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頭取のクビは必ずとられる みずほスキャンダル これで済んだと思ったら大間違い
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37488
2013年11月12日(火)週刊現代 :現代ビジネス
大山鳴動して鼠一匹。業務改善命令から社内処分までの1ヵ月を表現するならこんな感じだろう。それもバックに金融庁が付いていればこそ、だったのだが、どうやら風向きが変わり始めたようで―。
■処分が甘すぎる
「ちょっと考えられない。驚きを隠せませんね」
みずほ銀行と暴力団を巡る一連の問題で、みずほ側が社内処分を発表。同時に金融庁に対し、第三者委員会による調査報告書を提出した。その処分内容を「考えられない」と語ったのは、旧大蔵省OBで検査官として銀行の金融検査に臨んだ経験をもつ嘉悦大学教授の橋洋一氏だ。
「みずほの現幹部たちは『問題の詳細を認識していなかった』などと言い訳していますが、結果としてウソをついたわけでしょう。金融機関として信用問題に関わる致命的なトラブルです。トップを全部、入れ替えるのが普通ですよ。
銀行幹部が高い報酬をもらっているのは、責任を取るため。急に無職になるリスクがあるから、佐藤(康博)頭取などは報酬が年間1億1600万円もあるわけです。それなのに半年は無報酬で働くからと、おカネで解決して地位にしがみつこうなんて、本末転倒。
第三者委員会のヒアリングに佐藤氏は、『コンプラ委員会や取締役会で配られた大量の資料や報告書のなかで、たった2行しか問題融資について触れられておらず、気が付かなかった』と語っていますが、それじゃ、取締役の意味がない。そういう甘い人を取締役に選んだこと自体、問題です。これ、私は検査忌避にあたると思います」
橋氏が指摘するように、佐藤頭取は半年間無報酬の処分で、みずほ銀行の頭取に留まり、兼務するみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長も続投。前任の頭取で、みずほ銀行会長の塚本隆史氏は、銀行会長の座は降りるものの、FG会長はこれまた半年間無報酬で続けるという。佐藤氏の場合、半年間無報酬とはいっても約6000万円の収入が約束される。
結局、辞任したのはコンプラ担当役員2名のみ。OBを含む歴代役員にも過去の報酬を一部返還させるというが、メニューの食材偽装で社長が辞任した阪急阪神ホテルズと比べても、この処分に「甘すぎる」という声が出るのは当然だろう。
実際、処分が公になって以来、永田町からもあらためてみずほの体質に対する批判が上がっている。
自民党は金融調査会と財務金融部会が合同会議を開き、この席上で「詳細を知らなくとも、組織のトップとして責任を取るべき」と佐藤氏の辞任を求める声が相次いだ。
自民党財務金融部会長の菅原一秀衆院議員が語る。
「第三者委員会の調査を見ても、これで真相解明が本当にできたのか、はなはだ疑問です。今回の問題は欧米から見れば、銀行がマフィアとつながっているようなもの。ガバナンスの問題であり、トップが明快な責任を取るべきなのに不十分だという意見もあります。
反社勢力と付き合い、それが発覚した後も放置し、説明も二転三転。そのうえトップが部分的にしか責任を取らない。これは日本の金融機関そのものに対する信頼の失墜につながるし、マーケットからもしっかり是正しろという声が当然上がってくるでしょう」
■金融庁長官との深い仲
ここでひとつの疑問が湧く。みずほにしても、今回の社内処分に批判が上がることは想定内だったはず。この処分でいけると強行したのはなぜなのか。
「今回の処分について、最初にスッパ抜いたのは日経新聞でしたが、かなり断定的に処分内容を書いていました。これは、事前に金融庁がみずほ側の処分案にお墨付きを与えたからに違いありません。まず、みずほ側が金融庁幹部に『これでいきたいのですが、どうでしょうか?』とお伺いを立て、それを了承したからこそ、みずほ側はこれでなんとか凌げると思ったはずです」(全国紙経済部記者)
