03. 2013年11月13日 19:44:00
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第3回】 2013年11月13日 片山繁載 [人事・キャリアコンサルタント/日本マンパワー取締役] いつまでも部長気取りで若手の面子丸つぶれ!? 年下上司を困らせる現役固執型社員の迷惑 前回は、役職定年前後のキャリアショックを契機に、対象となる50代管理職人材が、その後の働く意欲や自己活用の志向性いかんで様々な問題を引き起こすことがあること、そしてその典型的な4つのタイプを提示した。今回からは、これらのタイプのうち役職定年後の「困ったシニア人材」といわれる3タイプ(現役固執化型、定年前OB化型、ホドホド現役型)について、その実態を披露しながら、その対応の仕方を“トリセツ”風に解説してみる。 そのアプローチ法としては、まず彼らのプロフィールを眺め、次に組織内でよく起こす問題行動を観察してみる。最後に組織としてどのように対応すればよいのかを考える。個人の問題、また組織管理的にみて役職定年人材に多少の問題はあろうが、キャリア30年の元管理職人材を活用しないのは、あまりにもったいない。どうすれば少しでもましな活用が可能になるのか一緒に考えていただきたい。 今回は、困ったシニア人材3タイプのうちの1つ目、「現役固執型」人材のトリセツをご紹介したい。 「現役固執化社員」の実態を理解しよう トリセツ対象人材の第1回は『現役固執化』人材から。この人材のタイプの方は、企業の期待人材として、早くから組織管理者の道を歩んだ方に多く、組織人として様々な成功体験を有している。 物分かりのよい組織人だが、このタイプは、役職定年などの時期が訪れ、新しい働き方や後輩に道を譲る時期が来ても、ひたすら自分の流儀を貫くなど、過去の仕事スタイルを守ろうとする人である。仕事に対する責任感が人一倍強い分、立場が変わっても、過去の経験や実績を背景に、管理的な立場から物を見る癖が抜けず、環境への順応性に乏しい。自己中心的な組織観が抜けず、新しい役割・立場の認識や新たな人間関係の構築に無頓着、“はた迷惑な働き方”をする点で、年若い組織管理者や周囲の若手を悩ますタイプだ。 まず、このタイプのプロフィールを述べておこう。 ◇現役固執化タイプのプロフィール=業績志向の会社人間 *経 歴:管理者として早くから実績を上げ、昇進・昇格も早く企業貢献度も高い *能 力:ビジネス基礎能力が高く、リーダー適性も高く組織を統率するのが上手い、実務プレーヤーとしても優れたスキルを保持している *価値観:人の上に立って指導するのが好き、マネジメント優先の考え方、仕事は成果を上げてこそ意味があると考え、上昇志向、向上心が強い *人間関係:自分が指示型なので従順型を好む、上位人脈を大事にする。能力の乏しい人間を一番嫌う。上位者として認めた人の言うことは聞くが自分より技量の劣る人間の言うことには耳をかさない *役職定年の受け容れ:人事制度上の形式は認めるが、内心は、大きな成果を上げる人間が優秀だという業績主義が根強くあり、自己の役割・権限低下がすんなり受け容れられない。 次に、このタイプが起こしがちな問題行動を紹介したい。 ◇現役固執化の方が組織内でよく起こす問題行動=なぜオレに任せないのか *肩書きが外れても同一職場内で、組織責任者のヨコに座り、年下上司の補佐といいながら、管理職代行や上司のお目付け役をする *肩書きが外れたのに、会議でいつも目立つ場所に座り、会議進行やテーマに〈正論〉をぶつけて進行役を困らせる *営業同行で、年下の課長や若手と一緒にプレゼンなどをすると、途中から全体の流れを仕切ってしまい若手たちの面子がつぶれる *正攻法でやっている若手営業のヨコで、馴染みの人脈営業で成果をあげ、深い人間関係を築かなきゃダメだよ、と諭す *新人育成などOJTリーダーがやっていることに、もっと成果の上がるやり方と称して自分の教え方をやらせる ヤル気十分な現役固執化タイプに 「若手に道を譲れ」は効かない 現役固執化の方は、生真面目な組織人であり、かつては会社の役割モデルであった方に多い。本人の気持ちとしては、役職定年になっても、働く目的は会社の業績を上げるために自分が最大の働きをすること、という信念をもっている。 この信念・使命をもち、様々な権限を活用し業績向上や組織管理・部下育成で会社貢献してきた自信と誇りがある。そのことから、会社は能力主義・実績主義といいながら、年齢だけで杓子定規に役職定年制度を当てはめ、まだ十分管理者として成果を発揮できるのに、役割ダウンさせ仕事をやりにくくする会社に疑問と反発心をもっている。 この現役固執化は、組織貢献意欲が高く、過去の実績・成果も上がっている方が多い。役定を迎えても何らくたびれをみせず、現役続投意欲満々だ。若手に道を譲れ、などと言っても自分の方がやり手だという自負があるから、容易に年下の実力・器量不十分な上司など軽くあしらわれてしまう。 