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2013.11.14 「日本」の解き方
会社法改正法案が近く国会に提出される見通しだが、政府案には「社外取締役の義務付け」が見送られそうだ。これについて、筆者は同じ問題意識を持つ有志とともに反対意見を言うつもりだが、本コラムではその一部を紹介しよう。
まず、会社法改正議論の経緯を振り返ってみよう。民主党に政権交代した直後の２０１０年、当時の千葉景子法相が法制審議会に会社法改正を諮問した。「会社法制について、会社が社会的、経済的に重要な役割を果たしていることに照らして会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から、企業統治のあり方や親子会社に関する規律等を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい」とした。
法制審議会会社法制部会は１１年１２月に「中間試案」を公表、「社外取締役の１人以上の義務付け」を盛り込んだが、その後、経済界の反対などによって１２年９月に出された答申からは、義務付けが除外された。
ただし、義務付けを主張する声も多く、「社外取締役が存しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とするものとする」という規定が盛り込まれた。また、導入を促すルールを東京証券取引所の規則に盛り込むよう要請するものとされた。
１２年末に自民党に政権交代すると、この問題は精力的に議論され、今年６月１４日に閣議決定された「日本再興戦略」にも「会社法を改正し、外部の視点から、社内のしがらみや利害関係に縛られず監督できる社外取締役の導入を促進する（次期国会に提出）」と明記された。
ところが、経済界の反対によって、今回、その閣議決定の趣旨に反する法案が出されようとしている。「社外取締役が存しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載させる」という内容が検討されているが、それでは民主党時代と同じで、不十分だ。
社外取締役の設置義務は、海外投資家から一定の評価があった。そもそも、社外取締役に期待される機能は２つある。まず、取締役会に外部の目が入ることで経営者らの不正を未然に防ぐ「ブレーキ役」、もう１つは、不採算事業の温存など経営判断の先送りを防ぎ収益性を向上させる「アクセル役」だ。
海外投資家は、２つの機能を期待しているが、日本企業に対しては特に２番目のアクセル役を期待している。社外取締役の義務付けはアベノミクス第３の矢のシンボルとみられていたので、その見送りとなると失望を誘うだろう。
英米では、社外取締役が半数以上というのが世間相場である。それに比べると日本は見劣りする。しかも、現状の社外取締役は、親会社の役員でも可能という、英米基準から見れば、信じられない甘さである。社外取締役に関する規定がそのままだと、こうした日本企業に対する悪いイメージを払拭できないので、いずれアベノミクスに対し大きな失望感が出てくるだろう。 （元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一）
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