01. 2013年11月15日 05:14:02
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【第181回】 2013年11月15日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] 中国版・社会起業家の熱気に 中国公民の新しいうねりを見た 今週、とんぼ返りで上海を訪問し、第2回社区企業と投資サミットと呼ばれるシンポジウムに出席して講演をした。「社区企業」というと、日本人どころかおそらくほとんどの在日中国人もわからない新しい固有名詞だろう。 ご存じのように、バングラデシュには、グラミン銀行(Grameen Bank)という銀行がある。同銀行は農村部で、マイクロクレジットと呼ばれる貧困層を対象にし、比較的低金利の無担保融資を行っている。2006年、同銀行の創立者でもあるムハマド・ユヌスとともに、ノーベル平和賞を受賞した。 社会問題に取り組む「社区企業」 グラミン銀行のように、ある特定の社会問題を解決するためにビジネス活動を行う企業は社区企業と呼ばれるそうだ。私はコミュニティ・カンパニーと訳したい。NPO、NGO、慈善団体などで特定の社会問題の解決に取り組むケースもあるが、その必要とする経費や予算は寄付に依存しており、持続可能という視点から見ると、心細いところがある。自らのビジネス活動を通して、その利益を活用する形で特定の社会問題を解決しようとして生まれてきたのは社区企業だ。普通の企業との違いはもう一つある。つまり社区(コミュニティ)に根を下ろして、ビジネス活動を展開させることだ。名前の由来もそこから来ている。 事前の案内ではシンポジウムの来場者は200名以上としていた。実際、上海財経大学のホテルを利用した会場に入ると、20代後半か30代前半の若い人に占領されたような感じがした。しかし、その時、私はまだ、大学生がかなり動員されたんだ、と思い込んでいた。 初日午前の最初のテーマに組まれた私の講演は、山梨県清里にある萌木の村を実例にして、地域経済の活性化と「社区企業」型企業の役割を説明した。毎年10月最後の土日を利用して、地方の個性的な店を集めて萌木の村で行われている「私のカントリーフェスタin清里」もついでに紹介した。講演の最後に、「来年ぜひ、視察団を組んで、萌木の村と『私のカントリーフェスタin清里』を視察に来てください。私でよろしければ、喜んで現地までご案内します」。そこで大きな拍手が沸き上がった。のちに、司会者もこの拍手現象を取り上げ、中国市場がどれほど日本の製品を必要としているのかを強調した。 社区企業経営者の問題意識は高い しかし、ここまでの進行に対しては、私は感動こそしたが、感心、感激までは行かなかった。私が本当に驚きを覚えたのは、質疑応答が始まってからだ。 日本国内のシンポジウム、フォーラムや講演会などの会議では、質疑応答の時間になっても、手を挙げて質問を出す人がほとんどいないか、あっても1、2問で終わってしまう。 だが、中国の場合は違う。みんなが争うかのように手を挙げて質問を出す。しかも自己アピールの内容も上手に質問に織り交ぜている。私の驚きはそこから始まった。まず北京や河北省、山東省など遠いところからもわざわざシンポジウムに駆けつけた参加者が大勢いたことに驚きを覚えた。次に、動員された大学生とばかり思い込んでいた人たちは、実は若いながらすでに企業の重役か創業者だということが分かった。 最後にその問題意識の高さに感心した。たとえば、自閉症の子どもを助けている社区企業もあれば、犯罪者の子どもをのべ数千人も収容してコミュニティを作り、ビジネス活動を通して維持しているところもあることを知った。 確かに数々の社会問題は政府がもっとその解決に力を入れるべきなのだが、待っていてもしょうがないから、先に民間レベルで行動を起こそうと人々が動き出した。私が担当するセッションが終わった時、名刺交換の怒涛に巻き込まれた。そこからさらにいろいろと知ることができた。紙芝居などの伝統芸能の継承と発展に力を入れようとする社区企業や、漢字を通した子どもの教育を進めようと動き出した団体など、さまざまな分野の問題に取り組む企業や団体の存在を知ることができた。 多くの一流企業の出身者も参画 そこでもう一つの驚きを覚えた。新しい事業として社区企業の経営にかかわる人々は、大学を出て熱い若き血で理想に疾走する若者だけではなく、一流の多国籍企業で高級管理職を何年も務めた職歴をもつ人も結構いる。