01. 2013年11月06日 18:36:45
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オピニオン:ちぐはぐな安倍政策が招く悪い円安リスク=チャンドラー氏 2013年 11月 6日 17:04 JST マーク・チャンドラー ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨戦略最高責任者(2013年11月6日)米経済を覆う不透明感などを受けて、方向感を失ったドル円は狭いレンジ内での動きを繰り返している。だが、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略最高責任者、マーク・チャンドラー氏は、低水準のボラティリティを「圧縮されたバネ」に例え、来年以降、大きな変動が発生する可能性もあると語る。 ドル円レートの行方とアベノミクスに関する同氏の見解は以下の通り。 <レンジ相場はいつまで続くか> 主に米経済をめぐる不透明性の高まりを受けて、ドル円は過去5カ月余り方向感を失っている。思わぬレンジ相場の長期化に、市場参加者はブル(強気派)、ベア(弱気派)の別なく、ハッピーではないだろう。 アベノミクスがはやし立てられた昨年12月衆院選の前後から春先までは、ドル円の上昇トレンドがずっと持続するような錯覚に陥った人も多かっただろうが、何事にも永遠はない。大事なのはトレーディングゾーンの変遷を見極めることだ。 私は、ドル円の当面のトレーディングゾーンは下値が94円程度、上値が100円程度と見ている。ここ数カ月、米金利が低下傾向にあることから、目先は下落方向のリスクのほうが大きいかもしれないが、年末のレートは足元と同じ98円程度を想定している。 ただし、後述するように新しいインペタス(推進力となる材料)次第では、来年以降は別のトレーディングゾーンに移る可能性は十分にある。重要なのは、現在のボラティリティの低さをどう捉えるかだ。最近のドル円の3カ月インプライド・ボラティリティ(予想変動率)は9―10%と、他の主要通貨ペアに比べれば比較的まだ高いものの、年初来の低水準を継続している。 ボラティリティは、いうなればバネに似ている。ボラティリティが低いということは、ヘッジの必要性は少なく、しかも大きなポジションを取りやすいということだ。その結果、圧縮された巻きバネがどんと跳ね上がるように、大きな変動を発生させ得る力が水面下で溜まりつつあると考えたほうがよい。 <バネが跳ね上がるきっかけ> 今後の相場の行方を握る第一のインペタスは、いうまでもなく、米量的緩和(QE)の段階的縮小(テーパリング)だ。私はかねてより、巷間言われていた9月開始ではなく、来年3月に小さく(100億ドル程度の減額で)始まるのが適切だと考えていたが、目下のところ、そうなりそうな情勢にある。いずれにせよ、テーパリングを経て米金利が再び上昇基調を強め、日米金利差が拡大すれば、それがドル円上昇に弾みをつける可能性はある。 一方で、日本側のインペタスにも引き続き注意を払う必要がある。それは、円安方向のインペタスとは限らない。たとえば、アベノミクス以降、日本株とドル円の相関はいっそう強まったが、来年1月のキャピタルゲイン税引き上げ(12月末に証券優遇税制が廃止され、上場株式などの売買益に対する税率が10%から20%に引き上げられる)前、つまり11月後半か12月頃から日本株に売り圧力がかかり、一時的に円高を招くリスクには要注意だ。 ただし、より先を見れば、日米の経済ファンダメンタルズの状況や金利差の拡大見通しを背景に、円安方向への推進力が勝る局面はあるだろう。率直に言って、私は日本経済の中長期的な先行きについては弱気に見ている。 米経済が金融・財政政策上、深刻なチャレンジを抱えている点は認める。しかし、米国は2008年の世界金融危機前と比べて、経済規模が大きくなった数少ない先進国の一つだ。しかも、(09年比で)約200万人も少ない就業者数でそれを実現した。労働生産性も改善し、成長余力は高い。 かたや日本は確かにアベノミクスのおかげで円安が進み、株価は上がり、センチメントはある程度回復した。