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世界的な投機家であるG.ソロス氏。今度はどこで動くのか(ロイター/アフロ)
金の底値買いは、ソロスに学べ!【新連載】金価格はもう一段下落するのか?
http://toyokeizai.net/articles/-/24028
2013年11月15日 土肥 章 :第一商品 社長 東洋経済
「先進国の通貨価値は下落する。資産防衛のためには、金を買え」。リーマンショック後、大きく買われた金。だが、昨年からは下落基調に転じ、今のところ大きく反転する気配はない。今後の金価格はどうなるのか。円安ドル高時代の中で、金をどう考えればいいのか。今回から、金取引40年のプロで貴金属アナリストでもある、第一商品・土肥章社長のコラムをお届けする。
■米国の金融政策と政治に振り回される「金」
米国発の「二大騒乱」のうねりの中で、今年の金相場は大きな売り圧力に見舞われた。ひとつはバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長による「量的緩和縮小」の議会発言だ。「早ければ9月にも段階的縮小(Tapering)開始の可能性」をめぐり、米国株式市場、債券市場は右往左往した。世界中の金融市場、とりわけこれまで大量の投機資金が流入していた新興国の株式市場は大きな売り圧力に見舞われ、結局、金(Gold)市場も多大な影響を受けた。金価格は、年初に比べ1トロイオンス(約31g)当たり500ドルも暴落した。
2つ目は、当初10月17日がタイムリミットだった約16兆7000億ドルにも上る米国の債務上限問題だ。市場予測とは裏腹に、共和党保守派が強硬な態度を誇示したため、解決に予想以上の時間を要し、投機筋がドル資産の投げ売りに走った。9月半ばに一時、史上最高値を記録したNY株式相場は、3週間で約1000ドルも下落した。
結局、来年2月までの国債発行が暫定法案で可決され、一時的にデフォルトは回避された。だが2週間あまり続いた米政府機関の一部閉鎖で、公表指標を売買の判断とする商品市場のトレーダーは材料難に直面した。これは積極的なポジションメイクの大きな妨げとなり、商品市場の代表格である金相場も下落した。現在のところ、ドル建て金相場は1300ドルを挟んで上下50ドル幅で推移。国内金相場も4000円を下限にしているものの、上値も重く、狭い値幅での動きを続けている。
■金価格の最も重要な指標とは?
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ここで、あらためて金について考えてみよう。金の価値とは、その稀少性(世界中の金すべてをかき集めても、競泳用の50メートル用プール約3個半分)と、人類の歴史において深く刻み込まれた「DNA」(金へのあこがれ)に起因している。
万国共通の価値を持つことから、米ドルに次ぐ第2の基軸通貨であると信認され、先進各国はおよそ40年前まで事実上の金本位制度を採用していたほどだ。
金は通貨の顔を持つ一方、電化製品の接合用、歯科用、またジュエリー(宝飾品)として使用されており、原材料=商品としての価値も重要なのだ。では、商品の顔としての金価格はどう決まるのか。一般的に商品価格は、需要と供給のバランスによって決定される。欲しい、買いたいという需要が多ければ価格は上がり、売りたいという意欲が強いと下がるわけだ。
ここで、商品として金を作り、販売する生産・販売コストが市場価格決定に大きく関係する。たとえば、今も南アフリカなどの金鉱山では地下3000〜4000メートルから金鉱石を採掘している、その後、粉砕、精錬、溶解という工程を経て数カ月かけて皆さんが目にする金のバー(延べ棒)になる。
そこで生産コストが重要になってくるわけだが、実は生産コストは、過去10年間で原油などのエネルギー代価や労働賃金上昇を受け、約4倍に高騰している。さらに最近では、従来の総コストに操業設備の減価償却や資本維持コストなどを加えた「オール・イン・コスト」が試算されている。
英国の貴金属市場の調査会社であるトムソン・ロイター・ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)社によれば、自由圏諸国における平均は、昨年の1211ドルから、今年上半期では1250ドルへと上昇した。
