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何がレストランを虚偽表示に走らせたのか?厳しい経営事情と、人気「俺の」成功モデル
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131124-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 11月24日(日)6時47分配信
ホテルが運営するレストランにおける、メニュー虚偽表示の発覚が相次いでいる。その中に、リッツ・カールトン大阪と帝国ホテルという東西の横綱ともいえるトップホテルが含まれていたことは、ホテル業界を震撼させた。
国内ホテル界の象徴が、なぜこのような愚行に走ったのか?
●レストランは儲からない
一つは、単純に利益を出すためというのがある。というのも、飲食店はチェーン展開しない限り、大儲けできないという現実がある。「最高のサービスで美味しい食事を提供すればレストランは発展していく」側面もあるが、実際には「いかに家賃、人件費、食材費原価を抑え、食材の廃棄をなくすか」がキーになる。
このモデルで成功したのが、「ステーキけん」だ。あくまで筆者の感想ではあるが、決して「最高のサービスと美味しい食事」があるわけではない。その一方で、運営は能率化されている。多くの店舗は、ロードサイドという家賃の安い場所にあり、出店店舗は基本的に居抜き物件。内装費がかからないため、減価償却をすぐに終わらせられる。また、複雑なメニューが少ないため、人件費もかからず、かつ余った食材は翌日のランチのカレーなどに回せる。出店のイニシャル(初期費用)も最小限のため、はやらなくなれば即撤退し、新たな土地を探す。まさに、フランチャイズの強みが生かされている。
このようなレストラン・チェーンと相反するのが、ホテルのレストランである。
多くのホテルのレストランが、賞を取ったことのあるシェフを雇うことで格を付け、値段を上げている。逆に言えば、無名の経験の少ない料理人では経営が成り立たない。さらに、ソムリエや洗練されたサービスができるウェイターも必要になる。スタッフの教育に時間がかかるため、当然人件費が上がる。そして、食材も鮮度が命のメニューが多く、ロスが出やすい。ホテルのレストランのディナーは客単価1万2000円を超えるが、純利益は少ない。その証拠に、ホテル全体の純利益は宿泊部門が60%を占めている。
そこで近年、飲食部門ではFLコストという計算法を導入し、利益を上げようとしている。人件費と食材費・飲料費のトータルを、売上の55%に抑えようというものだ。しかし、人件費をこれ以上下げるのは難しい。そこで、冷凍食品などのメーカーの既製品がフォーカスされた。現在のレストランにおける冷凍食品の使われ方について、元レストラン従業員は次のように明かす。
「例えば、フレッシュマンゴーオレンジジュースなら、八百屋からマンゴーを購入するのが普通でした。しかし、今はカットされた冷凍マンゴーを持っている業者がいて、オレンジも粒入りの100%で良質のものがある。それこそ、オレンジの産地によって味も違う。帝国ホテルも、こういったオレンジジュースを使用していたのでしょう。この2つをミキサーで混ぜれば、フレッシュではないけども、フレッシュと変わらないマンゴーオレンジジュースができる」
ほかにも、生パスタに近い乾麺や、焼きたてのパンのような冷凍パンなどが豊富にあるという。
「多くの卸メーカーが食品展示会を行っていますが、そこに足を運べば、その食材のレベルの高さに驚きます。味はフレッシュと変わらないのに、フレッシュより日持ちが良いものが多く、値段も安い。そういった展示会などで、今回問題になった牛脂注入加工肉やバナメイエビなども出されている。味見をすれば、100%ビーフや芝海老とほぼ変わらないことがわかります。そして値段は安いため、『これは良い』ということで、こうした冷凍食品に移行したのでしょう」(同)
●利益を求め、失った信頼
今回のメニュー虚偽表示は、偽ろうという悪巧みよりも、単に“ズボラ”なだけだと指摘するホテル経営者もいる。
「飲食部門はズボラなんですよ。先日も、とあるチェーンのビジネスホテルが、レストランで利用する食材の発注リストを作成しました。要は『この食材は、ここで発注するように』というお達しです。業者によって値段は違うから、最安値にしようという試みです。しかし、昔のままの発注先を利用したり、発注を忘れて当日に別の業者から購入したりと、一向に食材費が下がらない。こうした変更が発生してもメニューはそのままなので、虚偽表示というよりも『まぁいいだろう』という感じなんです。料理人としては一流ですから、腐ったものを出したり、賞味期限切れに対しては敏感ですが、仕入れやメニュー表記などのマネジメントに関してはあまり気を使いません」
多くのホテルのレストランでメニュー虚偽表示が行われたのが、2008年前後から。皮肉にも、シェフたちは09年にスタートした「俺のフレンチ」シリーズなどを展開する俺の株式会社に流れ、一大ブームを巻き起こす。俺のは、FLコストを制限しなくても儲かる仕組みを経営側が熟考し、立食というスタイルを採用した。立食にすることで回転数を上げ、ホテルが抱えていた問題をクリアしたのだ。「今まで働いてきたレストランは食材費の締め付けが厳しかったが俺のにはそれがなく、やりがいを感じる」とシェフたちは明かす。
メニュー虚偽表示は、レストランの経営側が現場に対し単に数字だけを押し付けた結果、生まれた荒業といえる。ホテル経営陣やシェフが考えなければいけなかったのは、FLコスト至上主義ではなく、ホテルレストランの強みやお客様が求めていること。それをベースに、どのようなカイゼンができるかではないだろうか。
「重要な接待や特別な日には、ホテルのレストランに--」。信頼がつくり上げた需要が、フランチャイズには勝てないながらも、継続的に利益を上げさせていた。しかし、純利益を求めるあまりに、信頼までも失ってしまう結果となってしまった。
「ホテル&レストランジャーナル」編集部
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