現在の金融庁長官・畑中龍太郎氏と佐藤頭取が昵懇の間柄であることは、金融関係者の間では有名な話だ。むしろ、そのパイプの太さを買われて、みずほ内で繰り返される旧3行の抗争の歴史を止めるべく頭取に就いたのである。
金融庁関係者が、畑中長官と佐藤頭取の関係について、こう証言する。
「佐藤氏は興銀時代に大蔵省担当―いわゆるMOF担を務め、その後も総合企画部の副部長、部長と、監督官庁との窓口役を担当。財務省、金融庁で銀行を担当していた畑中氏とは必然的に親しくなっていった。
金融庁監督局長時代から、みずほの内部抗争を苦々しい思いで見ていた畑中氏は、みずほの次代を担う人材として、早くから佐藤氏に目をつけていました」
二人はともに'52年生まれ。畑中長官が東大法学部、佐藤氏が東大経済学部と出身大学も同じ。いきおい、仲は深まっていく。
「酒席でリラックスした様子の畑中さんが『佐藤、みずほをしっかり頼むぞ』と肩を叩き、佐藤さんが『合併行は大変なんですよ』と笑いながら応じるのを見たことがあります。同窓、同学年の関係もあり、終始打ち解けた雰囲気でした。ただ、さすがに銀行で出世する人だけあって、佐藤さんは必ず畑中さんを『長官、長官』と呼んで、監督行政を司る畑中さんに恭順の意を示すことを忘れない。だからこそ、畑中さんも佐藤さんがお気に入りなんでしょう」(財務省キャリア)
こんな関係があり、金融庁が守ってくれるという意識があったからこそ、佐藤頭取は処分発表の会見でも、「辞任を考えたことはない」と強気の姿勢を崩さなかったのだろう。
だが、両者の蜜月を快く思わない人間は、金融庁にも、みずほにもいる。今回の問題の検査に当たったのは金融庁監督局銀行第一課だが、報告が上に上がるにつれ、「これは厳しすぎるんじゃないか」と、畑中長官の顔色をうかがうような意見が増えていったという。実際、事件発覚直後のオフレコ取材に対し、「これは頭取の責任云々までいくような問題じゃない」と断言した金融庁幹部もいた。
「かつて監督官庁と銀行はズブズブの関係にありましたが、バブル後の不良債権処理を巡って緊張関係になった。それが、金融庁が畑中体制になってから、裁量行政が復活したと言われています。しかも畑中氏は財務省の木下康司事務次官より3期も上。おまけに2年が慣例だった金融庁長官の任期も3年目に入っていて、表向きは誰も逆らえない。『裁量行政の復活』とはつまり、最後は畑中氏の意向次第で銀行への処分なども左右されるという意味です」(前出・金融庁関係者)
■元頭取が漏らした怨讐
一方、みずほ行内は金融庁以上にさまざまな恩讐が絡み合っている。
今回の第三者委員会による報告書でも、一番の責任者として槍玉に挙がっているのが、問題融資発覚当時の頭取・西堀利氏(富士銀出身)である。
西堀氏は'11年の東日本大震災で、みずほがシステム障害を起こした責任を取る形で頭取を追われた。このとき、金融庁監督局長として、この問題に当たったのが畑中氏である。'02年のみずほ銀行発足時にもシステム障害は起きているが、この際は辞任に追い込まれた幹部はいない。
西堀氏にすれば、畑中氏、さらにはその威光で出世し、自分の2代後の頭取に就く興銀出身の佐藤氏にも複雑な思いを抱いたはずだ。
みずほ銀行行員が明かす。
「システム障害で頭取を降りた後、西堀氏と佐藤氏は口もきかないような関係になってしまいました。西堀氏は現在、みずほFGの顧問という肩書で、顧問室とハイヤーをあてがわれていますが、無報酬です。本来なら、そんな状態でわざわざ出社する必要はありません。それなのに、毎日出社してくるのは、西堀氏の意地であり、佐藤氏に対する恨みでしょう」
今回の問題発覚後、西堀氏は何度かメディアの取材に対応し、口数少ないながらも本音を漏らすことがあった。本誌も、西堀氏がある記者に漏らしたというオフレコ証言を入手した。問題発覚から西堀氏自身が第三者委員会の調査を受ける前後まで、複数回にわたって語った内容をまとめると、そこには西堀氏の佐藤氏に対する恨みが如実に表れている。曰く―。
