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消費税(付加価値税)は、国家機構ぐるみで最終消費者への転嫁を促しても、最終利益ではなく粗利益に課される“法人税”であることに変わりはない。
消費税の負担増がスムーズに売上に転嫁できる(販売単価及び販売量)なら、コストアップに苦しむ企業は存在しないはずである。
来年春の賃金改定は、円安で利益を増大させ、消費税増税で謂われなき“利益”が膨らむ見通しを持つグローバル企業で賃上げが行われるだろう。
しかし、内需型企業は、円安がもたらすコストアップと消費税増税による荒利減少が見通せるから、現状維持が精一杯で、賃上げはムリであろう。
消費税増税の“重み”がリアルになる来年9月以降、賃金の負担もずっしり響くようになり、再来年の賃金改定時に向けた賃下げの動きが強まり、少しでも人件費の負担を減らそうと、非正規労働者への切り替えや人員削減に動く企業が増加するはずである。
消費税は、輸出企業以外の企業にとって、人件費・利払い及び元本返済・配当・内部留保に課される税である。
そのような消費税が、来年4月3%・再来年10月2%とアップされることになっているのだから、付加価値のおよそ60%を占める給与(人件費)を引き上げる余力が生まれてくるはずもない。
このような認識のもと、消費税問題を解決しなければ、賃金アップも持続せず、設備投資も増大しないことから、デフレ解消も達成できない。
連合の古賀会長は、「政府は、大企業の賃上げにこだわっているが、働く者全体の賃金の底上げこそが重要」と“正論”を語っているが、そのためには、消費税を廃止とは言わないまでも、消費税増税を止めなければならないのである。
財政健全化という消費税増税の“言い訳”(目的)さえ雲散し、来年度予算はこれまでにない“放漫財政”になるだろうが、それは、競争力のある有力企業の価格アップを下支えすることにはなっても、内需型企業の多くを助けることにはならないだろう。
消費税を1円も負担しないどころか、国家詐欺とも言える消費税還付金で利益を増大させるグローバル企業のみが“ありもしない消費税の負担”を転嫁でき、消費税を実際に負担するその他の企業は、負担増を転嫁しきれずにもがき苦しむというシュールなブラックユーモアが現実のものとなるだろう。
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[創論] 給料、来春は増えるか
経済好循環へ月給上げ 連合会長 古賀伸明氏
日本がデフレを克服し、本格的に経済を再生するには、賃金の継続的な上昇が欠かせない。その実現に向けた政労使の課題とは何か。2014年の春季労使交渉で5年ぶりのベースアップ(ベア)要求を掲げる連合の古賀伸明会長と、物価の上昇を見据えた賃上げの重要性を説く大阪大学の大竹文雄教授に聞いた。(聞き手は編集委員 西條都夫、小竹洋之)
――来年春の労使交渉に向けて賃上げ機運が高まり、久しぶりに給料袋が厚くなる、と期待が高まっています。
「連合は5年ぶりに賃金水準を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を要求する方針だ。消費者物価は上昇局面にあり、景気も回復している。来年4月には消費税率の3%引き上げも決まっている。生活必需品が値上がりして、所得が増えなければ、単に働く人が困るだけではない。貧困の増大や格差の拡大で、社会全体が健全さを失う」
「来春の交渉では、月例賃金の引き上げと底上げに徹底してこだわるつもりだ。これまで経営者側は『月給は上げず、好業績になれば一時金(ボーナス)で社員に報いる』という論理だったが、ボーナスが増えるだけでは、貯金に回ることが多く、経済は活性化しない。また非正規社員の多くに一時金はない。彼らに波及させるためにも、月例賃金の引き上げが重要だ」
――自民党と労働組合はずっと対立関係にありますが、脱デフレをめざす安倍晋三政権は大企業に賃上げを求めています。意外な援軍が現れたということでしょうか。