しかし、来年の今ごろには景気回復の足取りは弱くなっている可能性があると見ている。なぜなら、アベノミクスは実際に求められていることと逆の方向を向いていると考えられるからだ。 誤解を恐れずに言えば、日本に一番必要なのは、安倍政権がこだわる設備投資ではなく、家計消費の自律的な拡大である。確かに日本の企業部門は家計部門に比べて貯蓄性向が高く、純貯蓄額は11年でGDP比7.5%に及ぶ(家計部門は1.4%程度)。だからこそ投資減税などで設備投資に向かわせるという発想なのだろうが、そもそも日本の設備投資はすでに大きい。問題なのは国内に設備投資ニーズがないことだ。 それでも政府は今、企業に対する税制上の優遇を図ろうとする一方で、消費増税などによって家計を圧迫しようとしている。企業が内部留保を設備投資に加えて賃上げに継続的に回すというシナリオも、現実味に乏しい。大きく譲って、その経路が機能するとしても、遅行性がありすぎるし、企業から家計への十分な所得移転も早晩起きないだろう。結局、政府は増税に伴う消費の落ち込みを財政支出で賄うことを目指すのだろうが、それは歴代の自民党政権が辿った「いつか来た道」に過ぎない。 翻って為替相場へのインプリケーションを考えるとき、日本経済が弱体化しても、それだけで単純にドル円の上昇要因になるとは限らないが、米景気回復の足取りがしっかりとし、テーパリングを経て日米金利差が拡大していくならば、確かにそうした要因とはなる。ただし、それが日本経済にとって「良い円安」なのかはまた別の話である。 *本稿はマーク・チャンドラー氏へのインタビューをもとに、同氏の見解に基づいて書かれています。 *マーク・チャンドラー氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニアバイスプレジデント兼通貨ストラテジー部門グローバル・ヘッド。HSBCバンクUSAとメロンバンクでチーフ通貨ストラテジストを務めたのち、2005年10月より現職。著書に「Making Sense of the Dollar」。 コラム:米欧金融政策への思惑でたまる「円高マグマ」 2013年 11月 6日 12:47 JST 田巻 一彦 [東京 6日] -物価上昇率の低下を背景に欧州中銀(ECB)に追加緩和の圧力がかかる一方、米国でも物価上昇率が米連邦準備理事会(FRB)の目標を大幅に下回って推移しており、量的緩和政策縮小(テーパリング)着手が大幅に先送りされる可能性が高まっている。 こうしたマクロ環境の下で、短期的に円安が進みにくい地合いが形成されている。ショックが発生した場合は、市場の想定を超えて円高に進むマグマが溜まっているようにみえる。 <大幅低下したユーロ圏のCPI> 市場では、7日の欧州中銀(ECB)理事会で追加緩和を期待する声が出るなど、欧州経済が直面しつつあるディスインフレ現象への危機感が台頭しつつある。 ただ、シュタルク前ECB専務理事は5日、ユーロ圏にデフレリスクは見られないとの認識を示し、追加緩和を織り込もうとするマーケットの動きをけん制した。 <米でもテーパリング先送り観測が台頭> 一方、米国でも物価上昇率はFRBの目標の2%を大きく下回った水準で推移。9月の食品とエネルギー価格を除いたコア個人消費支出(PCE)価格指数は前年比プラス1.2%、9月CPIも同1.2%と低位で安定した格好だ。 この点に関連し、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、物価上昇率は依然としてFRBの目標を大きく下回っており、テーパリングに着手する前に物価上昇率の拡大を確認する必要があるとの見解を表明した。 また、FRBのパウエル理事は4日、米金融政策は当面、かなり緩和的となる公算が大きいとの見方を示している。 <突出した日銀の緩和姿勢、市場の印象に変化> 今年4月以降、「黒田緩和」で突出してきた日本の緩和姿勢が、足元における米欧での物価上昇率の低下基調を背景に、米欧との差が縮まった印象を市場に与える役割を果たしているように見える。 日銀の緩和姿勢に何ら変化はないばかりか、不測の事態が発生し、リスクが高まった場合は、適切に対応する姿勢も明確にしている。