金銭や名声、地位のためではなく、この問題の多い社会を何とか自分の手で、多くの力を結集して変えたい。こういった声に直に接した私は、中国の公民社会がその雛型を見せ始めたという実感をもった。 タイミング的には、北京でちょうど向こう10年間の経済改革の方針を示す中国共産党の第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が開催中だった。だが、食事の時間も含めて誰もが三中全会のことにあまり触れず、その会議の内容を議論しようともしなかった。方針、路線など高尚なことを語るよりも、市民の力で、やれるところまでのことを先にやろうとする意志や傾向が、シンポジウムの会場内では容易に確認できた。口先のことより、足元の行動がより重要だというのは、おそらく会場にいた人々の共通認識だろうと思った。 講師として講演会に出ることは私にとっては全然珍しいことではないが、自分の出た講演会で深い感動を覚えたのは、むしろ久しぶりのことである。大げさかもしれないが、なんだか中国の公民社会の胎動に肌で接した思いがして、その感動と感激に溢れたシンポジウムだった。
【第217回】 2013年11月15日 週刊ダイヤモンド編集部 バレたらクビ!現役サムスン社員・覆面座談会 「週刊ダイヤモンド」11月16日号特集 【サムスン 日本を追いつめた“二番手商法”の限界】拡大版
社内事情を、マスコミをはじめ外部に漏らしたらクビ──。厳しい情報管理で知られるサムスンだが、韓国で勤務する現役の日本人サムスン社員が、あえて覆面座談会に出席してくれた。知られざる“サムスンマン”の実態とは? 「週刊ダイヤモンド」11月16日号特集 【サムスン 日本を追いつめた“二番手商法”の限界】より、本誌では盛り込めなかった話も含め、拡充版をお届けする。 Aさん 最初に確認ですが、これって名前も所属も出ませんよね? 実は最近、本社から「ダイヤモンドの記者に会ったらクビだ」と、わざわざ釘を差されたんですよ。 Bさん 私は日経(日本経済新聞)もあかんって言われました。せやから、イニシャルもなしで頼みます。 ――わかりました。しかし、うわさ通り社外への情報流出には厳しいですね。 Cさん そりゃあ、社員のことも信じてへんからね。“地獄の門”は見た? 受付の横にある、空港のセキュリティと同じようなあのゲート。「行きはよいよい帰りは怖い」で、入るときは簡単やけど、出るときは金属探知機を通らんといかん。何か持ち出そうとしとるのが見つかったら、えらいことになる。 Dさん 会社に入る前に専用のシール(右写真)を配られて、それで携帯電話のカメラをふさぐんです。SIMカードにも貼ります。剥がすとわかるようになっていて、ゲートの検査でそれが判明すると没収ですね。シールを貼るのが嫌な人は専用のアプリをダウンロードします。そうすると、自動的に社内では携帯電話のカメラが起動しなくなる。
――紙の持ち出しも難しいですか。 Aさん 不可能ですね。コピー用紙に金属チップが埋め込まれていて、それがゲートで引っかかります。そのチップだけ紙からくり抜けば持ち出せるのかもしれないけど、怖くてチャレンジできませんね。 Bさん 印刷すると、背景にバーっとサムスンのロゴと、社員番号が自動で入る。仮に持ち出せたとしても、それが外で出回ったら誰がやったかすぐにバレて一発アウト。 ――サムスンへの転職と言えば、年収の話もよく話題になります。 Cさん みんな1億以上もろうとるみたいな話になってるやろ? あんなん、どこかの役員クラスを引き抜いたとか、超有名な特許を持っとる研究者とか、ごく一部の話やで。わしらみたいな社員とか普通の顧問では、絶対にありえへん。 Bさん 年俸で言うたら、大体の日本人は2000万円より下というイメージやないですか。せやけど、業績がええとインセンティブが出るから、それを合わせるともっと行きますね。日本にいたときの2倍くらいいうイメージかな。 Dさん 外国人にはマンションが提供されますね。職場近くのきれいな3DKルームはありがたいですけど、男1人では広くて持て余します。 Bさん 私んとこは、場所は最高なんやけど築30年くらいで古いんですよ。どんなマンションに住めるかとか、日本に帰る費用を年に何回サムスンが負担するかとか、そういう条件は人によって全然違うから、お互いに話さないよう会社から口止めされてますわ。 ――日本人は3年で知識やノウハウを搾り取られてポイ捨て、なんてうわさもありますが……。 Aさん 契約とか立場にもよりますけど、少なくとも30〜40代の若い人には当てはまらないですね。そこまでひどい会社ではないですよ(笑)。50代以上の人は3年間以下の顧問契約が普通ですけど。 Dさん 僕の職場では、サムスンの元日本人顧問の記事が配られました。サムスンに長くいれば、その後のキャリアにもつながるから頑張れって意味だったみたいです。環境としても働きやすい会社だと思います。 ――かつては先行している技術を教える“先生”としてサムスンに渡った日本人ですが、サムスンが世界ナンバーワンの家電メーカーとなった今、求められる役割に変化を感じますか? Aさん それは感じます。テレビや半導体、スマートフォンなど、多くの分野でサムスンはもう世界一になりました。だから、そういう分野では“先生”としてのニーズはほとんどないです。 Dさん そういう部署では、ある意味“飼い殺し”になっている日本人もいます。技術者が最も生きがいを感じる、新しい技術への挑戦をさせてもらえず、コストカットのみが上司から与えられる使命なんて人もいます。 これは、プラズマテレビみたいに成長の見込みがなくなった事業も同様です。そういう部署では、だんだんと日本人が周りから消えていったと聞きます。サムスンが日本人を必要としなくなっていき、日本人技術者としてもサムスンが働きがいのある職場ではなくなっていったということですね。 Bさん 最近はサムスンからヘッドハントされるんやなくて、自分でサムスンに入社試験を受けに来る日本人も多いです。結構落ちとるみたいですけど。 Dさん 水原(スウォン)の工場のつくりが、パナソニックの門真工場(大阪府)と瓜二つというのは有名な話で、昔は工場の建て方から経営哲学までいろんなことを学んでいたんですが、時代は変わりましたね。 徹底したトップダウン 上司命令は絶対の軍隊組織 ――先ほど、働きやすい環境だというお話もありましたが、やっぱり文化や言葉の違いなどがあります。異国の地で働くのは大変じゃないですか。 Cさん 社風がまったくちゃうね。サムスンは軍隊。トップダウンが日本のようなハンパなもんやない。上司がこうやって言うたら、一斉にそっちへ向かう。 Aさん 軍隊というのは、まったく同感です。サムスンって末端の社員レベルでは決断力もないし、リスクテイクもあまりしないですよ。そこは日本企業とそれほど変わらないと思います。 それでも、サムスンが「決断が早い」と巷で言われるのは、上が決めた途端に一斉に下が動き出すからです。上司の命令は絶対です。 Dさん 韓国人社員の出世意欲がハンパじゃないですね。上司に気に入られるために、中間管理職をすっ飛ばして、その上に報告をするなんていうのは日常茶飯事です。あと、課長クラスになると急に偉そうになる人が多いです。 Cさん 「おれが、おれが」ってなる韓国人は多いな。部署内でよう食事会やるんやけど、それもチームプレイを養うためやね。そのために会社からカネも出る。 Aさん 確かに課長クラスに昇進して変わる人っています。これはサムスン社員に課せられた成果主義の影響が大きいですよね。上に行けばいくほど、自分に責任があるから成功、失敗をすごく気にし出します。失敗の烙印を押されたら、実質クビになりかねない。だから、それはある意味、仕方のないことだと思います。サムスンのいいところであり、ダメなところでもある。 Dさん 社内共通語が韓国語なのがつらいですね。週3〜4回、会社のお金で韓国語の学校に通っていますけど、仕事で使えるレベルになるのはいつになるやら……。 よくメディアに出ている元サムスンの人たちは、役員待遇で来た人が多いから、通訳付きなんですよね。そりゃ活躍できますよ。でも、大部分の日本人にとって言葉の壁は高くて、思うように仕事ができなくて悩んでいます。 Cさん それは甘えやで。郷に入っては郷に従えや。 Aさん でも、最初は大変ですよ。私も来たばかりのころは英語で話していましたけど、うまくコミュニケーションが取れない。最近の新入社員はみんなTOEIC900点以上とかいわれますけど、30代後半以上の社員は全然英語なんて得意じゃなくて。やっぱりサムスンで働くには韓国語を覚えるしかないですね。 Bさん 私は行きつけのバーの女の子たちが韓国語の先生です(笑)。最初は言うとることがようわからんかったですけど、やっぱり女の子と話したい思うと上達も速いですわ。 