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Taxウオーズ 国々の攻防:M&Aで企業流出 警戒:新興国 課税強化に躍起
http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/327.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 12 月 08 日 03:35:35: Mo7ApAlflbQ6s
 


Taxウオーズ 国々の攻防

(上)M&Aで企業流出 警戒

 世界の国々がグローバル企業の生み出す富を巡る争奪にしのぎを削っている。国境を容易に飛び越えて活動する企業をどうつなぎ留めるのか。税や雇用を確保しようと規制と優遇のはざまで揺れる国家の攻防を追った。


本拠はオランダ

 半導体製造装置で世界首位の米アプライドマテリアルズと3位の東京エレクトロン。来年にも経営統合する両社が親会社を置くのは日米のどちらでもない。オランダだ。
 「シリコンバレーの大企業が日本企業と統合し、なぜオランダに持ち株会社を作るのか」。10月末、米上院財政委員会のボーカス委員長は声明で怒りをあらわにした。
 オランダは外資を呼び込むことを目的に、手厚い優遇税制を用意している。半導体装置2位で同国に本拠地を置くASMLの税引き前利益に対する実質的な税負担率は5年平均で10%未満。法人税率が25%と低いうえ、研究開発や知的財産を巡る控除の恩恵が大きいからだ。ともに20%を超える東エレクとアプライドが同じ土俵を選ぶのも無理はない。
 「収益性を高めて株主により多くの現金を還元する」(アプライドのゲイリー・ディッカーソン最高経営責任者)。同社幹部はアナリスト向け説明会で統合後の税負担を削減できると述べた。
 税率の低い国に親会社を作り、その傘下に入る事業再編を「コーポレート・インバージョン」と呼ぶ。1983年、米海洋関連会社マクダモットがパナマに本社を移したのが始まりとされる。

 この手法に悩まされた米国は2004年に対策税制を導入。実態のない海外親会社に利益を移し、米国での納税を減らす行為に歯止めをかけた。
 ところが近年、国境を越えるM&A(合併・買収)を契機に海外に本拠地を移す企業が再び増え始めた。一定規模の実態がある会社同士なら対策税制の例外になる抜け穴を使った事例だ。
 そこでボーカス氏は11月19日、抜け穴を塞ぐ法改正草案で、海外で稼いだ所得にも毎年課税するとともに、米国に海外所得を戻しやすくする仕組みを提示。企業所得の流出を止めようと懸命だ。

 日本政府も持ち株会社の海外移転による影響を注視する。07年度に対策税制を導入し、国境を越えるM&Aに伴う課税逃れには一定の抑止効果がある。だが統合後に開発した特許など知財が持ち株会社に集中すれば所得は海外に流出する。
 国際M&Aは企業が税負担を下げるチャンス。国連によれば1〜6月の国際M&A総額は前年同期比8割増の1793億ドル。財政難の先進各国からみれば、税収の争奪戦が頻発することになる。

「30%より低く」

 日本企業も動き出した。イタリア建材大手ペルマスティリーザ、米衛生陶器大手アメリカンスタンダード、独住宅用機器大手グローエ。ここ2年で5千億円を超す買収を手掛けたLIXILグループは国際税務戦略に手を打ち始めた。
 1月、三菱商事の税務室長だった鈴木一路氏を迎え、国際税務を委ねた。国際M&Aには利益還流時の二重課税や繰越欠損金の利用制限など税務リスクの管理が欠かせないからだ。
 鈴木氏は「ひとつの会社にしていくうえでどれだけ(税の)無駄を排除できるかが重要」と語る。藤森義明社長も34%ある同社の税負担率を「将来は30%を切る水準を目指す」と決意を固める。
 企業は税負担を減らそうと、各国の税制に絶えず目配りする。法人税率が高い日米は手をこまぬけば税収を失う。企業の選択が、国々を税の攻防へと駆り立てている。

[日経新聞12月7日朝刊P.1]


