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アベノミクス相場は第2幕へ。このあと、何が待っているのか(撮影:尾形 文繁)
今年の株式市場はバブルだった、といえる理由 いまから株を買っても、本当に儲かるのか?
http://toyokeizai.net/articles/-/25876
2013年12月09日 小幡 績 :慶應義塾大学准教授 :東洋経済
株価は、ここ数日は大きく下げた後、再び反発しようとしている。今回の下落は、バブル崩壊の予兆ということなのか、それとも単なる調整か。ここは買いチャンスなのか、売るべきときなのか。
今の株式市場、あるいは「これまでの株式市場がバブルかどうか」という点は意見が分かれるだろうが、今年、株式ブームが起きていることは事実だ。新たに株式市場に参加してきた個人投資家が多数いるが、彼らは儲けることができるのだろうか。そもそも、なぜ株は儲かるのか。なぜ投資をすると儲かるのか。
■リターンを得るには、リスクを嫌う人がいるのが前提
投資がリターンを得られる理由は2つである。
教科書的には、「リスクの対価としてのリターン」である。リスクのないところにリターンなし、フリーランチは食えない(ただ飯はない)、などいろいろな言い方がされるが、要は、リスクという、一般的には嫌がられるものを引き受けることによって、その報酬としてリターンが得られる。このリターンが儲けである。
保険を引き受けて、対価を得るということと同じだ。つまり、株式投資が儲かるのは、株式というリスクのある資産を引き受ける(保有する)ことによって、そのリスクを甘受した分、リターンを上げる、株価が上がって儲かるということである。
別の言い方をすると、リスクのある資産は、リスクを嫌う人によって避けられているから割安になっていて、割安だから買うと儲かるのである。これがリスクに対する報酬だ。しかし、この議論には隙がないように見えて、矛盾がある。
なぜなら、リターンが得られる理由はリスクがあるから、ということだが、このリターンが実現するためには、リスクを嫌う人々がいないといけない。つまり、リスクが嫌でみなが引き受けない。だからリスクのある資産は売れなくて割安になる。「そういう状態」が現実に成立している必要がある。そのときに割安になったものを買うから、リターンが得られるのだ。
しかし、世の中の人々全員が株を喜んで買ってしまえば、「そういう状態」は実現しない。株は人気で割安どころか、割高な可能性がある。そうなると当然リターンは得られない。したがって、株式ブームが起きるということは、株式では儲からなくなるようになるということだ。
■「バブル後半」と「バブル前半」の違い
これは、バブル後半から崩壊にかけては明らかだ。バブルとなった資産は人気が出すぎて、リスクがある資産が割安になるわけではない。むしろ割高だ。2008年のリーマンショック前のバブルを、私は「リスクテイクバブル」と呼んだが、リスクをとることが流行してしまい、リスクが過剰人気して、リスクをとる機会をみなで奪い合ったのだ。そして、そのリスクが実現して、悪いシナリオが顕在化すると、みながリスクから逃げ出し、大暴落となったのだ。
一方、バブル前半では何が起こるか。リスクに人が群がる。つまり、リスク資産の価格が上昇する。その結果、リスク資産を買うと儲かるという状態が実現するのだ。しかし、これは人々が嫌がるリスクを引き受けた報酬ではない。人々の熱狂に乗った報酬である。教科書に載っている、株式投資が儲かる理由とは、正反対の現象である。
本来であれば、あるいは教科書どおりであれば、経験豊富な株式投資家、機関投資家は、個人が株式市場に参入することを好まないはずである。なぜなら、個人がリスクを嫌がるからこそ、リスクの報酬が大きくなり、リターンが高くなるからである。個人もリスクをとるようになれば、リスクの奪い合いが起こって、リターンが得られなくなる。
■リターン、儲けの「もうひとつのメカニズム」
しかし、それでもアベノミクスによる個人の株式投資参加や公的年金などの株式投資増加を既存の投資家たちが望むのは、リターン、儲けのもうひとつのメカニズムに期待しているからである。それは最も単純なもので、「人気が出るものは値上がりする」ということである。買う人が増えるのであるから、需給で言えば価格は上昇するはずである。つまり、株の人気が出れば株価は上がる。すでに投資している人たちはそこで売れば儲かる。だから、新しい投資家の参入を歓迎するのである。
単純すぎる、当たり前のことだから教科書に載っていないのではない。このメカニズムは単純だが、これまでの理論体系には当てはまらないから、ファイナンスの教科書の体系から漏れているのだ。
この儲けはリスクの報酬ではない。中古品の売買と同じで、誰かが儲かるということは、、誰かが高いお金を払わされていることになる。その中古品を愛していれば、入手してうれしいのだが、株式が買えてうれしい人はいない。儲かって初めてうれしいのだ。それを求めて投資しているのだ。
しかし、リスクに対する報酬と異なり、人気の波に乗るという儲け方では、持続的に利益が得られることは保証されない。上手く乗れば儲かるし、降りるのが遅れれば、大きな損失となるのだ。だから、教科書に載せるわけにはいかない。理論的な儲けのメカニズムとは言えないからだ。
■現実におきていることは、教科書では説明できない
ところが、やっかいなのは、現実の株式投資の儲けは、リスクの報酬としてのリターンではなく、波に乗ったことによるものがほとんどであるからだ。これは、実証研究の結果とも整合的である。日本だけでなく、世界中で見られる現象だが、いわゆる大型株、時価総額の大きな株式(日経225を構成する銘柄など)は、「株価の変動は大きく、一方でリターンは低い」という現象が長年、特に2000年以降の近年に顕著に見られる。変動こそがリスクであるから、大型株は「ハイリスク、ローリターン」なのである。
これは教科書理論では説明できない。この解釈は、株式投資家はギャンブル好きで、株価の変動に賭けるギャンブルを楽しんでいる分、リターンが低くても満足しているというのがひとつの可能性。もうひとつの可能性は、大型株で儲けるには、変動の波に乗って上手く儲けるしかない、ということで、みなそれを狙って大型株に投資しているということだ。この二つの解釈はお互いに同時に成立しうるが、後者の解釈を推し進めると、ボラティリティ、変動とは儲けのチャンスを含むものであり、それを入手するためにみな対価を払っているということだ。
したがって、今年の上昇トレンドの中での5月から6月の乱高下、8月と足元の乱高下は、株式投資家が喜ぶ、またとないタイミングなのである。大きなトレンドに乗ることと、乱高下の激しい波に乗ることも、本質的には同じことで、ブームの流れを読むことによって儲ける手法なのだ。
これは、別名バブルである。したがって、株価水準に関係なく、今年の株式相場は一貫してバブルなのであり、今年儲けた人々は、うまくバブルの波に乗った人々なのである。
問題は、大きなバブルの波だとすると、それがいつまで続くか、いつ崩れ始めるか、ということであるが、それはまた次回議論することにしよう。
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