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資料:財務省)
貿易赤字を所得収支の黒字でカバーできなくなった日本
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131209-00030494/
2013年12月9日 11時47分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
私、以前から、日本の経常収支が赤字になる日も近いのではないかと警告を発しているのですが‥何故経常収支が赤字に転落するのかと言えば、貿易収支の赤字が余りにも大きくなっているからなのです。
しかし、私のそのような意見に対しては、幾ら貿易赤字が続いても、経常収支ベースでみれば黒字が維持できているのだから、そして日本は債権国家なのだから、これからも国債の増発をためらう必要はない、なんて意見があるのです。
まあ、普通の人なら、どれだけでも国債を発行しても恐れるに足らないなんて意見を支持しないと思うのですが‥ネットの世界は別。そんな輩が存在するのです。
アベノミクスを熱烈に支持するような人々も、大体似たようなものなのです。
景気を刺激するためには財政出動すべきで、そのためには国債の増発も厭うことはない。そして、そうした国債をどんどん日銀が買い入れれば、それによってマイルドなインフレが実現できる、と。
しかし、そうした政策には大きな落とし穴があることを忘れてはいけないのです。
確かにアベノミクスによって円安に誘導でき、そして株価も上がった。つまり、今取り敢えず経済は明るさを取り戻していることは事実ではあるのでしょうが、しかし、落とし穴があるのです。
そんなに国債の増発を続けていて大丈夫なのでしょうか?
この私のような意見をボロクソに批判するのは高橋洋一教授。
日本政府は、国の債務が巨額かもしれないが、それ以上に資産がある、と。そして、日本全体でみれば、膨大な対外資産を有しているから、恐れることはないのだ、と。
しかし、国(政府)の資産にどれだけの価値があるかなんていっても、正確な計算などできないのです。はっきりと言って、国が保有している道路や橋の評価をどうやって行うのか? 大抵は、それらを建設するのにかかった費用から逆算するだけの話なのです。それに、そうした資産を売却して現金に換えることも実際には不可能なので、負債に見合った資産を保有しているから大丈夫などととても言えないのです。
日本は、全体としてみれば膨大な対外資産を有していると言うことに関しては、そのとおり。それについては、私は異議を述べることはありません。
しかし、今後もそれが続くのかと言えば、それが疑問になっているのです。つまり、いずれはそうした対外資産を食いつぶしてしまうかもしれないのです。
何故か?
それは、貿易赤字が大きくなっているからです。
でも、経常収支は黒字を続けているではないのか?
しかし、その経常収支の黒字が、私が懸念していたように赤字に転落しそうな気配になっているのです。
グラフをご覧ください。
早い話、10月の日本の経常収支は9か月ぶりにまた赤字に転落してしまったのです。青色の棒グラフが経常収支を示していますが、マイナスになっているでしょう? 10月は1279億円の赤字なのです。
但し、9か月ぶりの赤字にしか過ぎないので、まだ年間ベースでは経常収支は黒字を維持できると思うのですが、それがいつまでも続く保証はありません。
そうやって年間ベースでみても経常収支が黒字に転落する恐れが出てきたというのに、今までのように国債の増発をいつまでも続けていていいのかと心配になるのです。
今のところは、日本の国債を保有する海外の投資家の割合は、比較的小さな比率にしか過ぎないので、まだまだ心配をする向きは少ないのですが‥今言ったように経常赤字が当たり前のようになってしまうと、当然のことながら少しずつ海外の投資家が保有する国債の割合が増えていくでしょう。
私は、そのことを大変恐れているのです。
いいでしょうか? そのような場合、我が国の国債を一番多く保有するのはどこの国の投資家になりそうなのか?
答えは、経常黒字が大きな国の投資家です。つまり、中国や湾岸諸国、或いはドイツなどが考えられる訳ですが、不気味だと思いませんか?
そうではなくても、中国の最近の挑発振りには閉口するのに、この上、我が国が中国から借金を仰がなければいけない事態など想像したくもありません。
それに、そもそも海外のファンドが我が国の国債を大量に保有するようなことになれば、そのような資金は世界経済の情勢に応じて簡単に国外に流出してしまうこともあるので、我が国の経済的立場は大変不安定になってしまうのです。
いいですか? 我が国の経常収支の赤字が定着してしまってから、対策を考えようと思っても遅いのです。そうならない前に、少しずつ着実な対策を講じていく必要があるのです。
日銀が幾らでも国債を買い入れればいいなんて思っている人がいませんか?
それは今までの日本だからできたことであり、本当に日本の経常収支が赤字に陥ったなかで、日本銀行がそのような行動に出れば、逆に国債の信用は低下してしまうでしょう。
アベノミクスを熱狂的に支持する嫌中・嫌韓の人々にリフレ派や積極財政論者が多いのはどういう訳でしょう?
これからも国債の増発を続けて行けば、我が国は中国に頭が上がらなくなることが容易に想像できるのです。それでも、国債の増発を認めろと言うのでしょうか?
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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