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11月米雇用統計を受けて、ゴールドの輝きは更に失われる
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20131209-00030506/
2013年12月9日 18時53分 小菅努 | 大起産業(株)情報調査室室長/商品アナリスト
12月6日に発表された11月米雇用統計は、今後も金価格の軟調地合が続くことをほぼ決定付ける内容になった。
11月の非農業部門就業者数は前月比+20.3万人となっており、市場予測+18.5万人を大きく上回っている。10月分は速報の+20.4万人から+20.0万人まで下方修正されたが、それでも2ヶ月連続で20万人を超えたインパクトは大きく、雇用環境の改善傾向を強く印象付ける数値になった。失業率は前月の7.3%から7.0%まで低下しているが、これは実に5年ぶりの低水準である。
10月上旬に米政府機関の閉鎖といった政治・経済の両面にわたる大きな混乱が発生したことを受けて、マーケットでは米実体経済の減速に対する警戒感が強くなっていた。これは有事対応としての金融緩和策の長期化が避けられないことを意味し、毎月850億ドルもの資産購入を縮小・停止できないのであれば、ドルに対する信認問題、インフレに対する警戒感が再浮上するのは避けられないとの見方が広がっていた。
しかし、10月と11月の雇用統計はこうした政府機関閉鎖の影響をほぼ感じさせない内容になったため、改めて金価格から緩和プレミアムの剥落を進める動きが優勢になっている訳だ。FRBは雇用者数について明確な数値基準を提示していないが、概ね20万人を超える雇用増加を期待しているとみられ、現在の雇用者増加ペースを考慮すれば、最短で12月17〜18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で債券購入の規模縮小が決定される可能性も否定できない情勢になっている。
現実問題としては、依然として3月FOMCを政策転換の時期と予測している向きが多い。ただ、これまでは可能性がゼロと見られていた今月12月、更には来年1月28〜29日に政策変更が行われる可能性も否定できない状況になっていることが、金価格に対して強力な逆風になっている。米金融政策が正常化に向けての第一歩を踏み出すのであれば、これまで毀損されてきたドルに対する信認回復の動きが加速する一方、代替・安全通貨としての金に対する評価低下は避けられない状況になるためだ。
金と原油の価格バランスをみてみると、10月末時点では1オンスの金は原油13.70〜14.00バレル程度の価値を有していたが、現在は12.50バレル程度の価値しか有していない。金1オンスの価値が低下しているのは明らかであり、今後も米実体経済の着実な回復傾向が確認できるのであれば、金価格の購買力は一段と喪失される流れになるだろう。
今年は、金と原油の価格バランスは金1オンス=原油12.50バレルが防衛ラインになっているが、このまま金市場から緩和プレミアムの剥落が進めば、金価格の値位置が切り下がるのは必至の情勢にある。
もちろん、今年7月や8月のように原油価格が急騰するのであれば、「通貨としての金」の価値は回復の余地がある。ただ、シカゴ地区連銀のエバンス総裁が、大規模な金融緩和策にもかかわらず「なぜインフレ率が低下しているのか本当に大きな謎(big puzzle)だ」と自己否定的な発言をするなど、インフレの兆しは一向に確認できない。ディスインフレ、デフレ時代に評価されるのはペーパー通貨であり、実物通貨たる金ではない。
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