が取れずJR東海の財務を圧迫することで、同社が一時経営破綻したJALと同じ道を行く可能性を懸念する声も上がる中、果たしてリニアはさまざまな懸念や批判をはねのけ、事業として成功するのか? 日本中の注目が集まる中、間もなく着工を迎える。
編集部
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