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消費税が上がっても、2014年の景気は意外に良好?(撮影:尾形 文繁)
もう円高には戻らない みずほ総研チーフエコノミスト・高田創氏に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/24644
2013年11月22日 東洋経済オンライン編集部
2014年の日本はどうなるのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほ総合研究所、野村総合研究所の3大シンクタンクが、14年の注目テーマやトピックを分析していく6回シリーズの第3回目からは、みずほ総合研究所チーフエコノミスト・高田創氏のインタビュー。消費増税で来年度の景気の先行き懸念も指摘される中、高田氏は来年度上期については強気の姿勢だ。そのわけは……。(聞き手:東洋経済書籍編集部)
高田 創(たかだ はじめ)
みずほ総合研究所チーフエコノミスト。2011年から現職。テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』のレギュラーコメンテーターを務めるるなど、わかりやすい経済解説には定評。 「20XX 年 世界大恐慌の足音」(小社) 「国債暴落−日本は生き残れるのか」(中央公論新社)など著書多数。
――来年(2014年)は消費税が上がるということで、景気の中折れが心配されていますが、高田さんは強気の姿勢ですね?
ええ、私は基本慎重な姿勢なのですが、来年度(2014年度)上期については、強気です。と言いますのも、企業の本格的な投資が始まるのは、むしろ来年度以降とみているからなのです。設備投資も、雇用も、今年(13年)はまだ期中ですから、手控えていますが、14年4月からは新年度となり、そこでようやく具体化するわけです。
業界のトップクラスの企業が手始めに投資を行えば、それを横目に見ていた準大手クラスがそれに習い、ドミノ倒しのように、企業の投資に波及が生じると私は見ています。ですから、消費税率アップによる景気の一時的減速が生じても中折れは起こりづらい、そう思っています。
――2014年度(2015年3月期)、高田さんのシナリオでは日本経済と日本企業はどうなりますか?
今の話の続きですが、14年度上期は今期中にたまった投資圧力が、ようやく顕現化すると思います。円高の再来を想定するのではなく、円安の継続を前提に、成長を重視した経営計画を立てることになります。今はリスク管理がしっかりしているので、どこの企業もリストラは期中でも決めたら即座にできます。
しかし、一方で給料を増やしたり設備投資をしたりといった、コストを増やす決断は年度計画の中でしかできません。だから、来年度の経営計画でどれだけの成長戦略が描けるかが勝負の分かれ目です。
――来年度の2015年3月期ですか。とすると、14年の4月から始まる期の経営計画で、期初からダッシュをかけろと。
そうです。そのためには14年1月〜3月の準備が非常に重要になるし、この3カ月に効果的な準備をしようとしたら、「マインドの転換」はもう年内に済ませておかないと間に合いません。
■いまはまだ、「薪が湿った状態」
――躊躇していたら流れに乗り遅れるわけですね。
そうです。今はまだ、また円高が再来するんじゃないかとか、設備投資をやったとたんに需要が冷え込むんじゃないかというほうへ考えが向いてしまいますよね。タイムリーに設備投資をしておかなかったら後でチャンスを逃してしまうのでは、とは考えない。それって、「薪が湿っている」状態だと思うのですよ。湿っていると火がつきにくいでしょう?
でも、完全に乾いたら一気に燃え上がる。別の例を挙げると、たらいの水に氷を浮かべると、氷が完全に溶けるまでの間は、たらいの水の(氷と接している面の)温度は、零度のままでしょう?
でもすべて溶けた瞬間からどんどん(その部分の)水温が上がっていく。乾いてから、あるいは溶けてからアクションを起こしたんじゃ間に合わない。乾く前に、あるいは溶ける前に準備をしていなければだめなんです。
――マインドを変えるなら「今でしょ」ですね。
そうです。先行きへの不安感を理由に引きこもるのは、「草食系的ペシミズム」の典型的な症状ですよ。
■「円安」「株・不動産高」がマインドを変える
――薪が乾くことや氷が溶けることでマインドが変わるということだと思いますが、それらの手段は何ですか?