日銀としては最善の対応をしていると言えるが、米欧日の金融政策スタンスをマーケットは相対的に捉える。そこが大きなポイントだ。 <急速に後退する円安の期待> その結果、マーケットでは短期的な円安進展への期待感が、急速にしぼんでいるようだ。100円が壁として意識され、105円方向にドル高/円安が進むという声が後退。ドル/円は97─98円台でこう着感を強めている。 今年5月までの、円安トレンドを強く信じていた市場のセンチメントと比べ、足元の市場参加者の思惑は、かなり変化しているようだ。特にヘッジファンドなどの海外勢は、円安/日本株高に沿った売買を取りやめ、円資産関連の取り引きに関しては様子見を決め込むところが多くなっているようだ。 このことは、想定外のイベントが発生し、マーケットがリスクオフ心理に傾いた場合、予想以上に円高が進む可能性があることを示唆していると考える。アベノミクスの発動以来、市場では「円高は進まない」との認識がコンセンサスとなってきたが、水面下ではどうやら「円高のマグマ」が溜まり出しているようだ。 <アベノミクス再進撃の切り札は何か> 昨年末からのアベノミクスの展開で、攻めの姿勢を示して円安/株高を演出してきた安倍晋三政権は今、米欧から影響を受けても決め手がないという状況に直面しつつある。言い換えれば、政権発足以来の進撃がいったん、停止しつつあると指摘できる。 再進撃を開始するための切り札は何になるのか──。海外勢をはじめ多くの市場関係者は、すでにテーブルに乗っているカードでは満足しないだろう。市場の満足度は、為替の水準と株価で測れるのではないか。 *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。 *見出しを一部変えて再送します。
焦点:シフトする日本株買い主体、上昇パワー低下で緩和期待の声も 2013年 11月 6日 16:14 JST [東京 6日 ロイター] -日本株の買い主体がシフトしている。今年前半までけん引役だった海外短期筋は安倍晋三政権の成長戦略に失望して後退。代わって政権の安定感や矢継ぎ早の政策対応などを高く評価する海外年金筋などの長期資金が流入している。
マーケットにはアベノミクス相場第2幕入りを期待する声が出る一方、買いのボリュームが小規模となり、株価押し上げのパワーは低下している。今春のような上値追いの再現を期待する参加者からは、追加金融緩和を切望する声が漏れてくる。 <為替気にしない長期投資家> 日本株とドル/円の相関性が低下している。円安期待の後退は日本株の上値を押さえる要因であり、日々のトレードでは依然として材料にされやすいものの、データでみる限り、以前のような連動性は薄れている。 ドル/円が2013年8月末に98円台前半だった際、日経平均.N225は1万3300円台だった。現在は98円台半ばと為替はほぼ同水準ながら、日経平均は1万4300円台と7%以上、上方に位置する。大和証券の試算では、2012年11月中旬以降のドル/円との相関から得られる予測値に対して、実際の日経平均は500円以上、上振れているという。 円安離れの要因は、日本株の買い主体の変化だ。今年前半のアベノミクス相場をけん引してきたヘッジファンドなど短期筋は、金融緩和期待を背景に日経平均先物買い・円売りのポジションを構築。円安と株高が連動する相場を作った。だが、足元でその買いは一服。今度は、海外年金など長期投資家が日本株への投資を始めている。 実際、海外ファンドでは為替ヘッジなしの人気が高まっている。米国における主要な日本株ファンドの純資産流入累積額をみると、為替ヘッジがあるウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジド・ETFの累積額はほぼ増えていない。他方、ヘッジなしのiシェアーズMSCIジャパンETFは概算で12億ドル弱の資金が流れ込んでいる。 大和証券・投資戦略部課長代理の熊澤伸悟氏は、為替の動向をさほど気にしないソブリン・ウェルス・ファンドや年金など長期投資家による日本株投資が、増え始めている表れと指摘。「日本株投資の動機が、円安期待からファンダメンタルズ評価に移行している」と話す。 <アベノミクス相場、第2幕入りも> 東証・大証が発表している投資主体別売買動向では、9月第1週から10月第4週の間に、海外投資家は現物を1兆2736億円買い越す一方、先物(日経平均先物、日経平均ミニ先物、TOPIX先物、TOPIXミニ先物の合計)では3268億円の売り越しだった。9月以降、先物を好む短期筋は売り優勢だが、現物を主体とする長期投資家の買いで吸収している構図だ。 日経平均ベースの予想PER(株価収益率)は15倍強と割安感はないものの、「資金のアロケーション上では、影響のないレベルだ。海外年金などが潤沢な資金をどこに振り向けるかというときに、日本株が選ばれることが多くなっている」(外資系証券エコノミスト)という。 ボラティリティの低下も長期投資家にとって好環境だ。ゴールドマン・サックス証券のデータによれば、日経平均の1カ月満期のインプライド・ボラティリティ(IV)が大きく低下する一方、2年満期のIVは小幅な低下にとどまり、足元では1カ月満期のIVが2年満期のIVを下回っている。 通常、IVは短期満期よりも長期満期のほうが大きく、期間構造は右肩上がりのケースが多い。9月上旬から短期満期のIVが相対的に急低下したことで、「IVの期間構造がダウンワード・スローピング(右肩下がり)からアップワード・スローピング(右肩上がり)へと変化し、アベノミクス相場は短期急騰の第1フェーズから、緩やかな長期上昇の第2フェーズに入った」とゴールドマン・サックス証券・エクイティデリバティブトレーディング部長、宇根尚秀氏は指摘する。 <依然高いアベノミクスへの評価> 同じ海外勢でも、ヘッジファンドと年金など長期投資家で投資行動が大きく異なるのは、アベノミクスに対しての評価が違うことも要因だ。足の速い短期筋が「岩盤規制」などを崩し切れない成長戦略への失望感を強めている。対照的に海外の長期投資家は、政権の安定感や、矢継ぎ早の政策対応などを高く評価しているという。 「アベノミクスのアジェンダ(政策課題)を順々にクリアするにつれて、日本株に対する見方がますます強くなっていく」──。10月中旬、ある外資系証券の日本株営業担当者が香港に出張訪問した際、世界最大級のグローバルファンドのアジア地域担当CIO(最高運用責任者)は、そう話したという。同担当者の出張は3日間だったが、訪問先は20社近くにのぼった。 安倍政権が誕生してから10カ月、国会開会中に限ってみれば、その半分にも満たない間に、安倍晋三首相は日銀による異次元緩和や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、消費増税の実施と文字通り矢継ぎ早に政策を繰り出したと、海外長期投資家は評価している。 政府が18日に打ち出した国家戦略特区での規制緩和概要に対しても、「いま一歩、踏み込み切れていない」(国内証券)との厳しい声もあるが、外資系証券などからは「国家公務員制度改革や特区推進本部の設置など今後、成長戦略を一層推し進めるうえでの土台作りは進んでいる」(BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジスト、丸山俊氏)と好意的な受け止め方も出ている。 財政協議が混乱した米国や財政統合への道のりが険しい欧州が政治リスクを警戒させているのに対して、参院選の与党圧勝で、少なくとも3年間の安定政権を得た日本の政治は、相対的な評価ではあるが、海外の長期投資家を安心させているようだ。 <期待大きい日銀の追加緩和> ヘッジファンドに比べ、年金など海外の長期投資家の買いはロングタームでの投資が期待できる特徴がある。 だが、今までのところ買い上げる規模は小さい。今年4─5月の外国人投資家は、週間ベースで1兆円規模の買い越しもあったが、最近は多くても2000億円程度。日経平均が1万5000円の大台をなかなか回復できないのは、ボリュームの低下が要因でもある。 「Buy my Abenomics」──。安倍晋三首相は9月25日、ニューヨーク証券取引所で世界経済回復のためとして、世界の投資家にこうアピールした。 