http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/172.html
Tweet |
東京国際映画祭でトム・ハンクス氏と談笑する安倍首相。国際的に存在感をシメしているのは小泉元首相以来(ロイター/アフロ)
アベノミクスバブルは、生じていない 批判論者は、大半が的外れ
http://toyokeizai.net/articles/-/24934
2013年11月27日 村上 尚己 :マネックス証券 チーフ・エコノミスト 東洋経済
今回からマネックス証券のチーフ・エコノミスト、村上尚己(むらかみ なおき)氏の新連載をお届けする。同氏は「金融業界の論客の1人」であり、「アベノミクス擁護派」としても知られる。マーケットの歴史的な転換点から1年を期に開始する、本格派のコラムをぜひお読みいただきたい。
2012年11月半ば以降、大幅な株高と円安が進む、いわゆるアベノミクス相場が始まって約1年が経過した。アベノミクスとは、端的に言えば「3本の矢」であり、「大胆な金融緩和政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」を指す。だが、マーケットは、その中でも、日本銀行の金緩和政策の強化に大きな反応を示した。
■「アベノミクス=資産バブルのリスク」は本当か
筆者は、金融市場に近い立場から、12年秋までの民主党政権下においても、日本銀行の金融政策強化が必要であると考えていたし、レポートなどでも何度も指摘してきた。その点からすれば、安倍政権誕生をきっかけに実現した、日本銀行の金融緩和強化は、ようやく待ち望んでいた政策が実現したように思えた。「デフレ」という日本経済が抱える最大の病気が治癒する期待が、ようやく持てるようになったからである。
一方で、アベノミクスについては、筆者のように評価する見方ばかりではなく、批判が多いのも事実だ。「金融緩和を強化しても、資産バブルを引き起こすだけ」などの見方が根強い。批判する方からの視点に立てば、12年11月8000円台にあった日経平均株価が1年で約70%も上昇し、株式市場という資産価格が極端に動いたことは、「資産バブルのリスクが高まっている」ように見えるのかもしれない。バブルが生じていることで、かえって経済活動が不安定になる、という批判をしたいのだろうか。
■日本株は、出遅れを取り戻している段階に過ぎない
だが、もう少しよく見てみよう。日本株はこの1年で歴史的な上昇を示したが、それは過去1年というタイムスパンだけでみた話である。下の図表を見ていただきたい。08年秋にはリーマンショックがあったわけだが、そこから半年後の09年春を起点とした、5年間の先進国の株式市場の動向である。ここから何が言えるだろうか?
日本株はようやく追いついてきただけ
http://tk.ismedia-deliver.jp/mwimgs/e/d/-/img_edc5baf3ee8e79e95162cdd47b386cdd197559.jpg
09年3月を底に、米国では約5年間上昇相場が続き、リーマンショック前の株価を超えすでに2.7倍以上にもなっている。
欧州と新興国はそれほどではないが、それでも2倍近くまで株価が上がっている。日本株はこれらの動きにまだ追いついていない。こうした国際比較をすれば、過去1年で大きく上昇して上昇した日本株、過去5年でみると出遅れを取り戻しつつあるだけに過ぎないのだ。
そもそも、「国が違うから、日本と米国の株価は、単純に比べられない」と考える方もいるかもしれない。だが、98年〜08年の10年でみると、米国株と日本株はほぼ連動して動いていた。つまり09年から12年の後半までのように、米国株などに日本株が全くついていけない状況が、特異だったのである。
もちろん、日本は11年3月の東日本大震災という大きな不幸があった。だが、問題は大震災だけではなかった。09年以降の世界的な株高局面でも、日本株がほとんど上昇しなかったことの理由としては、日本の経済状況に対する、「投資家の強い悲観」があったと考えられる。つまり、日本では、「デフレ」という異常な経済状況が永続するという「期待」を、多くの投資家が抱いていたことだ。
では、なぜ「投資家のデフレ期待」は生まれたのだろうか。それは、米国と日本の金融政策の違いがもたらしていたと考えられる。米国の中央銀行であるFRBは、景気回復が続く中でも、金利をゼロ近傍で維持しつつ、バランスシートを増やす金融緩和強化策を続けた。具体的には、QE1(量的緩和第1弾)からQE3(同3弾)まで打ち出し、バランスシートの規模を、3倍以上に増やしたのだ。
13年に入っても、金融緩和を続けている。この政策の是非について様々な見方があるが、実際には、積極果敢な金融政策が、さまざま逆風を相殺する形で、米国経済の安定成長が続いた。そして、米国株のパフォーマンスは、世界の中で最も良かった。
日本でも、アベノミクスの第1の矢として、安倍首相が金融緩和強化による脱デフレを訴えたことに始まり、13年4月に黒田新総裁率いる「異次元金融緩和」が実現した。ただ、この政策は、新体制になった日本銀行が、米FRBをお手本にして、明確なインフレ目標を掲げ、後追いした面も大きいのだ。
仮に、アベノミクスによる金融緩和強化が引き起こした、株高と円安(円高修正に過ぎないが)によって、バブルが起きているだけというならば、その手本となり先行して金融緩和の強化を続け、世界の株式市場を先導してきた米国株で、バブルのリスクが高まっているかどうかという視点も必要だろう。
■米国も日本も、今の状態はバブルではない
もちろん、バブルかどうかという判断はいろいろな尺度や考えがある。だが、最高値更新を続ける米国で、「今の株式市場はバブルだ」という見方は、金融市場では多くない。新FRB議長に就任するイエレン氏も、「PER(株価収益率)の観点などからみても、バブルとは言えない」と明言している。
結局、「金融緩和強化が、バブルのリスクを高める」という話は一見わかりやすい。だが、それは「程度次第」である。「アベノミクス発動」から1年たったわけだが、それは、数年遅れで、ようやく米国に追いつく格好で金融緩和の強化が実現した。金融緩和で先行、株価上昇が続いた米国でバブルのリスクが小さいのだから、株高が遅れて来たと位置づけられる日本で、1年程度大幅な株高になったからといって、バブルのリスクが高まっているとは言い難い。
日本で、ようやく株高が始まったことは、アベノミクスで「脱デフレ」と「経済の正常化」が期待できるようになり、米欧株価とのギャップを埋める過程で、起きたと素直に評価できるのだ。今の日本は、バブルでもないし、その副作用を心配する段階でもないのだから、それをとりあげてアベノミクスを批判するのは時期尚早だ。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。