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内国歳入庁の監査に関して、抗議集会を開いたティーパーティ(今年6月)。一部の保守系団体が不当に厳しく審査され、一時はオバマ大統領の関与まで取り沙汰された(AP/アフロ)
本当にドルは買い? 米国は大丈夫?リーマンショックの次は、年明けお茶会ショック?
http://toyokeizai.net/articles/-/23986
2013年11月15日 草食投資隊 :渋澤健、中野晴啓、藤野英人 東洋経済
米国では、会計年度暫定予算と債務上限引き上げ法案が可決せず、政府機能が一部停止しました。その後、なんとか折り合いをつけたものの、年明け後、ほどなくすれば、またまた債務上限引き上げをめぐる攻防が行われます。米国って、本当に大丈夫?
中野 今回の一連の出来事を見ると、米国経済にとって財政問題は大きなネックになりますね。
藤野 相変わらずお茶会(ティーパーティ)の連中が大活躍なんだけど、共和党支持者のうち半分はお茶会とも言われているだけに、この勢力を無視するわけにはいかない。結果、暫定予算の成立や債務上限引き上げ法案の可決をめぐる議論で彼らの声が大きくなり、なかなか可決せず、今回のように政府機能が一部停止という事態に追い込まれてしまう。やっかいですね。
■お茶会って言うと、かわいいが……
中野 お茶会って言うと、かわいいですね。
渋澤 ティーパーティというのは、言うなれば米国の原点というか、米国原理主義者みたいなものですね。米国の人たちって、自分が属する行政単位は州がベースで、連邦政府に対する帰属意識が希薄だから、連邦政府から何かモノを言われたり、必要以上の税金を課せられたりするのを何よりも嫌います。ところがオバマ大統領は、「オバマケア」という国民皆保険制度を定着させようとしています。
渋澤 つまり大きな政府を志向しているわけだけど、共和党は伝統的に小さい政府が好きです。今のティーパーティは、オバマ大統領が大きな政府を志向していると声を上げ、反対の意を表明している人たちの中でも、特に先鋭化した人たちなのです。
■国の組織の前に、まず地方あり
藤野 地方自治に対する意識が非常に強いからこそ、出てきた人たちですね。その点はフランスも同じですが、日本人にはなかなか理解できない。フランスはフランス革命、米国は独立戦争があって、絶対君主を倒した。日本の場合は明治維新があったけれども、戦後の民主主義は自分たちの戦いで勝ち取ったものではない。そこに大きな違いがあると思います。そこを押さえておかないと、なぜティーパーティがオバマ大統領の政策に強硬に反対するのか理解できません。
渋澤 まあ、とはいえ政府機能の一部がシャットダウンしても、大きな混乱もなく半月もの期間をやり過ごすことができたのは、それだけ州や市という行政単位がうまく機能している証拠でしょう。その意味でも米国は、連邦政府の前に州、市があるということですね。
中野 これが日本だったら、あっという間に国の機能が麻痺してしまうでしょうね。日本はなんだかんだ言っても、中央集権型の国ですから。
渋澤 とはいえ、米国の国民感情としては、「いいかげんにしろ!」という感じではあるけどね。
中野 確かに、いくら州単位、市単位は機能しているといっても、連邦政府の機能麻痺が長引けば、経済的にもマイナス面が出てきます。雇用も冷え込むでしょうし、マーケットの動きに大きな影響を及ぼす経済指標の公表もスキップされました。私はよくあれで大きな混乱も起こらずに収束したと思います。
渋澤 今年の3月にも債務上限の引き上げをめぐって、ギリギリの駆け引きが行われましたね。で、結果的には何も起こらず乗り切った。今回も10月17日の期日を前にして、債務上限引き上げ法案が何とか可決した。こういうことが繰り返されると、いつかオオカミ少年になるのではないかと心配になります。
中野 問題が深刻化しても、何とか乗り切れるんじゃないかと皆が油断してしまうわけですね。
渋澤 そう。確かに株価は一時的に下げたけれども、混乱状態というほどのものではなかったし、短期金利もそれほど上がらなかった。もし債務上限引き上げ法案が可決しなければ、米国はデフォルトになるわけで、本来なら金利は急騰、株価は急落してもおかしくない。そうならなかったのは、マーケットが今の米国経済をプラスに見ているからでしょう。それだけに、本当に崖から転げ落ちたときには、リーマンショック以上の大混乱に陥りますね。
■「QE4ever」=金融緩和よ、永遠に?