Dさん 僕も韓国語の先生がすごい美人なんで、勉強に熱が入りますね(笑)。 ――韓国でサムスンマンは女性にモテるそうですね。 Cさん こっちの女の子に聞いたら、付き合いたい人ナンバーワンがサムスンマンって子、やっぱり多いな。 Aさん え、でも、役員クラスは桁違いですけど、下の人間はそんなに給料よくないじゃないですか。 Cさん それでも将来性に賭けてるんやて(笑)。 Aさん こっちに来て“彼女”をつくってる日本人もいますよね。10歳以上も下のかわいい女の子を捕まえて……。やっぱり、こっちがサムスンマンってわかると女性の食いつきが変わるみたいですよ(笑)。 ――楽しい感じになってきましたが、時には日本が恋しくなりませんか。 Cさん わしはこっちの生活楽しいで。わしの経験やと、なんかソニーのやつはサムスンと合わへんのよな〜。関西のノリで、ええかげんなやつが合うと思うわ。こればっかりは、優秀かどうか言うよりも、合う、合わへんの問題やからな。 スーパーとか行くと、よくエスカレーターとか止まってんのよ。電気代の節約か知らんけど、そういうのにいちいち引っかかってたら、韓国で暮らすのは大変かもしれんな。 Bさん 韓国人の出世意欲の強さとか文化の違いに戸惑う人もおりますけど、かわいい部下も多いですよ。素直やし。まだ韓国語がまったく話せない時に、英語と筆談で朝まで飲み明かしたこともありますわ。 Dさん 実は、僕は日本と韓国でちょっと揺れています。まだ韓国語がうまく話せないというのもありますし、サムスンの社内でもあまり日本人同士の交流ってなくて……。 Aさん 私もたまに日本からお客さんが来るとうれしくなっちゃいますね。一人暮らしなのでマッコリとかをもらっても、なかなか空けられないので、そういうときにパーッとやります。 あと、日本に連絡を取りたくても取れない人も多いですね。競合のサムスンに行くって周りに言えなくて、家業を継ぐとか、趣味の自転車を仕事にするとか、いろんな口実で前の会社を辞めているから、気まずくて下手に連絡がとれない。 Cさん わしの場合、正直に「サムスン行きます」言うたら役員に監禁状態にされたわ(笑)。「辞めるのもどこ行くのもかまへんけど、サムスンだけはやめろ」と。ライバル会社ということではなくて、すっごい嫌いやったんやって。サムスンは手を出さないって条件である製品を作らせたのに、約束破ったかなんかで。 ――日本の家電メーカーはサムスンに圧倒されてしまいましたね。 Aさん 前職の日本家電メーカーで労働組合をやっていたことがあったんですが、そのときに経営陣の考えを聞いて、これでは絶対にサムスンに勝てないと思いました。今から何年も前ですけど、当時から利益率が比べ物にならなかった。 Dさん 僕もサムスンに入社して強さの秘密がよくわかりました。原価構造が日本製品とは比べ物にならないくらい低くて、これではとても勝負にならない。 Aさん 日本の家電メーカーにも頑張ってほしいですけど、ここまでひどくなるとは……。 買ってきた技術ばかりだから トラブルを自分で解決できない ――逆に、サムスンで働いているからこそ見えてくる、サムスンの課題点はどこだと思いますか。 Cさん さっき話に出てきた成果主義やね。あまりに短期間で結果を求めすぎる。これはもう変えなあかん。 Bさん まず上司へのプレッシャーのかかり方がすごいですわ。せやから、下の研究員が長期研究をしたい思うても今の人事制度では不可能やと思います。一度でも平均以下の評価をもろうたら昇進はないですからね。幹部クラスになると、それが実質クビを意味しますね。 Aさん 製造で何か問題が起きたときに、原材料や技術の根幹部分の要素技術にまでさかのぼらなければいけないことがあります。ですが、サムスンは長期研究ができない。「そういう技術はリターンが少ないから買ってしまえ」という方針なので、そこが本当に弱いです。自分で解決できる技術力がない。 そういう時に活躍するのが村田製作所や京セラ、キヤノンといった企業で、液晶や半導体工場に製造装置を入れるとなると、日本企業の技術者で近くのホテルがいっぱいになります。 Dさん 日本企業との関係が途絶えると何もできなくなる可能性がありますよね。サムスンの技術者にありがちなんですが、「知っているけどできない」ってことが多いです。知識では知っていても経験がないとか。 Bさん それでも勝者はサムスンいうんが、“日本人”の“サムスン社員”としては複雑ですね。
[12削除理由]:無関係な長文多数 |