金生産国の1位中国と4位のロシアなど社会主義の国々を除き、大半の金鉱山は民間企業により操業されている。当然ながら利益獲得が最大目標であり、採算を度外視して操業することはない。それゆえ、今後の金相場を占う点で、この生産コストが重要となってくる。
さて、ここで参考にしたいのが、世界的な投機家であるジョージ・ソロス氏の相場観だ。最近、ソロス氏は日系女性と41歳の「年の差婚」でも話題をまいた。
■いつまでも輝く? ソロス氏の次の一手に注目
同氏は1993年3月に、金相場が当時、世界第一の生産を誇っていた南アフリカの生産コスト水準である1トロイオンス当たり326ドルまで下落したのを見て、「金相場は底値」との判断を下した。ここから金相場は間違いなく上昇し、価格上昇による業績向上から鉱山会社の株価も上昇すると予測、米国の大手金鉱山会社・ニューモント社の株を買い占めた。
今でこそ、金は金ETF(上場投資信託)を通じて比較的簡単に購入できるが、当時、ヘッジファンドは現物地金に一定額以上の投資はできず、もっぱら株式での運用に限られていた。ソロス氏の思惑どおり、金相場はその数カ月後に400ドルに上昇、株価も思惑どおり上昇したため、ソロス氏は莫大な利益を上げたのである。
その後のソロス氏は、2004年11月にNY証券市場にETFとしてGoldが正式に上場されたことを利用し、金ETFでの運用を開始したと推定される。特に生産コストが急騰し始めた08年あたりからは一段と積極的に売買したようだ。
2010年の初頭にかけて、金相場が1トロイオンス1000ドル台に高騰したのを見て「究極の資産バブルはGold」と言及したが、その時点でソロスファンドはすでに16トンの金を保有していた。その後、金相場は1500ドルに向け上昇の一途をたどったのだが、ソロス氏は1年3カ月の間にわずか130キログラムまでETF保有高を減少させ、ここでも多額の運用益を得ることとなった。
同氏の金投資はこれで終わらず、QE3(量的緩和第3弾)実施とともに金相場が1トロイオンス1800ドルに向けて上昇し始めると、再び金投資に復帰。2012年9月に時点でETF保有高を4.11トンまで復活させたが、予想に反して金相場は上昇しなかった。世界的な景気減速懸念が蔓延する中で金相場は反落したため、昨年末までにわずか1.87トンに削減。さらに今年第1四半期末までには全量を処分して撤退した。
直近の金投資は成功裏には終わらなかったのだろうが、ソロス氏のこれまでの成功例が、なお、ファンドビジネスの世界では「栄光の実例」として語り継がれていることは事実だ。
■生産コストを下回るようなら「買い」
金相場が下落した場合、低品位の金鉱床はコスト面から生産中止を余儀なくされる。すると、閉山→生産縮小→供給削減というプロセスを招く。一方で相場の下落は新たな需要を鼓舞し、買い手が市場にあふれる。すると、前述のように需要と供給のバランスに歪みが生じ、金相場は上昇の波に乗ることとなる。ここ4年ほど前からは新興国を中心とする公的金保有(国が外貨準備の一環として金を購入)が、米ドルの信認低下に伴って増大しており、下落局面では活発な動きを見せている。
今後の金相場はどうなるだろうか。米国の金融緩和縮小の開始時期、来年2月の債務上限タイムリミット、欧州の債務問題など、不透明な問題を抱えており、世界の金融市場は一荒れも、二荒れもありそうだ。その時点では、決まって金相場はドル建て、円建て両面で少なからず影響を受けることとなる。だが、前出のとおり、安値について筆者は生産コストが重要な指標になると信じている。
相場ゆえに、時の勢い(旺盛な売り圧力)により瞬間的には生産コストを割り込むことがあっても、1トロイオンス1000ドル割れまで予想する米国大手証券会社の予測ほど、悲観的ではない。行きすぎた金相場の下げ局面では、年老いたとは言え、必ずソロス氏の触手が動くはずだ。彼の運用術にあこがれ、そして学んだファンド・マネジャーたちも多く金融市場に存在している。その点からも当分の間、金相場は1トロイオンス1200〜1250ドルが底値となろう。
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