中野 バーナンキFRB議長が5月にQE(量的緩和)の縮小を示唆したじゃないですか。あのとき、僕はバーナンキ議長が単なるバラマキ屋にはなりたくないという意思を明確に表明したということで、それはそれでいいことだと思ったのですが、今回、次期FRB議長にイエレン氏が内定したことで、マーケットは再びモルヒネ的な金融緩和の延長を織り込み始めています。この織り込みが長引くほど、暴落の度合いが大きくなるおそれがあるでしょうね。
藤野 まさにQE4ever(Forever)。金融緩和よ、永遠に。
中野 でも、このような状態がいつまでも続くわけがない。QEにしても、財政赤字の拡大にしても、どこかできちっと終止符を打つ必要があります。
渋澤 来年11月に米国中間選挙があります。それまでには、今回のような混乱を招かないように、落としどころを見つけようとしているとは思うのが常識的な考えだと思う。今や、共和党に対する風当たりが強くなっていて、このままだと支持率を大きく落としてしまうおそれがあります。そうなったら、中間選挙でまた敗北を喫してしまう。だから共和党としても、ティーパーティについては頭が痛いはずです。
中野 でも、正直なところティーパーティって何なの? この数年で急に存在感が高まってきたように思うのですが、出自がよくわからない。
渋澤 もともと米国民の意識の中には、ティーパーティ的なものがあるのだと思います。社会主義的な政策は悪だと思っている人が多いですね。だから、オバマケアという国民皆保険制度が浮上し、大きな政府を目指す動きが出てきたのと同時に、ティーパーティの活動も活発化したのです。あとは、これまた微妙な問題になるけど、人種問題も絡んでいます。
中野 ティーパーティは白人が中心ですよね。
渋澤 一般的にはそうですね。米国は移民国家として若い人口の増加によって繁栄してきたけれども、現在では白人がむしろマイノリティになりつつあります。米国の礎を築いてきた白人には、地方自治に対する意識が非常に強いと言えるかもしれません。米国初の黒人大統領であるオバマ大統領が掲げる社会主義的政策によって、自分たちの領域が侵されるという危機感が、ティーパーティ運動に結び付いたという側面も否定できません。
藤野 米国国内では人種のグローバル化が進んでいますからね。黒人だけでなく、中国人やインド人の非常に優秀な人たちが一旗揚げようと、米国を目指しています。
中野 でも、それ自体は悪いことではありませんよ。
渋澤 そう。新陳代謝が高い国は確実に強くなります。
中野 オバマ大統領とティーパーティの確執はいつまで続くのでしょうか。オバマ大統領がオバマケアをあきらめるわけがない。でも、ティーパーティもなかなか振り上げたこぶしを下ろすことができない。このままだと来年の2月に債務上限の引き上げをめぐって、また同じことを繰り返すことになります。
渋澤 でも、この一連のゴタゴタって、米国に限った話ではないと思います。手厚い福祉で財政赤字が拡大。景気対策は金融政策頼みでジャブジャブの金融緩和。これ、日本も同じですし、ほかの先進国にも当てはまります。
藤野 いつかはデフォルト。果たして今の日本が、その状況を想定しているのかどうか。でも、国債が紙切れになるという経験を、終戦直後の日本は実際に経験しています。
中野 戦後60余年の間に、日本人は洗脳されてしまったのですよ。デフォルトは夢物語であると。
渋澤 ほら、日本人は水に流すから。
中野 でも、実際に米国がデフォルトなんてことになったら、どうなるんでしょうね。
渋澤 それこそ米国の短期金利は急上昇するでしょうね。あとはドル売り。でも、こうなったら、この時点で、確実に「QE4ever」の世界になりますね。
中野 瞬間的にリーマンショックのような状況に陥ることも考えられますね。
渋澤 いや〜、それよりももっと大きなショックが起こるはずです。米国の短期金利というのは、世界で最も安全な資産の金利でしょう。それが急上昇するということは、世界のリスクフリーレートの基準値が崩壊するという意味です。そのインパクトは半端ではない。
■米国経済は、復活している
藤野 だから、お互いの意地の突っ張り合いで、米国がデフォルトに追い込まれるような事態にはならないと思いますよ。それに米国経済が持っている付加価値の高さから考えても、クラッシュはあくまでも一時的なものであり、このまま米国経済が沈没するようなことにはならないと思います。
中野 確かに、米国経済は復活に向けて徐々に力強さを増しているのは事実です。それも、かつてのようにインチキな金融立国を目指すのではなく、モノづくり立国を目指そうとしている。きっとリーマンショックでマインドがリセットされたのでしょう。そこにシェール革命が出てきて、米国の経済構造が大きく変わろうとしているのが、現状だと思います。
藤野 やはり米国経済はダイナミックですよね。実際、米国の中古住宅市場や労働市場は、着実に回復へと向かっています。こうした米国経済のダイナミズムを支える要素は3つあります。ひとつはたゆまぬイノベーションです。今、米国ではビッグデータが注目されていて、それに関連する企業にどんどん人が集まっています。その中には、かつてグーグルやアップルで働いていた人も大勢います。
2つめの要素は、こうした優れた人々を輩出できる、優れた教育システムを持っているということです。そして3つめに、優れた人材がいる将来が有望な企業に投資するエンジェルが大勢いるということです。エンジェルとは、自分自身が起業で成功を納めた人のことで、自分の資産の一部をベンチャー企業に投資するのと同時に、若い経営者に経営の指南もします。こうした要素が重なり合って、今の米国の強さが成り立っています。このトライアングルが機能し続ける限り、米国の時代は続くのではないでしょうか。
渋澤 ひとつ懸念材料を挙げると、米国の政治が内向きになっているのではないかということです。今回のシャットダウンで、オバマ大統領は急遽、アジア歴訪を中止したわけだけれども、これなどはまさに内向きになっている証拠になりました。米国が世界のリーダーである時代は終わったということになると、その後のパワーバランスのシナリオを、描きづらいです。
中野 10年くらいのスパンで見れば、米国経済は徐々にバランスの取れた、いい状態になっていくのだと思います。ただ、米国が内向きになるのは怖いですね。だって、内政にばかり目を向けているうちに、世界のパワーバランスが大きく崩れる可能性があるように思えるからです。たとえば、米国がシェール革命によって天然ガス、原油を大量に採掘できるとなれば、わざわざ高い軍事費を使ってホルムズ海峡を守る必要がない、ということになるでしょう。それは結局、日本にとっての大問題です。
渋澤 確かに、米国がホルムズ海峡を守らなくなったら、日本のタンカーは自衛しなければならなくなります。コストだけでなく、自衛隊の艦船をホルムズ海峡に展開できるのかどうかという問題もある。米国が内向きになって得な話は、日本にとってまったくないと断言してもいいです。だからこそ日本は、米国との関係をつねに良好にしておく必要があるし、米国もお茶会問題は早急に解決する方向に持っていってほしいですね。
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