(下)新興国 課税強化に躍起

 「サムスンはベトナムに何をもたらすのか」。ベトナムの有力ニュースサイトが4月、こんな記事を載せた。韓国サムスン電子はベトナムの携帯電話・スマートフォン工場で昨年、約1億2千万台を生産し、輸出額は127億ドル(約1兆3千億円)に達した。


当局の目厳しく

 だが今年1〜2月の納税額はわずか200万円程度。前年同期の4億円弱から99%以上減った。政府との交渉で、関連会社を含めて法人税や付加価値税、輸出入関税の優遇を受けたためだ。
 外資誘致競争に勝つため、新興国も手厚い税優遇策を用意した。だが多国籍企業の巧みな節税に景気減速が重なり、いくら外資を呼び込んでも税収は増えない――。そんないらだちが新興国を課税強化へ駆り立てる。

 ベトナムは現在25%の法人税率を来年から22%に下げる。一方で、今年9月までに外資・地場企業に9兆6280億ドン(約460億円)を追徴課税した。それでも歳入は9月末で目標の66%しか確保できていない。「相当強引な税務調査もある」。現地の日系会計士は危機感を募らせる。
 「日本の親会社に支払っている技術使用料が多すぎる」。今夏、中国・上海に工場を構える機械メーカーの担当者は税務当局の通知に驚いた。中国の景気低迷で利益が減少する一方、定額とした技術使用料が問題視され、追徴課税された。

 新興国は外資系企業が本国の親会社に支払う利子や技術使用料に目を光らせる。グループ企業間の取引を通じた利益流出を防ぐ「移転価格税制」による課税強化だ。
 突然、この税制を始めたインドネシア。90年代に進出した企業は「ここ2〜3年、当局の目が急に厳しくなった」。追徴課税も多く「基準があいまいだ」と異議を申し立てても認められない。
 同国を訪れた日本の国税幹部は税務署の壁に張られた職員の課税実績を示す棒グラフに驚いた。「まるで営業成績のようなノルマ主義。日本と課税の考え方が全く違う」
 経済産業省によると05〜10年度に日系企業が新興国で課された追徴税額は1700億円。税理士法人コーポレート・アドバイザーズの中山隆司氏は「アジア各国は法人税収の減少分を移転価格税制などで取り返そうとしているのでは」とみる。

救済追いつかず

 企業の救済手段も追いついていない。二重課税を解決するため国同士が話し合う相互協議。インドネシアの担当者はわずか4人。日本の10分の1だ。条約交渉や国際会議の担当も兼務で「協議の予定すら入りづらい」(国税庁相互協議室)。
 国税庁は組織の未熟さが足かせになっているとみて、ノウハウを伝えるため、これまでにインドネシアやフィリピンなどの新興国に職員を400人以上派遣した。
 時間と経験は新興国の課税問題を解決してくれるだろうか。KPMG税理士法人の角田伸広パートナーは「根っこにあるのは新興国と先進国のミゾ」と、やや懐疑的だ。
 先進国クラブである経済協力開発機構(OECD)が定めた国際課税ルールを、国連は新興国の意向をくんで「必ずしも尊重しない」との立場だ。新興国は悪質な課税逃れだけでなく「現地子会社から利益を得る親会社まで標的にしている」(角田パートナー)。
 国と国、都市と都市、新興国と先進国……。様々な境界線を挟み、Taxウオーズの戦線はさらに拡大を続けている。

 粟井康夫、伊藤学、中島裕介、川瀬智浄、山田薫、八十島綾平、福岡幸太郎が担当しました。

[日経新聞12月7日朝刊P.1]

 

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コメント
 
01. 2013年12月09日 07:04:57 : rU5sf3tYZM
阿呆な企業優遇競争をまた宣伝する阿呆がいる。

ならG8でもG20でもどこのFTAでも法人税の値下げ競争をやめるように決めれば済むはず。タックスヘイブンなど問題外のはず。

実際は金を持つ企業と癒着し優遇したくてたまらない。これが格差の急拡大を生んでいる。


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