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式投資比率引き上げや14年1月からのNISA(少額投資非課税制度)開始など国内投資家への期待もあるが、やはりカギは日本株売買の過半を占める海外勢の動きにかかっている。 海外勢のもう1つの特徴は、日銀の金融緩和への評価や期待が大きいことだ。日銀はすでに国債市場で毎月発行額の7割にあたる量を買い取っており、追加緩和の余地は限られるとの見方もある。 しかし、量的緩和第3弾(QE3)縮小を探る米国やインフレに苦しむ新興国などに対して、金融緩和余地は大きいとみられている。何かあれば対応してくれるという「クロダプット」を信頼する海外投資家は増え始めている。 10月下旬に米国投資家を訪問した国内証券のストラテジストは「彼らは政府・日銀の次の一手に対し、固唾(かたず)を飲んで見守っている」と指摘。ヘッジファンドを含めた海外投資家が、次に本格的に動き出すのは日銀による追加緩和観測が高まる年明け以降になるかもしれない、と話している。 (杉山 容俊;編集 田巻 一彦)
ボックス圏のドル円と日本株、決算前のヘッジファンドなど様子見 2013年 11月 6日 17:38 JST [東京 6日 ロイター] -日本株やドル/円はボックス圏での推移が続いている。国内外の材料が一巡したことが背景だが、11月に決算を迎えるヘッジファンドが売買を控えていることも一因だ。 海外年金など長期投資家は日本株買いをたんたんと進めているとみられているが、ボリュームは小さい。国内企業の中間決算は個別物色止まりで、全体市場への波及は乏しく、方向感に欠ける展開となっている。 <売買ボリューム低下> 日経平均.N225は、1万4100円から1万4600円の狭いレンジで、ここ7営業日間推移している。ドル/円も97円─99円のレンジで往来を繰り返しており、動意は乏しい。マクロイベントが一巡したこともあるが、需給的にはこれまで相場を動かしてきたヘッジファンドなどの売買が止まっていることが要因だとみられている。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「ヘッジファンドの多くは11月の20日と30日に決算を迎える。利益確定売りも一巡したようであり、決算が終わるまではしばらく様子見になるのではないか」とみる。 東証1部売買代金は2兆円前後と、個人投資家の短期売買もあってボリュームはそれほど落ちていないが、これまで相場の方向性を決めてきたヘッジファンドの売買が低下していることが、日本株がボックス圏相場になっている背景だ。ドル/円の売買量(スポット、日銀発表ベース)も1兆円を超える日が少なくなってきている。 国内企業の中間決算発表が佳境を迎えているが、全体株の停滞ムードを変えるには至っていない。昼過ぎにトヨタ自動車(7203.T)が今期営業利益予想を上方修正する方針と伝わると、先物買いが強まり、日経平均は一時182円高となったが、市場では「短期売買の材料にされたにすぎず、企業収益に対する期待感の変化はない」(国内証券)との指摘が出ている。 <定まらない景況感> 景況感も定まらない。10月の米ISM指数は製造業だけでなく、米政府機関閉鎖などの影響をより受けやすいのではないかと警戒されていた非製造業も市場予想を上回る強い数字だったが、中身をみると弱さも見えると指摘されている。 ISMの製造業景気指数は入荷遅延と在庫がプラスに大きく寄与していた一方、非製造業は新規受注指数が2カ月連続で低下。「製造業、非製造業ともに内容は、ヘッドラインほどはよくない。景気の要である企業のセンチメントが財政協議の影響でどう変化するかが焦点だ」とSMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は指摘する。 グローバル景気の不透明感が晴れず金融緩和の長期化観測は根強く続くため、欧米やアジアの株価は金融相場のなかで堅調だが、円安期待が後退している日本株は上値が重くなりやすい。 <欧州で金融緩和期待> 金融緩和観測は欧州にも広がっている。