組織としてこのタイプの方を活用するには、多少高度な人材マネジメントが必要だ。その人材活用の基本は『その人の強みをほめ、チャンスを生む仕事に就ける』ことだ。役定後の権限の持たせ方=自己決定のさせ方がその鍵だろう。子会社の役員・部長ななどが最適な活用場だが、最近はそれも難しい。社内での使い方の基本は、管理的業務を外す代わりに、プレーヤーとして組織貢献期待を高め、大きめの業績目標を与えること。そして、その達成プロセスに本人裁量の余地を与えることだ。 営業ならば、コネクションの強い得意先を担当させ、上司への事前承認で出張や接待費を自在に使わせ、大きな営業成果を上げさせ続けるような使い方だ。若手層に求めるような訪問件数管理などプロセス管理を必要以上に求めないで、“任されている=信頼されている”と“自分で決める=責任を持つ”自己管理でやらせることが、ヤル気を削がず、仕事満足度を高く維持し、長く貢献させる秘訣だ。 最悪なのは働き方を制限すること 「役立ち感」と「承認」を示そう 役職定年者をうまく活用する人材マネジメントは、『役立ち感』と『承認』の欲求を上手く活用することだろう。これを無視・軽視すると問題の多い働き方になりがちだ。役立ち感とは、自分が必要とされ組織貢献できる仕事がある、という実感だ。また承認とは、本人の役立ち感を実現する役割とその目標に対して、上司が同意してくれたという実感だ。 役定後、過剰な管理者意識・態度が気になる場合は、組織管理の観点から上司としてお願いしたいこととして、キチンと話し合う場を持てばこのタイプの方は理解してもらえることが多いものだ。 もっとも下手な使い方は、力のない上司が、組織管理上この方の力を封じるために、業務管理上の規則や決まりごとを前面に出して制限的な働き方を強いることだろう。本来の強みが発揮できない仕事に就けたり、目的とする成果とさほど関係のない調べものや報告事項など、生産性を伴わない管理優先の仕事のさせ方が、本人の持つ強みの発揮を減殺するものだ。 この役立ち感や承認について、元部長・課長だから、目標の設定や成果責任は当然と考え、放任・自主管理させ必要最低限のコミットしかない上司も多い。元上司に対する遠慮がそうさせがちだが、裁量で仕事を進めることと、基本となる役立ち感や目標の承認を受けることは意味合いがちがう。それは、人としての信頼を得ることと同義だからだ。現役固執化のタイプは、実直な組織人でもある、この役立ち感を高めることと、承認をうまく伝えることで本人のスッキリ感は格段に違う。 現役固執化した社員を活かすための 5つのポイント この現役固執化タイプの人材の上手な使い方を、組織全体的視点でまとめると次のようになろう。 @人事管理上の観点から、役職定年者の職務・権限・評価について まず職務については過去の経験・現有能力が活かさせる職務に就けることが大原則。権限については現場実務遂行に限定し、上司の管理権限と重複部分が無いようにすること。また、評価については、人事・業績評価は目標管理などをキチンと行いどんなベテランであっても人事管理の目はキチンと持っておく、これが大原則。 A部下としてこのタイプを持つ上司の管理スタンスとして 組織上の部下として、「役立ち感と承認による動機付け」を、キチンと与えること。お願いする役割と期待成果を伝え、相互了解しておく。期待成果が乏しいときはギャップを指摘し頑張ってもらう。行動面で是正してほしいことはキチンと是正してもらう。 B自己の管理業務にかかわること 支援をしてほしいことと同時に、逆に“やってほしくないこと”を伝えておく。組織や顧客に精通している点は、自分のアドバイザーとして活用する。また、業務外では仕事のできる先輩として一目置き、必要な教えも乞う関係を保つ。 C周囲の仕事仲間・若手としては この仕事なら教えてもらえる、協力してくれそうなことがあれば、気軽に相談に行く。得意先との関係があったところは営業同行などで人脈を得る。こわそうな元管理者を使い勝手の良い、ベテラン先輩社員として皆で活用度を高める。 D改めてほしい態度や言動について 初期は上司が部下や周囲の意見を時々伝え、早い時点で修正を図る。慣れてきたら、徐々にフランクな関係でモノが言える関係を作り出す。単に注意だけでなく、業務の仕組みやPC操作など本人が知りたがっていることも伺い、教えてあげることも大切。元管理者意識の山から、自分たちの“仕事のふもと”に下りてきてもらう働きかけも大切なことだ。 今回は、50代役職定年社員の問題人材のタイプのうち、現役固執化人材の実態とその人たちをどのように活用すればよいかを見てきた。次回は、無難に逃げ切ることだけを考えている『定年前OB化』人材についてみていきたい。なぜ50代社員が役職定年とともに心の張りを失い、会社の濡れ落ち葉のようになるのか、一緒にその対策も考えたいと思う。 http://diamond.jp/articles/print/44354
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