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底なしのメニュー偽装、問題の本質は何か 一連の表示偽装から浮き彫りとなった3パターン
http://toyokeizai.net/articles/-/25069
2013年11月30日 山川 清弘,石川 正樹,許斐 健太,猪澤 顕明
阪急阪神ホテルズから始まったメニュー表示偽装の連鎖が続いている。
10月下旬以降に明らかになっただけで、ホテルではホテルオークラや藤田観光などの名門グループが名を連ね、百貨店でも、高島屋を皮切りに三越伊勢丹、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武の大手4社が相次ぎ公表した。ただし、そのほとんどが「偽装」とは認めていない。あくまでも「誤表示」との主張だ。
「消費者の信頼を回復するため、政府を挙げて迅速に対応する」(森雅子・消費者担当相)。景品表示法で禁じられている優良誤認(実際よりも、すごくよいものと誤解させる表示)まがいの問題が蔓延していることに危機感を持った消費者庁は、ガイドライン策定に動き出した。
だが、そもそもメニュー表示偽装は、最近になって急に表面化したものではない。長期にわたって横行しており、これまでも散発的に表面化していた。
たとえば、リゾートトラストでは昨年3月、表示偽装が表面化。自主調査の結果、18の施設での誤表示が明らかになっている。
■厳しい競争環境
メニュー表示を偽装した背景には、ホテルやレストランのモラルの問題に加え、厳しい競争環境がある。
デフレに慣れた消費者に受け入れられる価格で料理を提供するため、いかに食材コストを抑えるかが現場には大きなプレッシャーとなった。特に「ビュッフェ形式だと、高級食材を売りにしないと客が集まらない。その結果、メニュー表記が派手になり、食材との“ミスマッチ”が起きやすくなった」(外食関係者)。
当然ながら、コストダウンのプレッシャーは食材を供給する側にも及ぶ。たとえば、段ボールには産地などの正確な記載がされていても、食材が卸業者からレストランなどに届けられる際には、小分けにされている。そのため、「卸業者が産地などを偽っても、われわれにはわからない」(居酒屋幹部)。
では、表示偽装をなくすことはできるのか。今回明らかになったメニュー表示偽装には三つのパターンがある。
一つは加工方法だ。冷凍ジュースをフレッシュジュース、機械でこねたミンチを「手ごね」と呼ぶ事例が相次いだ。鮮魚のお造りが実は冷凍品というケースもあった。業界内には「メニューには、ある程度の美辞麗句を入れないと魅力がなくなる」(ホテル関係者)との声もあり、罪悪感の薄いケースが目立つ。
二つ目は食材の偽装だ。ブラックタイガーを車エビ、バナメイエビを芝エビと偽装する事例は、多くのホテルで起きている。牛脂を注入した加工肉をブランド牛肉と表示する例も散見された。
ブラックタイガーやバナメイエビなどが粗悪な食材というわけでは決してなく、「フランチャイズ契約のホテルから『ちゃんとした食材を使っている。それなのに返金しないといけないのか』という声もあった」(別のホテル関係者)。だが、違う食材を使うことによって、顧客を欺いていることに変わりはない。
加工方法や食材の表示偽装については、ホテルやレストランなど料理を提供する側がきちんと対策を取れば、改善できる問題といえる。
■産地を表示しない?
三つ目のパターンである産地偽装も、一義的にはレストラン業者が偽りの表示を改めれば済む話だ。また、メニューの信頼回復を図るならば、卸業者まかせにするのではなく、顧客に料理を出すレストラン自身が責任を持って、産地確認の体制を整備すべきだろう。
だが、現実の対応はむしろ逆になる可能性もある。「悪天候などによってメニューに表示している産地で収穫できなかった場合、近隣で収穫されたものを使うことがある。最近の流れだと表示偽装とされてしまうので、工夫する。それが今回の教訓だ」(外食首脳)という。
仮に「工夫」によって食材の産地表示をなくしたり、あいまいにしたりすれば、トレーサビリティ(産地などの追跡可能性)の流れに逆行する。明らかに、おかしな「教訓」だ。
2003年、米国でのBSE(牛海綿状脳症)問題に端を発して、日本でも食の安心・安全が一段と叫ばれるようになった。それからちょうど10年。誤表示対策として表示内容が後退すると、せっかく整備されたトレーサビリティのチェック体制が形骸化してしまいかねない。
今回、消費者庁の主導するガイドラインが、サプライチェーン全体を対象とし、逃げ道のないルールを作れるかどうか。同庁は「消費者や同業他社からの情報提供が頼りだが、ガイドライン策定後に違反が見つかったら厳罰に処す」としている。
失った消費者の信頼を取り戻すには、メニュー表示のルール作り、これまでの慣行の見直し、チェック体制の整備など、行政だけでなく業界全体を巻き込んだ抜本的な見直しが不可欠だ。
(週刊東洋経済2013年11月30日号)
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