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http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYE9B405W20131205
2013年 12月 5日 17:12 JST
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長(2013年12月5日)
ちょうど1年前に本フォーラムで今年の為替相場見通しを書いている。ユーロが最も強くなり、豪ドルが相対的に弱くなったのは、予想通りの展開となった。
まだ2013年は終わっていないが、12月4日時点でみると、主要通貨の中で今年最も強かったユーロは、最も弱かった円に対して22%程度上昇した。その他、スイス・フラン、英ポンドも対円で約20%、米ドル(以下ドル)も同18%程度上昇した。世界の金融資本市場がリスクオンの展開に転じ、円が弱い通貨になるとの予想もその通りとなった。
一方、豪ドルは対円で3%程度の上昇にとどまった(主要通貨の中で円に次いで弱かった)。欧州周辺国の財政問題の高まりを背景に、ユーロやユーロ圏債券をかなりアンダーウエイトにしている世界の投資家がユーロの買い戻しを余儀なくされ、逆にユーロが売られていた時に資金が流入していた豪ドルが売られるという予想は、ほぼ的中したと言っていいだろう。ちなみに、他の主要エマージング通貨では中国人民元や韓国ウォンが対円で18―21%程度上昇した一方、南ア・ランドは円よりも弱い通貨となった。
しかし、予想を大きく外してしまったのはドルだった。筆者は1年前、ドルが円以上に弱い通貨となる結果、ドル円相場はさほど上昇しないと予想した。世界最大の経常赤字国・対外純債務国である米国がゼロ金利政策を維持し、量的緩和(QE)を継続する状況下で、投資家のリスクテイク志向が強まれば、ドルは最弱通貨になると予想したのである。
結果的に筆者は、期待というものが市場を動かす程度を軽視し過ぎていたのかもしれない。円は弱くなると予想はしていたものの、インフレ期待やアベノミクスに対する期待がここまで円を弱い通貨にするとは予想していなかった。また、米連邦準備理事会(FRB)は結局、今でもゼロ金利政策とQEを継続しているが、QE縮小期待だけでドルがここまで強くなることも予想できなかった。
<来年末のドル円予想レートは106円>
では、来年の見通しはどうか。まず円は主要通貨の中で「最弱通貨」になると考えている。世界の金融資本市場は安定を維持しており、円が資本調達通貨として利用されやすい環境は続くだろう。米国がQE縮小を開始すれば、ドルが資本調達通貨としてあり続けることに対して疑念が生じるため、円の資本調達通貨としての役割がより際立つだろう。
また、JPモルガンは、日銀が4月にも追加緩和を行うと予想しており、13年同様、特に海外投資家の中での期待インフレ率が上昇することによって、日本の実質金利が一段と低下する可能性もある。さらに、1月の少額投資非課税制度(NISA)導入を受けて、国内個人投資家の外貨建て資産投資(投信経由)が活発化することが予想され、これも円安に寄与するだろう。
一方、ドルについては総じて緩やかな上昇を予想しているが、14年後半には本格的に強くなる可能性があると考えている。QE縮小開始は14年1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)と予想されるが、これはほとんど織り込まれており市場に大きな影響は与えないだろう。過去の経験則から言えば、QE縮小で米長期金利はむしろ低下する傾向がある。予算や債務上限問題もまだ解決しておらず、米国経済の不安定化も懸念される。
しかし、労働市場が緩やかな改善傾向を続け、インフレ率の低下が止まるようであれば、14年後半からは1年後に利上げが行われるとの期待が高まり始め、比較的短期の金利も上昇を始める可能性がある。そうなると、ドルはかなり強い通貨となることが予想される。
具体的な予想値を挙げれば、14年末のドル円相場は106円程度まで上昇するとみている。円キャリー・トレード全盛期の07年6月にドル円相場は124円まで上昇しているが、その後の日米インフレ率の差を勘案すると、当時の124円と同じ水準は現在106円となる。
すでに日本のインフレ率は米国を上回り始めているため、この状態が続けば、07年6月の124円と実質的に同じとなるレベルは、14年末には110円程度まで上昇する可能性がある。したがって、来年末の予想レートは106円としつつも、一時的に110円程度までのドル高・円安の可能性は十分あるとみておきたい。
<力強い成長が続くニュージーランド経済>
一方、14年の最強通貨はどの通貨になるだろうか。筆者は、来年前半はまだユーロが最強の状態が続くとみているが、結局途中でニュージーランド(NZ)ドルがその地位に躍り出るのではないかと考えている。
ニュージーランドは14年に先進国で最初に利上げを行う国になると予想されている。住宅投資の強さやクライストチャーチ大地震からの復興需要などもあって、13年の経済成長率は先進国中トップで、14年も英国に続く高い成長率(潜在成長率を上回る水準)を実現する見通しだ。
こうしたファンダメンタルズの強さを背景に、JPモルガンはニュージーランド準備銀行(中銀、RBNZ)が14年中に政策金利を現在の2.5%から3.25%まで75ベーシスポイント(bp)引き上げると予想している。他の先進国で来年中に利上げが予想されているのは、ノルウェーだけである(14年10―12月期に25bpの利上げ)。
来年は世界の金融資本市場が安定を維持する中、過剰流動性が少しでも有利な投資先を探して彷徨う状況が続く見通しだ。そうした中、ニュージーランドが投資先として注目を浴びる可能性があることを最後に言い添えておきたい。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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