「政府も『働く人に十分に報いる社会にしないと、経済全体がうまくいかなくなる』という認識を持つようになったと受け止めている。政府は、大企業の賃上げにこだわっているが、働く者全体の賃金の底上げこそが重要だ。経営側も従前通りの支払い能力論を振りかざすのではなく、日本経済に好循環をもたらすために決断するタイミングだ」
「ただ、情勢は楽観できない。ベアに前向きな発言をする経営者が現れる一方で、内需型企業は円安によるコスト上昇に苦しんでいる。全力で交渉に臨みたい」
――安倍首相も出席する政労使会議が10月に発足し、そこで賃上げなどの問題も話し合われています。
「政府と組合、企業など社会のステークホルダー(利害関係者)が直接、意見をぶつける場を設けるのはいいことだ。しかし、具体的な賃上げや労働条件について政府が介入するのは労使自治の原則に反し、容認できない。そうした立場を分かってもらったうえで、会議に参加している」
――振り返れば1997年以降、日本の名目賃金はほぼ一貫して下がってきましたが、その原因は。
「経済のグローバル化やIT(情報技術)による技術革新など様々な要因が作用していると思うが、見逃せないのが金融の力の増大だ。経営者が株式時価総額を重要視するようになり、『働く人』を価値創造の源ではなく、コストの塊と見るようになった。人間を大切にするのが日本企業の強みだったはずだが、そこを忘れて企業自身も競争力を失ったところが多い。私の出身の電機業界では、ITバブルが崩壊した2001〜02年ごろが転機だったと思う」
――一方で組合も雇用維持を優先し、賃下げや非正規雇用の拡大を受け入れてきました。働く人の環境悪化の責任は労組にもあるのでは。
「日本の企業内組合は高度成長時代には会社と密接に意思疎通し、企業の生産性向上などに大きな成果を上げた。その強みは今も失われていないが、低成長時代になると、『とにかく企業が存続することが、組合員の利益にもかなう』という判断に流れがちだ。これはやはり企業内組合の弱点だと思う。組合のリーダーも自社のことだけでなく、視野を広げてほしい」
――安倍政権は雇用の流動化も促進する考えですが。
「労働者を犠牲にすることなく産業構造を転換することが重要だ。『失業なき労働移動』というなら、新しい雇用を生み出し、技能転換の仕組みやセーフティーネット(安全網)を強化すべきだ。受け皿もないのに企業の都合で労働者を放り出すのは反対だ」
こが・のぶあき 松下電器産業出身。今秋、連合会長3期目に。現在675万人の組合員数を1千万人まで増やす目標を掲げる。61歳。
物価先読みして判断を 大阪大学教授 大竹文雄氏
――日本の賃金はなぜ上がらなくなったのですか。
「実質賃金や労働分配率(企業が生み出す付加価値の中から人件費に回す割合)の低下は先進国共通の現象だ。技術革新とグローバル化の影響が大きいと言われる。コンピューターで代替できる仕事をしている人や、新興国と同じようなモノを作っている人の賃金が下がっている」
「日本の特徴は名目賃金まで低下している点だ。物価が上昇していれば、名目賃金の水準を変えなくても実質賃金を引き下げることができる。だが日本は金融危機下の1998年に本格的なデフレに突入し、名目賃金の引き下げで実質賃金を調整する道を選ばざるを得なくなった」
――労使の選択が間違っていたのでしょうか。
「賞与を中心に名目賃金を下げ、危機に対応しようという当時の選択は正しかったと思うが、結果的にデフレの悪循環をもたらしたのも事実だろう。だれもこうなることを予想していなかった」
「私たちは賃金の水準を実質ではなく名目で判断しがちだ。だから名目賃金の引き下げは労働者の意欲を低下させる。将来も賃金が上がらないという予想を形成し、必要以上に保守的な消費行動をとらせる要因にもなった」
――デフレ心理の解消がアベノミクスの狙いです。
