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中国で先日に開かれた共産党の重要な三中全会(十八期中央委員会第三回全体会議)で、中央銀行である中国人民銀行が、経済自由化策の一環として、これまで為替市場への介入によって、人民元の対ドル為替を制御してきたのを今後しだいにやめていき、同時に人民元の為替変動幅を拡大していき、人民元の為替上昇に対する容認を広げていくことを決めた。
(PBOC Will `Basically' End Normal Yuan Intervention: Zhou)
人民銀行は、為替介入の減少や人民元の上昇容認をいつからどのくらいの速さでやっていくのか、明らかにしていない。ドル安人民元高を容認しろという米国からの圧力を受け、人民銀行は、以前から人民元相場への介入を減らして為替上昇を容認すると言い続けており、今回の決定は、それ自体が新しいものでない。中国当局は今回の三中全会で、経済政策の中に「市場原理」をこれまでより格段に導入していくことを決めており、その一環として人民元相場への介入を減らすことが盛り込まれた点が新しい。これまで米国の圧力でいやいやながらやってきたことが、今回、中国自身の総合政策の一つになった。
(Xinhua Insight: China puts market in the middle)
中共の三中全会は、経済の市場化加速と並んで、内需拡大の政策を打ち出した。都市での一人っ子政策を緩和したり、農村から出稼ぎに来て都会に定住した人々に都会の戸籍を与えたりすることで、都市における消費の拡大をうながすとともに、農村では農地の利用権売買の拡大を認めた。
(China to ease `one-child' policy as part of sweeping reforms)
米日などでは、中国の経済改革が予定通り進むかどうか、疑問視する報道も多く出ている。しかしその一方、リーマン危機後の5年間に、世界の自動車販売は、米欧日の市場が伸びていない半面、中国だけは売れ行きが順調に伸びている。中国の経済改革が順調に進むほど、世界経済は恩恵を受ける。米日は、政治的に中国嫌いだが、経済的に中国に依存する状況だ。狡猾な米欧勢と対照的なのは日本勢で、日本政府が尖閣問題で中国との政治関係を悪化させて中国の反日ナショナリズムを煽った上、需要増に見合う生産設備拡大をしなかったこともあり、日本車メーカーは中国での市場占有率が半減(30%から15%へ)し、中国市場での主導的役割を失ってしまった。
(Japanese carmakers rue lost lead in China)
中国当局が為替介入をやめていくことは、中国がドル買い元売りの市場介入で得たドルで米国債を買い増すのをやめていくことでもある。米国は、連銀がドルを大量発行して米国債を買い支えるQE(量的緩和策)をやめられないことが確定しつつある。やめたら米国債の価値が急落し、金利が高騰する。貧富格差が急拡大する米国では、政治力のある大金持ち(金融界)が米国債を保有する率が高まり、彼らの圧力により、当局はQEをやめられない。
(How Does The Collapse Of The Monetary System Look Like?)
(Treasury ownership marks wealth divide)
QEを永遠に続けることはできないので、米国債とドルは、いずれ崩壊していく運命が確定しつつある。その中で中国が、人民元の為替維持のために米国債の保有を拡大するのは馬鹿げている。人民元が安いことは、中国が輸出で経済を支えている限り大切だが、経済の牽引役を輸出から内需に転換できるなら、むしろ元が高い方が、海外からの輸入品の価格を下げられるので良い。中国の内需拡大策が順調に進むことは、米欧日の企業の利益を拡大すると一方で、ドルと米国債の崩壊させ、世界経済を米国中心から多極型に転換していく。
(国際通貨になる人民元)
ドルと米国債が崩壊していく過程において、中国は、市場に与える悪影響を懸念した人民銀行が、いつから為替介入を減らすか明言しないなど、慎重に(糞)真面目に対応しているが、対照的にお茶目に対応しているのが、いつものことだが、ロシアだ。ロシア議会では「ドルはすでにねずみ講の状態だ。このままいくと2017年にドル崩壊が起きる。早めにドル離れする必要がある」として、ロシア国内でのドルの使用と保有を禁止する、冗談のような法案が野党から出された。現状はドルよりルーブルの方が不安定だが、今後の4年で状況が変わる可能性は、確かにある。
(Russian lawmaker wants to outlaw U.S. dollar, calls it a Ponzi scheme)
ドルと米国債の崩壊に象徴される通貨の多極化は先のことになりそうだが、その前にいくつもの分野で、世界の体制が多極型に転換しつつある。その一つは貿易の分野だ。WTOは、新たな世界貿易の体制としてドーハラウンドを12年前から議論しているが、米国が単独覇権主義を強めたため、頓挫していた。ところがその後、WTOでは中国やブラジル、インド、ロシアなどのBRICS諸国が発言力を強めた。今年9月からはブラジルのアゼベド元貿易相がWTOのトップ(事務局長)に就任し、主導権が米欧からBRICSに完全に移ったかたちで、ドーハラウンドを蘇生する試みが始まった。
(WTO closes in on landmark trade reform)
(世界貿易体制の失効)
そして今、ドーハラウンドを座礁させていた大きな理由だった農業保護の問題について、中国とインド、米国、アルゼンチンといった、これまで対立していた諸国が合意に達しそうになっている。WTOは11月21日の一般理事会でこの問題に決着をつけたと報じられており、早ければ12月3−6日にインドネシアのバリ島で行われるWTOサミット(閣僚会議)で、ドーハラウンドが合意に達する。当初は米欧のやり方と利害を途上諸国に押しつけるために始まったWTOのドーハラウンドは、12年経って、途上諸国の利害を先進諸国に押しつける体制に衣替えして結実しようとしている。
