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雇用と賃金と、景気
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52520412.html
2013年11月23日 在野のアナリスト
日本ではほとんど報じられませんが、米議会では大統領選前に発表された雇用統計について、操作された疑いありとして調査を始めています。雇用統計は二ヶ月前まで遡って修正されるので、一旦は数字を弄っても後で調整すれば済みます。政権が恣意的に数字を弄っている場合、雇用統計を金融緩和の条件とする、米FRBはどうするのか? そうでなくともバーナンキ議長でさえ『万能でない』と認めるのが、雇用統計です。これは世界的な傾向であり、見た目の雇用の数字によっては図れない、景気の長期停滞を示すものとして捉えられるようになっています。
英国ではゼロアワーという雇用形態が問題となっています。雇用契約はむすびますが、企業側が仕事がある、というときでしか働かない。当然、働かない月は仕事がゼロ、給料もゼロです。失業ではないので、雇用としてカウントされますが、所得がないので実質的には無職と同じです。それでもこの雇用契約をむすぶのは、キャリアアップを目指すというものと、この雇用形態を拒否してしまうと、次に職をさがしても断られる、という恐れからとされており、議会で問題になっています。
日本では非正規の拡大によって、低賃金労働を増やす代わりに、雇用を維持してきました。そして現在、特区により労働基準に反する雇用形態をみとめる、という方向を打ち出しています。企業は必要なときだけ雇用し、時間が余れば解雇できる。ゼロアワーはまだ雇用が残りますが、この特区では使い捨てになる恐れが強い。しかし政府は、世界的な傾向にのるためにも、そうした特区を政府からの指定により、特定地域に作り出そうとしているのが現状です。
そして米国では、賃金が一向に上がりません。これまでも1%以上のインフレを維持してきたので、実質的に給料は下がり続けてきた。それに合わすようにディスインフレ状況になり、今年は感謝祭後のクリスマス商戦が、昨年より短いことを気にして、すでに安売りを始めた小売が出てきた。しかも小売の8-11月期決算をみると、総じて赤字や市場予想に届かないものが多い。これは日本の小売もたどった道であり、所得の目減りとともに支出も減らすことで消費が鈍化する、という流れに、いよいよ欧米も入ってきた、ということを意味します。
さらにダウ、S&P500が最高値を更新し続けるなど、株価は堅調ですが、不動産は弱含んできた。投資家の層が拡大せず、春先から夏場までの、一過性のブームで終わってしまった感があります。これは1%の富裕層だけではダメで、サブプライムローンのときは、低賃金の者まで高額のローンを組め、それが投資家層の拡大を促した側面がありますが、今回は全く異なります。つまり米国では今後、一部でバブル的要素もありますが、消費鈍化の影響が強く現れ、景気は低迷する可能性をこれらの動きは示唆しているのでしょう。
低賃金労働による雇用維持、という方向性をいち早く打ち出してきた日本では、今その見直しが叫ばれています。しかし残念ながら、欧米で始まった低賃金労働の波は、日本の輸出に直撃してくるでしょう。欧米がデフレ傾向になれば、円安による価格引下げ効果も限定的です。そして雇用の数字だけをみてよくなったから景気が回復、と判断することも、また早計とされる時代がくるのでしょう。雇用と賃金とが密接にむすびついた物価と、その三つをみて判断しなければ、これからの世界の経済動向は読み解けない、ということになるのでしょうね。
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