7日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利を過去最低の0.5%に据え置くとの予想が多いが、金融緩和期待は続く見通しだ。 ロイターが前週実施した調査では、12月の利下げを予想する声が多かったほか、アナリスト59人中44人はECBが来年初めにも追加の流動性供給を行うと予想している。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジストの植野大作氏は、来年になれば米国は量的緩和の段階的縮小が始まる一方、ECBは「流動性の崖」を回避するために、これまで受動的に進めてきた資産規模の段階的縮小に歯止めをかけると予想。「段階的縮小が始まる米国と、段階的縮小に歯止めがかかるユーロ圏という違いが意識されるなかで、長い目では(ユーロが)1.3ドルを割っていく方向にあるのではないか」との見方を示している。 (伊賀 大記;編集 田中志保)
中国が自由貿易区への国際法適用を検討、人民元国際化目指す 2013年 11月 6日 18:06 JST [香港 6日 ロイター] -中国指導部は、自由貿易区(FTZ)を本格稼働させ、国際貿易での人民元の使用を促す目的で、国内のFTZに国際法を初めて適用することを検討している。
関係筋によると、指導部は外国企業を呼び込むため、FTZへの国際法の適用を協議しているが、見解は一致していないという。 ある香港政府関係者はこの話し合いについて、「当局は、しっかりした法的枠組みとインフラを提供することが世界の企業をひきつけると認識している」と述べたうえで、当局者間の合意には「程遠い」と語った。 銀行関係者は、国際法の適用により、人民元取引の自由化に向けた中国の取り組みが唯一成功した例である香港と、中国のFTZが将来的に競合するようになるとみる。 ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略グローバル責任者のマーク・チャンドラー氏は「香港でのオフショア人民元取引は実験だ」とし、「実験が成功したら本土に戻し、成功しない場合は見捨てるというのが政策方針だ」と述べた。 中国指導部はこれまで、香港をオフショア人民元取引の主要拠点として売り込んできた。現在、中国の国際貿易の約18%は元建てで、その大半は香港を経由している。 香港の成功は、1997年に香港が英国から中国に返還された際に採用された「一国二制度」の統治方式に基づき独自の法と自由が認められたことによって支えられてきた。 中国共産党は9─12日に非公開で開催する第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で、各地で多くのFTZを本格稼働させるための取組みについて決定するとみられる。中国ではすでに複数のFTZが設立されているものの、多くの場合は参加企業の運営をめぐる規則があいまいで、大きな成功は収めていない。 広東省の前海、天津、厦門などにFTZが設立されているほか、上海FTZが最近稼働を開始した。 シンガポールのDBS(DBSM.SI)や米シティグループ(C.N)は上海FTZで最初に支店を開いた金融機関に含まれる。他の外国銀行や企業の関係者は、台北やシンガポール、ドバイなどの金融拠点で認められているような特別な法的権利を中国が認める場合、中国のFTZに参加する意向を非公式ながら表明している。 香港駐在の欧州銀行の越境取引業務責任者は「中国が国内のFTZに同様の法的枠組みを採用する場合、海外の企業や銀行は中国のFTZに殺到するだろう」と述べた。 香港の政府関係者は、国際法適用は大きな転機となるとはいえ、中国の政策当局者の間で適用への抵抗は見られると指摘。「国際法の適用をFTZに認めることは、基本的にはFTZ内での支配権を譲ることになる」と述べた。 三中全会では、改革に向けた政策基盤が示される可能性があるが、詳細なルール、規則、法律の策定にはさらに時間がかかる可能性がある。改革により、オフショア人民元取引の主要拠点として香港を売り込む役割を中国政府にもはや期待できなくなる可能性が想定されている。
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