(WTO chief urges last-ditch talks as draft deal nears)
(WTO on verge of global trade pact)
米国は、WTOを見捨てた後、太平洋と大西洋(米欧)でTPPを推進している。しかしWTOが復活すると、米国企業が親米諸国から利権を吸い上げる構図になっているTPPの不利益が目立つことになる。EUは、主導国であるドイツが、NSAの盗み見スキャンダルを受けて、米国とのTPP締結に消極的になっている。WTOの復活とともに、国際貿易協定の行方が一気に流動的になりそうだ。(だから、対米従属の維持を最優先する日本政府は、どんなに悪い条件でも早くTPPに入りたい)
(Angela Merkel says spy scandal is testing EU-US trade talks)
(貿易協定と国家統合)
NSAスキャンダルを機に、ブラジルなどBRICS諸国は、インターネットの国際管理の権限を、米国から剥奪し、BRICSが国連などに依拠してネット管理する体制に移行させようとしている。国連自体、米国が単独覇権主義をふりかざしてきたこの10年ほどの間に、主導権が米英からBRICSなど新興諸国に移っている。
(しだいに多極化する世界)
(インターネットの世界管理を狙うBRICS)
(覇権とインターネット)
(国連を乗っ取る反米諸国)
世界システムの主導権が米国から中国などBRICSに移ってしまう動きは「地球温暖化対策」に関しても起きている。以前は、二酸化炭素をたくさん排出して経済発展を終えた先進諸国が、これから二酸化炭素を出して発展しようとする途上諸国から、炭素税などとして金をむしり取るための機構だった「温暖化対策」は、09年のCOP15を境に、今では途上諸国が先進諸国に支援金を出させるための機構に変質している。
(新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題)
(地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1))
(地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(2))
地球は温暖化しておらず、1999年ごろから地球の平均気温は上がっていない。米英日のマスコミは「地球が温暖化を続けている」「最近は温暖化が止まっていないが、今後また温暖化するのは間違いない」といった報道に終始しており、それらはプロパガンダである。それらの先進諸国のプロパガンダは以前、先進国の国益に合致していたが、今では国益に損失を与えるものだ。プロパガンダは急に方向転換できないので、このような結果になっている。(日本のマスコミの中でも例外的に北海道新聞は、地球が温暖化していないことを強く指摘する記事をしばしば載せている。これこそ本来の「ジャーナリズム」の役割なのだが、こうした例は少ない)
(Is `global cooling' the new scientific consensus?)
(All mainstream media networks leap on global warming fearmongering)
(Climate change: this is not science - it's mumbo jumbo)
(Warming Plateau?)
温暖化対策では、今月ワルシャワでCOP19会議が開かれた。それに際して中国は、BRICSや途上諸国を主導して、先進諸国に対し「温暖化対策の資金をもっと出せ」と要求している。中国は、自国の経済発展を阻害する「温暖化対策」の実施を拒否する一方、日本など先進国に巨額の金を出させる世界体制を作ろうとしている。先進国のプロパガンダ機関は、中国の国益に沿って動いてしまっている。
(China says rich nations should give more to offset climate change)
(失効に向かう地球温暖化対策)
米国のオバマ大統領はCOP19直前の11月1日、地球温暖化(気候変動)に備える動きを国家を挙げて強化する大統領令を発している。温暖化対策を真面目にやることは、米経済の成長を阻害するとともに、中国など途上国の利益を増し、米国の覇権を崩して世界の体制を多極化することにしかならないが、オバマ政権はそれを全力でやっている。
(Executive Order -- Preparing the United States for the Impacts of Climate Change)
(Obama's Climate Task Force Is a Treaty Trap)
米国が97年の京都議定書の体制を早く推進していたら、中国が台頭する前に、先進国が途上国からピンハネする「温暖化対策」の国際体制を確立できた。しかし米国は議会を筆頭に、京都議定書に猛反対して無力化したうえ、09年のCOP15で温暖化対策の主導権を中国に明け渡した。そして、温暖化対策で中国などにむしられる側になった今ごろになって、大統領令で温暖化対策を強化すると宣言している。日本が本気で中国と対峙するつもりなら、そんな米国に追随することをやめるべきだ。しかし実際のところ、日本の中国敵視は対米従属維持のための策であり、日本は対米従属を続けるほど弱くなり、中国に対する不利が増す。最後には米国が覇権を喪失して日本は対米従属できなくなり、中華圏の端の方で鎖国していた大昔の姿に戻ることになりかねない。
(地球温暖化の国際政治学)
世界経済の構造転換 田中宇の国際ニュース解説
http://www.tanakanews.com/131122china.htm
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