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インフレ目標政策が半年後に袋叩きに遭う理由
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20131107-00029588/
2013年11月7日 14時47分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
日銀の岩田副総裁が本日の参院財政金融委員会で、「何でもかんでも学者のように話す訳にはいかない」と述べたと言います。
何故学者時代のときのように率直に話すことができないかと言えば、「副総裁の立場になると様々な臆測をマーケットに呼んでしまって色々反応する」からだなんて。
ホンマでっか?!
それも一つの理由かもしれませんが、岩田氏は副総裁就任時に、日銀当座預金残高が70〜80兆円になれば、必ず2%のインフレ目標値を達成できると断言していたからではないのでしょうか?
今やその日銀当座預金残高は100兆円。ご存知ですか? もちろん、インフレ目標を達成するためにはある程度の時間がかかるでしょう。しかし、エネルギー価格の高騰という要因を除けば殆どインフレの兆候が見られないのが現実なのです。だから、あいまいな言い方になるのではないでしょうか。
一方、麻生副総理は、同じ委員会で次のように発言しています。「日銀の言われるように、2年後にはほぼ2%のインフレまでいけるのではないかと考えている」
そうですか、計画どおりに2015年4月頃にはインフレ率が2%になると見込んでいるということですか。まあ、いいでしょう。しかし、麻生副総理は大切なことを忘れてはいませんか?
そうなのです。2年後どころか、来年の4月には消費税を5%から8%へ引き上げるではありませんか? 従って、その分が商品の価格に上乗せされるのであれば、黙っていても物価は3%程度は上がる筈。
そのことについて、麻生副総理はどのように考えているのでしょう? また、安倍総理はどのように考えているのでしょう?
私が、そのような疑問を投げかけるならば、恐らく次のような答えが返ってくるでしょう。
消費税を引き上げた結果、景気回復に冷や水をかけてはいけないので、だから経済対策を同時に打つのだ、と。
私が聞きたいのはそんなことではないのです。
そうではなく、黙っていても来年4月には物価が3%も上昇するということです。目標値を1%も上回るのです。
つまり、物価目標値をさらに上回るインフレ率になることを現政権は歓迎するのか、ということなのです。
でも、安倍総理や麻生副総理が、消費税増税の結果物価が上がるのは本来は好ましいことではないと言うのであれば、さらに私の疑問は膨らむのです。
安倍総理は、本当にリフレ派なのか、と。安倍総理はハマコウ教授やクルーグマン教授を本当に信奉しているのか、と。
私は何を言いたいのかと言えば、実はインフレを待望する人々には2つのタイプがいるということなのです。
1つのタイプは、バリバリのリフレ派で、彼らは、とにかくどんな理由でもいいからインフレ率を高めることが先決だと考えるのです。
何故インフレ率を高めることが先決かと言えば‥そうなれば、人々はお金の価値が落ちる前にモノやサービスの購入をしようと行動するので、消費が活発になるからだ、と。また、インフレ率が高まれば実質金利が低下するので、企業の投資活動を刺激するからだ、と。
そうした考え方をするならば、消費税増税の結果、物価が上がっても同じことではないですか?
もう1つのタイプは、そのように何が何でもインフレになればいいと考えるのではなく、実体経済が回復した結果インフレになることが好ましいと考えるタイプです。つまり、インフレになることが景気を良くする原因になるとまでは考えず、インフレになるような経済状況を実現することが重要だと考えるタイプです。
ということで、後者の立場は、何が何でもインフレが必要であるとまでは考えず、従って、消費税増税の結果物価が上がっても、それは何の意味もないと考えるのです。
安倍さんに聞きたい。安倍さんは、どっちのタイプなのでしょうか?
何が何でもインフレが必要だと考えるタイプでしょうか?
しかし、安倍総理は、その事に関して自分の立場を明確にしていないのです。でも、その一方で、ハマコウ教授を信奉しているとは言う。しかし、どうも100%ハマコウ教授と同じ考えであるとは思われないのです。日銀を叩くという面では完全に一致していた訳ですが、では、どんな理由でもインフレになることを歓迎するのかと言えば、微妙に違うのです。
よりリフレ派に近いと思われる安倍総理でさえ、その程度のものなのです。ましてや金融政策の効果に対して懐疑的である発言を行っていた麻生さんが、何が何でもインフレになればいいと考えているとは思えないのです。
そうですよね、麻生さん。
だったら、2年後に仮にインフレ率になったから、それによって景気が必ずよくなるとは思っていないということでしょう。また、だからこそ、インフレになるだけではなく、賃上げを実現しなければいけないと躍起になっているのでしょう?
純粋のリフレ的な発想からすれば、賃上げが必要だなんてことは言わない訳ですから‥
でも、現政権は、何が何でも賃上げが必要だと主張する。
だから、本当はインフレ目標値を主張しているというよりも、賃上げ目標値を主張した方が分かり易いのです。そして、その賃上げを実現するためには、インフレになった方が好都合だからインフレ目標値を手段として採用している、と。
いずれにしても、来年の4月になればインフレ率は恐らく3%程度になるでしょう。
そして、そうやって物価が上がる一方で、なかなか賃上げが実現できないとなれば国民の生活は当然苦しくなる。
そして、そのとき、国民は、それでもなお物価を引き上げようと日銀がせっせと長期国債を買い続ける姿を見て、政府はなんということを日銀に行わせているのだ、と怒りの声を挙げるでしょう。
何故ならば、消費税増税の影響分だけで3%物価が上がる上に、日銀の異次元緩和策による効果でさらに2%物価を引き上げようとする訳ですから、合計では5%も物価が上がる計算になるからです。
そうしたなかで、仮に賃金が多少上がったとしても、一気に5%も上がることはないでしょう。上がったとしてもせいぜい1〜2%でしょう。それでも、過去賃金が下がり続けてきたことを思えば、大変に有難いことかもしれないのですが‥物価が5%も上がっているのに、賃金が2%しか上がらないのでは、労働者の生活は明らかに悪化してしまうのです。
そのときに、現政権はどのような対応を取るのでしょう?
以上
小笠原 誠治
経済コラムニスト
小笠原誠治(おがさわら・せいじ)経済コラムニスト。1953年6月生まれ。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(いずれも秀和システム)など。「リカードの経済学講座」を開催中。難しい経済の話を分かりすく解説するのが使命だと思っています。
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