「円相場や株価をみる限り、アベノミクスが将来に対する期待を変えたのは確かだ。景気の回復に伴って労働市場に逼迫感が出てくれば、少し遅れて賃金も上昇する。このメカニズムがうまくいくかどうか、まだ確信を持てない」
――連合がベア統一要求を打ち出しました。ベアに前向きな企業もみられます。
「2014年の春季労使交渉は、期待形成が本当に変わったかどうかを確認する場になる。物価が1〜2%上昇するという予想を労使で共有できれば、名目賃金を引き上げることは可能だ。賃上げが一部の企業にとどまらず、面として広がる必要もある」
「企業収益は確かに改善しているが、人手が足りなくなるほど景気が回復しているわけではない。デフレから脱却するために、物価の上昇を織り込んで賃金を引き上げるという『フォワード・ルッキング(先読み型)』の労使交渉が求められているのだ。将来を見据えて今を変えるのは難しいが、労使の協力でうまくいく可能性もある」
――春季労使交渉のあり方も問われそうです。
「景気情勢や企業経営に関する認識を労使が共有し、望ましい賃金の水準を設定するという重要な機能を担ってきた。それが労使紛争の抑制にも役立ってきた。デフレ下で賃金決定の機能が低下していたが、その機能が再認識されるのではないか」
「労使交渉では物価動向を巡る見解が一致するかどうかが課題になる。政労使会議のような場を活用し、政府の判断を共有してもらうことも必要だ。もちろん賃金の水準に政府が介入すべきではない。労使に必要な情報を提供し、賃上げの合意を促進するのが政府の役割だろう」
――継続的な賃上げをもたらすための課題は何ですか。
「物価上昇の期待を高め、景気全体を底上げしていく政府・日銀の努力は欠かせない。規制緩和や法人減税、雇用の自由度を高めるような労働市場改革などが重要だ。政府がアベノミクスの継続を強くコミット(約束)することで、企業も安心して前に進める。安定した長期政権が続くと期待されているのだから、その力を使わない手はない」
「本質的な問題は労働生産性の向上だ。技術革新とグローバル化で賃金に下落圧力がかかるなら、それを打ち返すものを労働者が持たなければならない。日本製品の魅力を増し、人的資本のレベルを上げる。結局は、日本人労働力への需要を高めるしかない」
おおたけ・ふみお 阪大博士。労働経済学、行動経済学が専門。「日本の不平等」「競争と公平感」など多数の著作がある。52歳。
円安の恩恵どう還元、経営者の覚悟問う
最近発表された企業の4〜9月期決算をみると、円安の恩恵を受けて自動車をはじめとする輸出企業の業績は総じて好調だ。この点はアベノミクスの成果とも言えるが、一方で円安はエネルギーや食品など輸入品の価格を押し上げ、生活者はメリットよりもデメリットを感じることが多い。
来春の労使交渉で賃上げが実現すれば、輸出企業が手にした円安メリットを自分だけで独り占めせず、働く人の所得向上という形で広く社会に還元することにもなる。経営者の覚悟が問われる局面だ。
(西條都夫)
[日経新聞11月24日朝刊P.11]
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働き手、冷めた見方多く
日本経済新聞電子版の読者に勤務先(配偶者や家族も含む)の給料が来春にベア実施で上がるかどうか尋ねたところ、53%が「変わらない」と答えた。「増える」は18%、「減る」は11%だった。「業績がよくなったのは金融緩和と円安のおかげ。いずれ効果は薄れる」と冷めた見方が目立った。
政府が民間の賃金決定に関与することの是非を聞くと、「反対」「どちらかと言えば反対」が合わせて55%に対し、「賛成」「どちらかと言えば賛成」は合計45%だった。反対派からは「日本は社会主義国家ではない」「企業の決定に介入すべきではない」などの意見が多かった。一方、賛成派からは「組合や野党が機能していない現状ではやむを得ない」との意見があった。
[日経新聞11月24日朝刊P.11]
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