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飽和見込まれるコンビニ業界、セブンとローソンが取るべき“セオリー”戦略とは?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131207-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 12月7日(土)7時1分配信
--メガバンク勤務後、アメリカのビジネススクールでMBAを取得し、今では幅広い企業の戦略立案やマネジメント教育に携わる安部徹也氏が、数多くのビジネス経験やMBA理論に裏打ちされた視点から企業戦略の核心に迫ります--。
百貨店やスーパーなど大手小売企業が苦戦を強いられる中、コンビニエンスストアの快進撃が続いています。
10月に発表されたコンビニ大手の中間決算では、最大手のセブン-イレブンの営業収益は前年同期比37.9%増の1兆2772億円、営業利益は10.5%増の1287億円と、共に過去最高を記録しました。
業界2位のローソンは、営業総収入こそ前年同期比0.3%減の2481億円と振るわなかったものの、営業利益は3.1%増の356億円と、セブンと同じく半期ベースでは過去最高の決算となりました。
ただ、コンビニ業界は今後も順調に成長するかといわれれば、一筋縄ではいかないことも十分考えられるでしょう。
市場が飽和してくれば、成長を持続するためにはライバル企業から顧客を奪うか、新たな市場を開拓するしかありません。
コンビニ業界の先行きが楽観視できないのは、過去最高益を記録した中間決算発表の席上でローソンの新浪剛史社長が「従来型のコンビニは飽和状態」と危機感をあらわにしたことからも、感じ取ることができるでしょう。
そこで今回は、飽和しつつあるコンビニ業界で激しい競争を勝ち抜きながら、成長を持続していく戦略を考えていきたいと思います。
もしあなたがセブンの社長だったら?、もしくはローソンの社長だったら? どのような戦略で自社を成長に導くでしょうか?
ここでは「アドバンテージマトリクス」というフレームワークを活用して、それぞれの企業のあるべき戦略を検証していくことにしましょう。
●アドバンテージマトリクスとは?
アドバンテージマトリクスとは、ボストンコンサルティンググループ(BCG)が考案した、適切な事業戦略を立てるためのフレームワークです。
このフレームワークでは、まずは業界を
1.競争要因が多いか? 少ないか?
2.競争優位を築けるか? 築けないか?
という4つの要素で分類していきます。
そうすると、事業を次の4つのタイプに分類することができます。
1.競争要因が多く、競争優位が築ける→特化型事業
2.競争要因が多く、競争優位が築けない→分散型事業
3.競争要因が少なく、競争優位が築ける→規模型事業
4.競争要因が少なく、競争優位が築けない→手詰まり型事業
ここで特化型事業とは、さまざまな要素で差別化が可能であり、戦略次第ではどんな企業も競争優位を築くことができる事業といえます。
例えば、外食産業でいえばお寿司に特化することにより、小さなお寿司屋ではネタなどにこだわり高級路線で高い収益率を実現することも可能ですし、回転寿司のように大規模な事業を展開してスケールメリットを生かし、大きな収益を上げることも可能です。
続いて分散型事業は、さまざまな要素で差別化ができるものの、経営資源の制約
などから企業として規模を大きくすることができずに、競争優位を築くことができないという特徴を持っています。
例えば、街の酒屋などは品揃えや立地など差別化を図ろうと思えばいろいろな要素がありますが、経営資源に乏しく、事業を拡大して競争優位を築くことは難しいといわざるを得ないでしょう。
次の規模型事業では、競争の優劣を決するのが基本的に規模の大小で、規模が大きければ大きいほど高い収益力を誇るという特徴があります。
ですからこの規模型事業では業界トップが圧倒的に有利な立場となり、2番手以下はリーダーの規模を追い抜かなければ、厳しい戦いを強いられることになるのです。
例えば、牛丼業界はかつて吉野家が規模でNo.1の座に君臨して高い業績を上げていましたが、今やゼンショーが率いるすき家にトップの座を奪われ、吉野家は苦戦を強いられています。
そして、最後の手詰まり型事業では、差別化できる要素が少なく、どのような規模の企業にとっても競争優位を築けないという特徴があり、衰退産業が該当するでしょう。
この手詰まり型事業に当てはまれば、企業は撤退を含めた抜本的な事業の見直しが必要となります。
このようにアドバンテージマトリクスを使って自社の事業を4つのタイプに分類すれば、最終的には規模型事業や特化型事業を突き詰めていくという事業戦略を検討していく必要があるということが見えてきます。
●「規模拡大」のセブン
それでは、コンビニ業界における事業戦略をアドバンテージマトリクスに当てはめて検討していくと、どのような戦略が考えられるでしょうか?
一般的なコンビニの業態は、規模型事業といえるでしょう。つまり、コンビニ業界では規模が大きければ大きいほど圧倒的な優位に立ち、高い収益力を誇れるようになるということです。だとすると、業界のリーダーであるセブンの戦略としては、「規模の拡大」が妥当な戦略といえます。
8月末時点でセブン-イレブンの国内店舗数は1万5831店、ローソンは1万1348店です。そこでさらに規模を拡大していけば、スケールメリットが発揮され、ますますローソンとの差を広げることができるでしょう。
セブン自体は「ドミナント戦略」という狭い地域に集中出店してブランド力を高めたり、配送コストを低減するプレイス戦略を採用していますので、47都道府県すべてに出店しているローソンに対して、いまだ出店していない県が複数存在します。
実際にセブンは今年の3月には四国に初出店を果たし、今後は未出店地域にも積極的に出店する計画を立てていますので、青森や鳥取、沖縄などの未出店県にも進出していけば、まだまだ成長の余地は大きいといえるでしょう。
●戦いのルールを変えるローソン
一方で規模型事業のコンビニ業界で、規模に劣るローソンはどのような戦略で
リーダーのセブンに対抗していけばいいのでしょうか?
セオリーからいえば、従来型のコンビニ事業で競争優位を築きたければ、セブンを上回る規模の店舗を出店していく必要があります。ただ、体力的に見ても正面からセブンと対抗していくことは現実的ではなく、大変なリスクが伴います。
そこで、ローソンとしては“戦いのルール”を変える必要があるでしょう。
つまり、2位以下が圧倒的に不利になる規模型事業で勝負するのではなく、自らの事業を特化型事業に転換していくことにより、規模にとらわれない高い収益を実現することができるかもしれません。
実際にローソンは、今回の中間決算発表の席上で新浪社長自らが、従来のコンビニとは一線を画す「健康」に特化した事業に舵を切ると公表しています。これまで慣れ親しまれてきた「マチのほっとステーション」というキャッチフレーズを「マチの健康ステーション」に変えることからも、その本気度が伝わってきます。
もともとローソンは従来型のコンビニに加えて、ナチュラルローソンやローソンストア100など特化型店舗でセブンに対抗してきましたが、今回の決断でそれを全店レベルにまで拡大し、これまでコンビニを利用してこなかったシニア層などを取り込んで新たに大きな市場を開拓していこうという戦略なのです。
果たして、セブン、ローソン共に、セオリー通りの戦略を駆使して飽和が見込まれるコンビニ市場でさらなる成長を実現できるのか?
今後の動向に注目していきましょう。
安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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