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旧「しごと体験ゾーン」の宇宙ステーション。「私のしごと館」には見る者を圧倒する“無駄”があふれている。国からの無償譲渡で京都府はこの施設を有効に再生できるのだろうか(平成16年撮影)(写真:産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131125-00000521-san-pol
産経新聞 11月25日(月)12時0分配信
実物大?の「宇宙ステーション」、一体数百万円の「ちょんまげ人形」、一度も使われたことのない「燻蒸(くんじょう)庫」…。581億円を投じたものの「無駄遣いの象徴」と批判を浴び、オープンからわずか7年で閉館した勤労体験施設「私のしごと館」(京都府精華町、木津川市)。国から無償譲渡を受ける見通しになったことを踏まえ、京都府は12月の定例府議会で活用策の最終案を提出する方針だ。地域に開かれた研究開発拠点などを目指し、ネーミングライツ(施設命名権)の導入も検討する。
しかし、山田啓二府知事が「あれもいらん、これもいらん」と驚いたほど、痛々しいまでに無駄に広大で豪華な施設を再生できるかどうかは未知数だ。頓挫すれば府にとって新たな重荷になりかねない。
■「金属欲しい人には売れるわな」
「私のしごと館」は、厚生労働省所管の独立行政法人雇用・能力開発機構が設置し平成15年にオープン。同機構や委託会社が運営していたが、22年に閉館し、その後同機構も廃止された。
こうした経緯をたどる施設だが、入場するやいなやまず目に飛び込んでくるのは、エントランスホールに近い旧「しごとシアター」だ。
吹き抜けの建物にある高さ10メートルはありそうな円筒形の華麗な劇場は、中高生ら若者が職業を学ぶために、果たしてどこまで役に立ったのか。
本物と同じ大きさとおぼしき宇宙ステーションや消防車、耕運機…。次々と現れるテーマパークさながらの豪華設備が、いまや痛々しい。
22年3月の閉館以降、施設が公開されることはなかったが、国から京都府に無償譲渡される見通しになったことを受け今年7月、山田知事が視察、報道関係者も同行した。
山田知事は「これはいらん」「あれもいらん」「この手すりは金属が欲しい人には売れるわな」と、同行した府の担当者に話しかけながら視察を続けたが、そうせずには間がもたないほど、無残な光景が広がっていた。
江戸時代の仕事などを等身大の人形で紹介するコーナーで、ちょんまげ姿の人形を見上げた山田知事は「この人形1体で数百万円か」と何度もつぶやいた。雇用保険料581億円を注ぎ込んで造られ施設は、それだけに止まらない。
たとえば、古文書の保存に活用できる燻蒸庫。重厚な金属製の扉をそなえた設備は、設置するだけでも相当値が張りそうな特殊な設備だが、開館中、一度も使われたことがなかったという。
いったい誰が、どういう目的で導入を決めたのか。山田知事も「使われたことがない」との説明にショックを隠さなかった。
仏像などの文化財保護に使えるという広々とした収蔵庫も2つある。
内部は桐の板で覆われ、山田知事が「博物館仕様になっている」と評価した立派な施設だが、ここも、文化財の保管では一度も使われたことがないらしい。なるほど、オープンから10年経過しても桐のいい香りがするはずだ。
■「これでは誰も買わん」
「私のしごと館」は、8・3万平方メートルの敷地に立つ延べ床面積3・5万平方メートルの3階建て。
部屋や施設はまだまだたくさんあり、「しごと体験ゾーン」には、実験室的な設備を供えたブースがいくつもあった。3200キロまで運べるエレベーターも。山田知事は同館を研究拠点に転用する構想を描いており、「研究施設にぴったり」と喜んでみせたのだが…。開館中は、年10億円を超える赤字を垂れ流したという巨大施設、維持管理するだけでも大変そうだ。
自ら「貴賓室」と命名した豪華な会議室に、山田知事は「関西州都の国会に」と冗談を飛ばしたが、府の担当者に「これは使われたことがあるのか」と思わず確かめる場面も。「何度かあるようです」との回答に、少しほっとした様子も見せた。
