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侮辱されても米国債を保有しなければならない中国の悲劇
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131112-00029719/
2013年11月12日 11時48分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
米国ABCのJimmy Kimmelのライブショーでの発言がまだ尾を引いているようです。
そのライブショーとは、Kimmel氏が4人の子どもを相手に政治問題などを語り合うものなのですが‥何が一体問題になっているのでしょう?
Kimmel 氏が発した質問に、一人の子どもが次のように答えたのです。
America owes China a lot of money, $1.3 trillion. How should we pay them back?
キンメル:「アメリカは中国に1兆3千億ドルの借金がある。どうやって返すべきなのか?」
Shoot cannons all the way over and kill everyone in China.
子ども:「大砲を撃って中国の人間を皆殺してしまえ」
Kill everyone in China? OK, that's an interesting idea
キンメル:「中国の人間を皆殺すの? 分かった、面白い考えだ」
5−6歳と思われる子どもの発言ですので、どこまで本気か分かりません。しかし、この皆殺し発言に、中国人或いは中国系米国人の怒りは収まっていないのです。というのも、この番組は10月16日に放映され、そしてKimmel氏が既に謝罪をしているのにも拘わらず今なおデモが続いているからなのです。
多分、子どもの発言そのものよりも、その発言を肯定したKimmel氏に対し怒っているのでしょう。
貴方は、この騒動を知ってどのようにお感じになるでしょうか?
まあ、いろんな受け止め方があると思います。ただ、いずれにしても私は、どうして小さな子どもがそのようなことを言ったのか、その意味が分からないのです。
日本人の子どもなら、まずそのようなことを言うとは思われません。何故、人を殺すなんて言葉が簡単に口から出てくるのでしょうか?
幾ら無邪気な子どもの言ったこととはいえ、否、だからこそなおさら不気味なものを感じるのです。
しかし、それはそれとしておきましょう。
もう一つ私が感じたのは、これだけ中国人が米国から侮辱を受けても、できることと言えばデモを繰り広げることだけなのか、ということです。
いいでしょうか? 本当に中国人が米国に対して抗議の姿勢を示したければ、今保有している国債を売却すればいいのです。何も全てを売却する必要はなく、保有しているほんの一部を売りに出しさえすればいいのです。
そうすれば、米国債の価格は急落するでしょう。ひょっとしたら、それが再び不況に突入するきっかけになるかもしれません。中国はそれだけの手段を握っているのです。だから、決して米国は中国を怒らせることはできない。
では、何故中国はそこまでの行動を取ることはないのか?
それは私が改めて言うまでもないでしょう。もし、米国債を売却することによって米国債の価格が暴落することにでもなれば、中国側にも多大な損害が発生するからなのです。そして、そうやって長期金利が急騰することによって不況にでも突入すれば、米国の中国からの輸入が減ることになり、これまた困ったことになるからです。
では、そもそも中国はそれほど大量の国債を保有しなければいいものを、という批判もあり得るのですが(このような意見は、もう何年も前から中国国内で言われていますが)、中国が得た外貨を米国債などの形で再投資をしなければ、ドルに対して人民元の価値が上がり過ぎてしまい、そうなれば中国の輸出が落ち込んでしまうという頭の痛い問題があるのです。
つまり、中国人はせっせと働いて、そして、そうして生産した商品を安い価格で米国に輸出して外貨を稼ぐ。次に、そうして中国の輸出超過が続いても、人民元高ドル安が起きないようにするために米国債に投資をする。
まあ、このような理屈で、大量の米国債を中国が保有する結果になっているのです。
いいでしょうか? 中国は、どんなに米国にバカにされても、自分の利益を考えるならばそう簡単に米国債を売却することができないことを、米国自身が分かっているのです。
だから、そもそも米国が必死になって中国に借りたお金を返そうとする必要もないということなのです。
ある意味、中国の立場は悲しいものでしかないのです。普通ならお金を貸した方が有利な立場にある筈なのに、余りにも貸し込んだ金額が大きいために、借りた方の米国の方が大きな顔をしている、と。
最後に、もう一つだけ感じたことを書いておきます。
それは、中国がこのABCの番組を逆利用しているのではないかと言うことです。
どういうことかと言えば、中国国内では最近、爆発事件などが続発していますが、そうした中国共産党に対する批判の声を、この番組を逆利用して、米国に対し向けようとしているのではないかということです。
つまり、ABCが中国を侮辱したような内容を放送してくれたことによって、内外の中国人の結束を強める方向に仕向け、それによって共産党に対する批判をかわすことができる、と。
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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