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http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131205/ecn1312050728002-n1.htm
2013.12.05 経済快説
安倍晋三首相は労働組合のトップでもあるのか。最近の「賃上げ」に向けた働きかけは、すっかり影が薄くなった労働団体のトップよりもはるかに存在感がある。首相と首相官邸が、企業経営側に向かって「ボーナスよりもベア実施へ」などと呼び掛けるのだから異例の事態だ。
政策パッケージとしてのアベノミクスには「分配政策」が欠けている。「金融緩和」は大いに効いており、「財政出動」もそれなりの下支え効果があり、抜本的な規制緩和が必要な「成長戦略」はもともとたいしたものが出てこないだろうという点で予想通りだが、「分配政策」は初めからない。
そして、金融政策が所期の効果を発揮するにつれて、大多数の勤労者層の実質所得低下があらわになりつつある。
現段階で、製品価格の上昇効果以上に賃金が上昇するなら、企業は雇用をむしろ減らすだろう。景気を拡大して失業を減らし、人員不足感が出て賃金が上がる展開にならないと、マイルドなインフレの実現と継続は難しい。
多数を占める正社員の勤労者を仮に「中間層」と名付けるなら、中間層の実質所得がいったん下がるのは、政策上、予定通りなのだ。アベノミクスの分配上の効果は、株式・不動産などの資産を持っている層と、失業の危機にさらされている労働市場の最弱者層にプラスで、勤労者「中間層」にマイナスだといえる。
その代わりに、主に非正社員だが、失業リスクにさらされた労働者には、雇用機会増加と一部では賃上げが実現しつつある。
企業経営者側は、好業績を背景に、ある程度の賃上げには付き合う態度を取りつつも、トヨタ自動車が「期間社員」を期初の6割増にする動きに象徴されるように、雇用拡大は非正規労働者が中心であり、正規雇用の拡大には慎重だ。
アベノミクスでは、まず資産家層と企業経営者が得をして、次に雇用市場の失業危機層が助かり、さらに非正規雇用者の賃金が上昇してから、最後に余力があれば、正社員の雇用機会拡大と賃金上昇にたどり着く。
安倍政権としては、有権者の多数派である中間層の不満がたまることを恐れるはずだし、もちろん、賃金上昇は当面の目標であるマイルドなインフレの実現に役立つ。これらが、今回の賃金問題への介入の背景だ。
正社員「中間層」へのメリット波及が遅くなるのは、はっきり言って、現在の正社員保護が過剰だからだ。アベノミクスが悪いわけではない。デフレなら、企業は正社員の採用と賃上げに一層消極的になるだろう。経済の効率性のためにも、労働者間のフェアな競争のためにも、正社員解雇の規制緩和を進める方がいい。
働きのよい勤労者には、その方がチャンスも報酬もより多くなるはずだ。(経済評論家・山崎元)
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