今で言うと、「円安」「株・不動産高」です。つまり円安が進み、マネーが行き渡るまでの、期待先行かもしれないけれども、株・不動産と価格水準が高まることが大事だと思います。図をご覧下さい。
日本企業「生き残り戦略」の概念図
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これまでは円高でしかも、ずっと資産デフレという状況が続いていたので、そういった状況下では企業はバランスシート(貸借対照表)を圧縮しました。
バランスシートを両立てで圧縮するということは資産を持たない、債務を圧縮するという行動に出たわけです。
一方、P/L(損益計算書)では、円高の環境下でも生き残るために、「値上げをしてはいけない」「経費を圧縮する」(結果として)「利益がマージンが圧縮された」という行動様式が、この20年間の中で身についてしまった。こういう状況が続く限り、賃金は増えないし、デフレになる、債務を圧縮するから(銀行等による)信用活動も成果が上がらない。
ということは、最初に戻りますが、企業行動のマインドが変わらないと、先に挙げた湿った薪も乾かないということでもあり、ではそれを乾かす手段が「もう円高はないよと円安基調が定着することと、(株・不動産といった)資産価格も上がるよ」ということ、しかもそういった状況が、長期政権の下で「長く続く」という期待感ということになります。それらによって「(円高の心配をしなくても)大丈夫」だと企業が安心して、失っていた自信を取り戻すことが重要だと思います。
――薪が乾くのが2015年3月期(来年度)ということですね。
企業が自信を取り戻し、一方で政策のほうも湿った薪が乾くことを支援するようになってくると、新しい行動に移れると思います。繰り返しになりますが、『日本経済の明日を読む2014』でも触れているように、13年は「失われた20年」からの脱却に大きく踏み出した年ではありますが、本格的に変わるのは14年度となります。
■もう円高には戻らない
――再び円高に逆戻りしませんか?
ええ、間違いないです。そもそも円高はアメリカに原因がありました。2007年以降、アメリカが金融危機に陥った。つまり重篤な病気にかかってしまった。その治癒のために金融緩和が必要だった。金融緩和にはドル安誘導が必要不可欠だったから、アメリカはドル安誘導に邁進しました。アメリカだけでなく欧州も病み、欧米の先進各国がオリンピックさながらに、自国通貨安誘導を競い合いました。
――そういう中で日本は自国通貨安誘導競争、金融緩和オリンピックに負けていたと。
そうです。たとえば、コンサートホールで前の席の人が立ち上がってしまったら、自分も立たないとステージは見えませんよね。この6年間、日本は周囲が総立ちの中で、お行儀よく着席していたようなものだったのです。
――円安に転じたということは、その自国通貨安誘導競争が終わったということでしょうか。
そうです。欧州はまだ入院・療養中ですが、アメリカが無事退院してくれた効果だと思います。
――円安はアベノミクス効果によるものではない?
本質的にはアメリカのバランスシート調整が終わったことが最大の原因です。結局のところ、為替はアメリカで決まってしまいますからね。
――なるほど。じゃ、安倍首相は。たまたまアメリカが“退院”したタイミングで首相になった、ラッキーな人ということですか。
そういう面はありますね。でも、アメリカがドル安誘導の手を緩めた、そのタイミングでしっかり異次元の金融緩和をやった。逆風から追い風に変わった、まさに潮目の転換点をうまくとらえ、市場のマインド転換を後押しする施策を実施し、また円高に戻るのではないかというムードを一掃した効果は大きいと思います。
次回(11月25日掲載予定)に続く。次回は、ドル円相場など2014年の為替水準を、具体的にどの程度に考えるべきか。投資をするとしたら、どういう国などがいいのかなどについて、高田さんが予測します。
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