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記事のなかの「日本経済は着実に持ち直し、デフレの症状も和らいだ。その原動力は外需よりも内需である。内高外低型の景気回復といってもいい」という総括的分析は、公共投資の寄与率も高いので半分当たっているが、同じ輸出数量でも手取り額を増大させる円安(外需)の貢献度を軽んじている。それは、上のグラフで、12年と13年に範囲を絞って見ればわかる。昨年は年間を通じて減少した輸出が、今年になって鋭角的に増加(数量ではなく金額)している。その勢いは、個人消費よりも強い。
さらに言えば、円安で輸出企業の利益が増大するという見通しが株価を押し上げ、その過程の株式投資で儲けた人々が消費に動いたことが、個人消費の増大に大きく貢献している。
「原動力は外需よりも内需」というのは言い過ぎである。
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[けいざい解読]アベノミクス1年の光と影 もろさ隠せぬ内高外低
アベノミクスの始動から1年。日本経済は着実に持ち直し、デフレの症状も和らいだ。その原動力は外需よりも内需である。内高外低型の景気回復といってもいい。
日本の実質国内総生産(GDP)は、2008年1〜3月期のピークを超えた。当時の水準を100とすると、今の公共投資は129。リーマン・ショックで傷ついた日本経済を復元するため、財政出動に多くを頼ってきたことがわかる。
5年前の水準を上回るのは公共投資だけではない。実は個人消費も105と健闘している。これに対して輸出は91、設備投資は85にとどまる。
投資の停滞は先進国共通だ。日本の特徴は消費の強さと輸出の弱さにある――。13年版の経済財政白書はこう分析した。消費よりも輸出が主導した過去の景気回復局面と異なるのはなぜか。
富士通総研の早川英男エグゼクティブ・フェローは「安倍政権の発足前から消費は底堅かった」と話す。1947〜49年に生まれた「団塊の世代」の退職が始まり、シニア消費が活発化しているのが目立つという。
シニアの価値観は多様で、所得や資産の格差も大きい。そのヘテロジニアス(異質)な消費に応えきれなかった企業が、需要の開拓に成功し始めたと早川氏はみる。
こうした下地があったところに、アベノミクスの追い風が吹いた。株高の資産効果やデフレ脱却への期待感が加わり、消費回復の裾野が広がったのは間違いない。
問題は輸出の伸び悩みだ。リーマン・ショックの後遺症で先進国の設備投資が振るわず、資本財に強みを持つ日本の輸出を下押ししている。そこに新興国の景気減速が追い打ちをかけ、円安の恩恵を生かせずにいる。
円高の打撃が大きすぎたとの見方もある。みずほ総合研究所が製造業の輸出採算指数(2005年度=100)を算出したところ円高が加速した11年度は76に低下していた。その後の円安反転で13年度上半期は81まで上昇したもようだが、かつての水準にはほど遠い。
「採算の悪化もあって、外貨建ての輸出価格を引き下げる動きが広がらない。円安下でも輸出数量が伸びにくい状態にある」。矢野和彦経済調査部長はこう語る。
海外移転の深化も見逃せない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長によると、日本の輸出に対する円相場の影響度は、08年から12年にかけて15%低下した。
海外景気の影響度も6%落ちている。日本企業の海外生産拠点が現地調達比率を高めているのが一因だという。
内高外低型の景気回復は、日本経済の構造変化も映すものか。その判断は難しいが、危うさが残るのは確かだろう。
公共投資の景気刺激効果に持続性はなく、賃金の上昇を伴わぬ消費の回復にも限界がある。波及効果の大きい輸出の停滞が長引けば、生産や投資にも悪影響が及ぶ。
日本経済の回復基盤はまだ脆弱だ。その弱点を克服するために、アベノミクスも絶えず進化させなければならない。
(編集委員 小竹洋之)
[日経新聞12月8日朝刊P.3]
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