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2018年度から「減反廃止」でもコメ生産量減るカラクリを解説
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131127-00000015-pseven-soci
週刊ポスト 2013年12月6日号
政府が2018年度からコメの減反を廃止する方針を決めた。マスコミは「政策の大転換」と報じているが、農業関係者が大ショックを受けているかといえば、涼しい顔だ。
それどころか、むしろ歓迎ムードと言っていいくらいである。なぜかといえば、農家の減収にはならず、小規模・零細農家であっても「土地を守り続けられるかもしれない」と踏んでいるからだ。
消費者にとって関心事は「それでコメの値段は下がるのか」という点である。ところが、下がるどころか「上がるかもしれない」と農協幹部が規制改革会議で打ち明けている。となると、いったいどこが「大転換」なのか。
答えは、農林水産省が11月6日に自民党の農林関係合同部会に提出した資料にある。「現行施策の現状と課題、論点整理を踏まえた中間とりまとめ(案)」と題された15枚の紙だ。
農政は多種多様な補助金が絡み合って動いている複雑な制度である。だから一部の補助金が廃止されたからといって、別の補助金が拡充されていれば、全体として農家は困らない。今回の「減反廃止」とは、まさにそれだ。
資料に沿って今回の政策をみてみよう。まず、国が決めて都道府県に割り振っていた生産数量目標を2018年度で止める。加えて、この生産調整への参加を条件に一律で支払っていた補助金(10a当たり1万5000円)も止める。
マスコミは、この2つの施策廃止をとりあげて「減反廃止」と報じた。ところが、本当の柱は別にある。それは資料にある「水田の有効活用対策」だ。主食用のコメ作りから飼料用や米粉用など非主食用のコメ作りに転換した場合に支払う補助金を大幅に拡充するのである。
コメの生産量を政策的に減らしていくのが減反だ。だから、減反廃止なら本来、コメの供給は増えなければならない。だが、今回のように非主食用向けの補助金を拡充すれば、逆に主食用の生産は減ってしまう。
すると、何が起きるか。コメの値段は下がるどころか上がってしまいかねない。コメの需要は趨勢的に減っているが、それに合わせて供給を減らしていくからだ。
なんのことはない。今回の政策は「(主食用の)コメ作りを増やすのではなく、逆に減らす」のが本質である。その核心部分を、ほとんどのマスコミが勘違いしている。
なぜ、こういう話になったかといえば、根本的な理由は農水省が農家=生産者の顔ばかりをみて、家計や消費者を見ていないからだ。資料の冒頭には、こう書いてある。
「行政による生産数量目標に頼らずとも、生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行えるよう行政、生産者団体、現場が一体となって取り組む」
つまり「コメ需要は減っているが、政府も農協などと一体で取り組むから(経営は)大丈夫ですよ」と言っている。資料に「家計」とか「消費者」という言葉は一切、出てこない。ひたすら生産者の立場に立っているのだ。
農家への補助は相変わらず手厚い。たとえば、農地や水路の維持管理や質向上には多面的機能支払という補助金を新設する。賃貸を仲介する農地中間管理機構に農地を貸した農家には「協力金を支払う」という項目まである。リース収入とは別の「つかみ金」であるかのようだ。
これは、たしかに「政策の大転換」かもしれない。ただし、どこまでも農家に甘い誘導策だ。消費者への恩恵は乏しい。税金の使い道はもっと他にないのか。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『政府はこうして国民を騙す』(講談社)。
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