約1時間の視察を終えた山田知事は「もっと荒れ果てた所だと想定していたが、意外ときれいだった」「会議室などのバックヤードはいますぐにでも使えそう」と評価し、「学研都市のお荷物施設をリーディング施設にしたい」と、今後の活用への意気込みを語った。
ただ、施設売却の入札が行われたにもかかわらず、応札者が出なかったことをを踏まえ、「これでは、だれも買おうと思わんよな」と本音もチラリ。
その表情には、無償譲渡を受ける以上、なんとか使い切らなければならないという、府トップの“当惑”さえ感じた。
■HPに「資産損失カウンター」
維持管理だけでも大変な広大な施設を、それでも府が引き取る決断をしたのには理由がある。
「さまざまな仕事が、見て、触れて、体験でき、仕事や技能などの詳細な情報が入手できるわが国初の職業総合情報拠点。教育機関や関係団体などとともに連携しながら、若者を中心に、働くことの意義やものづくりのおもしろさ、技能の大切さなどへの理解を促進し、職業選択への支援に活用してまいりたい」
平成13年2月の定例府議会でそう答弁し、施設のオープンに期待していたのは、当時の荒巻禎一知事だ。府としても、学研都市活性化のために同館の建設を積極的に誘致してきた。
14年4月に就任した山田知事自身も、同館のオープンを目前に控えた平成15年2月の定例府議会では、「職業に関する情報を総合的に提供する私のしごと館が、学研都市に開館することは時宜を得たものとして大いに期待している」と答弁している。
かつては、もろ手を挙げて歓迎した背景があるだけに、後に残された巨大施設を幽霊施設のまま、いつまでも放置しておくことはできない、というのが府の立場だ。
府は、公式ホームページに「日々刻々と価値が失われる 旧『私のしごと館』」というページを開設し、旧「私のしごと館」資産損失カウンターまで作成。「このままでは、国民の大切な財産が有効活用されないまま、資産価値が年間数十億円失われていくことになります」と、国に早期の無償譲渡を働きかけてきた。
■日の目を見る日が…
閉館から3年以上が経過した今年6月、国からの無償譲渡に必要な改正総合特区法が、国会のごたごたに巻き込まれ、一時は審議入りさえ危ぶまれたものの、何とか成立。ようやく、早ければ今年度内にも府へ無償譲渡が実現する見通しになった。
譲渡を見込み、府と京都大は健康づくりや農業などの研究拠点として再生する案を共同で発表した。今後、両者で協議し整備や運営にあたる方針で、再生に向けた動きが本格化し始めた。
府などの構想では、医療分野などでの新産業創出を目指す「関西イノベーション国際戦略総合特区」の目玉として再整備する方針。
健康づくりのほか、次世代エネルギー、先端技術を取り入れた高品質作物栽培技術、文化遺産の保存・継承などの分野で、産官学連携のワーキンググループを作り、研究を進める構想を描いている。
また、国内外にある文化財の修復や保存を進める「日本文化財保存修復国際センター」(仮称)の設立も視野に入れる。
文化財が多く、伝統の技を受け継ぐ職人も多い京都の地の利を生かし、世界を代表する文化財の修復拠点にしようという試みだ。
各国に散らばる日本の美術工芸品の中には、修復されずに放置されていたり、適切な修復が施されていない例もあることから、海外の美術館や博物館の学芸員らが修復技術を学べる場にもしたいとしている。
11月に示された最終案の素案では、実証実験への参加や、研究成果の発表などに地域住民がよりかかわる機会を増やすとしたほか、地域住民のヘルスケア、農業、文化資産の保存、継承などについては重点領域として位置づけ、国家レベルの研究プロジェクトが立ち上がるように支援を行うとしている。
果たして、完成以来、使われることもなかった例の燻蒸庫や、桐の板で覆われた立派な収蔵庫が日の目を見る日は来るのだろうか。プロジェクトが頓挫すれば、施設は再び重荷になりかねないだけに、譲渡後の府の一手に注目が集まる。
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