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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第54回 失速のアベノミクス
http://wjn.jp/article/detail/4079840/
週刊実話 2013年12月12日 特大号
我が国の第3四半期の経済成長率の速報値が報じられた。
内閣府が11月14日に発表した2013年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質値で対前期比0.5%増。成長率は4四半期連続でプラスとなった。
もっとも、我が国がデフレ期である以上、重要なのは実質GDPではなく、名目GDPの成長率になる。名目GDP成長率が実質値のそれを上回っていれば、我が国がデフレ脱却に向かっていると判断できるためだ。
日本の第3四半期の名目GDP成長率は、対前期比0.4%(年率換算1.6%)。名目GDPから実質GDPを計算する際に使用される物価指数、すなわちGDPデフレーターは、対前期比でマイナス0.1%。第2四半期はプラス0.1%だったため、少なくとも第3四半期はデフレ脱却ではなく「デフレ化」が進んだことになる。実質GDP成長率が減速したことよりも、こちらの方がショッキングだ。我が国はいまだデフレなのだ。
そもそも、対前期比のGDPデフレーターがプラス0.1%('13年第2四半期)になったところで、デフレ脱却とはお世辞にも言えない。さらに、第3四半期の日本はGDPデフレーターの上昇率が高まるどころか、マイナスに逆戻りしてしまったのだ。
内閣府の資料を見る限り、第3四半期のGDP成長を牽引したのは外需(純輸出)ではなく内需である。
実質値で見た内需の寄与度が0.9%、外需がマイナス0.5%、名目値では内需寄与度が1.1%、外需がマイナス0.7%。実は、安倍政権発足後に外需が成長に大きく貢献したのは、第1四半期のみで、第2四半期も「辛うじて貢献」程度に過ぎなかった。それが第3四半期からは、外需はむしろ「足を引っ張る」状況になっている。
今年の第1四半期、アベノミクス効果で円安が進み、大手輸出企業の業績が好転した。
結果的に、外需のGDP成長に対する寄与度は高まった。
ところが、今年5月以降に円安が一服し、外需の成長寄与度は下がって行く。ついに、第3四半期にはマイナスに落ち込んでしまったわけである。
また、第3四半期のGDPの内需項目を見てみると、民間住宅投資が実質で2.7%、名目で3.4%と好調だ。これはもちろん、消費税増税前の駆け込み需要が原因だ。
残念ながら、住宅の駆け込み投資は9月30日をもって終了し、翌10月に急減速してしまった。
少なくとも、'13年第4四半期以降は、民間住宅投資はGDPの牽引車とはなり得ない。
実は、第3四半期の成長に最も(%で見て)貢献したのは、公的固定資本形成(公共投資)である。実質値で6.5%、名目値で6.6%。
逆に、肝心要の個人消費と設備投資は成長率が鈍ってしまった。両項目共に「辛うじてマイナスではない」という状況である。
特に、アベノミクスによる株高が頭打ちになったせいか、個人消費がプラス幅を大きく減らした(0.1%増)影響は大きい。
結局、2013年1月以降の高い成長率は、
「アベノミクスによる株高を受けた個人消費拡大」
「アベノミクスによる円安を受けた純輸出、設備投資拡大」
が支えていたことがわかる。
円安、株高の進行がストップした結果、消費税の駆け込み需要を除き、民需は低迷状態に陥った。
我が国はいまだに「民間主導の経済成長」の局面には至っていないのだ。しかも、GDPデフレーターがマイナスである以上、明らかにデフレが継続している。
この状況で、半年後に消費税増税という「崖」を迎えることになるわけだ。
結局のところ、バブル崩壊後のデフレ期に、主導的に需要を牽引してくれるのは、政府しかないのである。目の前の需要が拡大しない状況で、民間が安心して投資を拡大するなどということは、起き得ないとまでは言わないが、なかなか困難という話だ(増税前の駆け込み消費などは除く)。
無論、日本銀行は金融緩和政策(量的緩和)を継続し、景気を下支えしようとするだろう。
とはいえ、中央銀行は量的緩和で発行した「お金」の行き先を管理することはできない。
量的緩和のそもそもの目的は「デフレ脱却」、つまりは物価上昇である。日本銀行が発行した日本円は、財やサービスへの消費、投資に向かってもらわなければならない。
ここで言う投資とは、民間住宅投資、民間企業設備投資、公的固定資本形成(公共投資)の三つのみだ。株式投資や土地への投資、金融商品への投資は含まれない。
もちろん、株価が上昇していけば、キャピタルゲインを得た(あるいは「得る」)人が消費を増やしてくれるかも知れない。
そうなれば当然、財やサービスの価格に影響を与えるが、株価上昇「のみ」では無理だ。しかも、日本人はアメリカ人ほどには、
「株価が上昇した。ならば、消費を増やそう」
というシンプルな経済行動を取らない。15年もの長期間、所得や物価が下落するデフレーションに苦しめられていた以上当然だ。
来年の4月に訪れる国民経済の崖を、デフレ状態の日本経済は乗り越えられるだろうか。
金融緩和は当然継続するとして、ポイントは来月にも決定される経済対策の規模と詳細である。
GDPデフレーターが再びマイナスに落ち込んでしまった以上、安倍政権には「機動的な財政出動」といったつまらない話ではなく、「想定外の規模の財政出動」を一日本国民として心から望む。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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