「私はオリコとの提携ローンのなかに問題融資があることを、現場から上がってきた報告資料を見て知り、対応策をとるべく指示しました。しかし、'11年3月の東日本大震災後のシステムトラブルで更迭されてしまった。私の後を受けた塚本さん、佐藤さんは問題の融資について書かれた報告書類に気づかなかったと言っているが、私は知っていた。そして対応した。それこそ頭取の仕事だと思います」
「これほど重要な問題であれば、銀行としても歴代頭取に事情聴取して、万全を期して金融庁に報告しなければならない。それなのに、事情を知っていた私のところには銀行からのヒアリングなどなかったし、いまだに来ていません」
当事者の意見を聞きもせず、元頭取である自分を「トカゲの尻尾」のように切り捨て、さらには過去の報酬まで返上させようとするのか。西堀氏の怒りは容易に想像できる。
本誌はあらためて西堀氏の話を聞くべく、処分発表直後から自宅を何度も訪ねたが、家族ともども自宅に戻らない日が続いていた。
■警視庁が乗り出してくる
金融庁とみずほ、それぞれの組織内にくすぶる、今回の処理に対する不満。いまは頭を低くしている佐藤頭取だが、すでに佐藤氏にとって想定外の事態も起きている。頼みの綱だった金融庁の「裏切り」だ。
「佐藤氏は、取り引きしている相手が役人であることを忘れてはいけない」と、ジャーナリスト・須田慎一郎氏が言う。
「畑中長官は、役人のしたたかさで、いつでも梯子を外せるようにしているはずです。現に風向きは変わってきています。金融庁は、11月5日からみずほに専従の検査官を派遣して再検査に入りますが、これは、みずほ幹部によると『寝耳に水』の話だったそうです。みずほ内では、事前に情報をキャッチできなかった担当セクションが叱責されたと聞いています」
畑中長官の意を汲んで適当なところで幕引きを図るつもりだった金融庁が豹変したのは、自らの組織に危機が及んでいると察知したからに他ならない。
金融庁の職員3人を議員会館に呼び、今回の経緯を質した民主党の長妻昭衆院議員は「検査に関わることは言えません」と繰り返す金融庁の態度に呆れ、衆院予算委員会で畑中長官と佐藤氏を同時に呼び、経緯説明をさせるよう求めている。
「私の質問に対して、何も答えられないと繰り返していた金融庁ですが、不可解なことに後日、私に金融庁審査課長から『念のため』という手紙とともに、国家公務員の守秘義務に関する資料が届きました」(長妻氏)
いかにも官僚らしい保身第一の振る舞いだが、両者の国会招致については、長妻氏以外からも要求する声が上がっている。
民主党にすれば、佐藤氏を追及することで、彼を産業競争力会議のメンバーに任命した(現在は辞任)安倍晋三首相の任命責任を問うという政治的思惑もあるのだろう。だが、そんな思惑とは別に自民党、公明党の与党内からも「畑中長官、佐藤頭取を国会へ呼ぶべきだ」という声は日増しに強まるばかり。
このままでは、みずほと一緒に金融庁も大きな痛手を受ける。そこで切ったのが「みずほ再検査」というカードだったのだ。
「自分たちに火の粉がふりかかってこないようにするためには、みずほにより厳しい対応を迫るしかない。幸い、金融庁にはまだ『なぜ、みずほは虚偽の説明をしたのか』を追及するというカードが残っている。虚偽説明ではなかったという裏付けを取らないと、今度は自分たちが国会で追及される。つまり、金融庁が我が身を守るための再検査なのです」(前出・須田氏)
しかも、この問題では、警視庁が80人態勢で問題融資の捜査に乗り出しており、借り手側の暴力団関係者を詐欺罪で立件しようとする一方、貸し手側であるみずほ本体の融資担当者、コンプラ担当者も事情聴取する方針だ。万が一、反社と認識したうえでの融資だと確認されれば、オリコとみずほの組織的な犯罪に発展する可能性も否定できない。手続上の問題が見つからなかったとしても、借り手として大物暴力団組長が逮捕されるような事態になれば、そんなケースすら見抜けなかったのかと、みずほのチェック体制の甘さがあらためて問題になる。
「週刊現代」2013年11月16日号より
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