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一覧表付き日本を代表する30社プロが「会社の寿命」を採点しました すぐ消える会社長生きする会社
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37364
2013年11月05日(火)週刊現代 :現代ビジネス
日本経済は今、激変の真っ只中にある。企業のサバイバルも激しさを増す一方だ。凋落する名門、勃興する新参企業、果たしてこの激動期を生き残るのはどこか。「長生き」できる企業を採点・診断した。
■将来性はあるか
「日本を代表する家電メーカー・パナソニックは間もなく100周年を迎えます。そうした節目に、巨大メーカーは転機を迎えている。
日本にはこうした老舗企業が多くありますが、世界的には珍しい。日本の100年企業の特徴は、利益だけでなく、社会貢献も追求してきたことです。利益だけを求めた企業は、拡大してもどこかで敗れてきた。収益性と社会性、両方を備えることが持続性に繋がっていると言えます」(経営評論家の長田貴仁氏)
日本経済は今、岐路に差し掛かっている。失われた20年を経て、再びこの国は前へと進み始めたが、先行きは不透明。光明は見えても、それが一過性の幻で終わるのか、再成長へのチャンスとなるのか、多くの企業や個人が疑心暗鬼でいる。
そんな中、10月10日に発表した2013年8月期決算で、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが売上高1兆円を突破したことが話題となった。国内衣料品業界初の快挙で、同社の勢いは止まらない。
その一方、やはり飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきたソーシャルゲーム大手のグリーは10月2日、業績悪化に伴い200人の社員の希望退職を募ると発表した。200人は社員(単体)の約11%にあたり、「大リストラ」と言っていい。
パナソニックなど、日本を長く支えた老舗大企業が経営再建に苦しみ、新興のファーストリテイリングやグリーのような企業の成長性や業績も明暗が分かれる。それはまさしく、現在の日本の混沌とした状況を反映していると言える。
日本経済が復活するには、それを牽引し、長く雇用を確保して社会に貢献できる企業が増えることが必須である。しかし、次世代を担う企業がどこなのか、その見極めも難しい。
今回、本誌は経済・経営のプロに、日本を代表する30社の「将来性」を診断してもらった。これから、長く日本経済を引っ張っていく企業はどこなのか。言わば企業の「寿命」診断だ。
■変わる勇気はあるか
まず、最終ページの表を見てほしい。ここでは各専門家に、「それぞれの会社が50年後に生き残っている確率はどれくらいか」を聞き、その回答の平均値を「長寿力」として示している。
アセット・ベスト・パートナーズ代表の中原圭介氏は、こう語る。
「50年後まで生き残っているかどうかは企業の社会性にかかっている。国内雇用を維持し、技術力をコツコツと磨き、変化に対応できること。社会的な役割を果たせる企業しか、50年間という長期間にわたって消費者の支持は得られないと思います」
今回、企業としての寿命がもっとも「長い」と診断されたのは三菱商事だ。
「安泰。日本の大手商社は常に多くの新事業というリスクを取り、その中から収益源が育った歴史がある。そのDNAは続く」(MCPアセット・マネジメント証券チーフストラテジストの井上哲男氏)
「常に時代の社会的要請に迅速果敢に行動できる、リスクテイク経営が定着している」(セゾン投信代表・中野晴啓氏)
かつての総合商社は、海外で原料や製品などを買い付け、それを日本や別の国で売って手数料で儲ける、まさに商社≠セった。現在はそこから脱皮し、成長の見込みのある事業に投資をして育てる、投資銀行的業務が大きなウェイトを占めるようになってきている。
こうした事業の転換、「リロケーション」が生き残りのポイントと語るのは、前出の長田氏だ。
「リロケーション=立地転換とは、たとえば豊田自動織機がトヨタとなって自動車に進出したように、業態を時代に合わせて転換することです。しかもその変化は速いので、新しい業態を常に試行錯誤して作り続けていくことが問われます」
そのトヨタは今回、長寿力が「83」と、三菱商事に続いて高かった。同業のホンダ(同76)、日産(同62)と比べても、将来に対する安定性は極めて高いと判定されている。
「自動車業界は、比較的生き残りやすい業界です。新興国の需要がどんどん上がるでしょうし、さらに世界的にはまだまだ人口は増加しています。トヨタは企業の理念、イズム≠ェはっきりしていて、それをハイブリッドなどの技術力、商品開発力に落とし込めている」(小宮コンサルタンツ代表・小宮一慶氏)
その一方で、「電気自動車化、自動運転車化の2つの衝撃を乗り越えて生き残れる自動車メーカーは現在の半分以下になりそう」(百年コンサルティング代表・鈴木貴博氏)というように、厳しい見方もある。
そのためか、同業種でも日産に対しては、「売上、収益がトヨタの約半分という状態が続いている。長い歴史の間には他社との合併の可能性もある」(井上氏)と辛口の評価も出ていた。
そして、全体的に「長寿力」が低めとなってしまったのは、経営難に苦しむ電機メーカーだ。
今回、パナソニックとソニーは55、東芝が70、日立製作所が74と、やや寂しい結果となっている。
「リロケーションを考えると、20年前には『これからテレビで食っていこうとしてもダメだよね』となっているべきでした」(長田氏)
業界は、パナソニックがスマホ製造から撤退するなど、事業の再編や統廃合を進める。だが、韓国のサムスンを初めとする新興国メーカーとの価格競争は激しさを増すばかりで、次世代の柱となる強みは見えてこない。そのため総じて、評価は厳しくなってしまう。
「パナソニックは20世紀の成功体験から抜け出せない代表的な日本企業。現状の事業選択を躊躇する経営が続く限り、再生はおぼつかない。ソニーも過去のブランドにすがるエリート意識がいまだに強く、事業再編の支障になっている。存続は苦しい」(中野氏)
他方、同じ電機メーカーでも、プラントやインフラなどに強い重電系の日立、東芝に関しては、やや明るい見通しも語られている。
「日立の総合力は電機メーカーでトップ。基礎体力も比較的良好」(日本個人投資家協会理事・木村喜由氏)
「家電に力を入れていたが、うまく転換した。両社とも鉄道などインフラビジネスで将来展望が開けている。今後も新興国のインフラ投資の加速で成長するだろう」(小宮氏)
難点を言えば、この2社は原発メーカーでもあること。これを今後のビジネスチャンスと見る向きも多いが、50年あるいはそれ以上のスパンの中では、原発はリスク要因にもなりかねないことには注意が必要だ。
■世界で通用するか
ここまで見てきた企業のほかにも、相対的に将来性が高いと評価された企業には、三菱地所(長寿力80)、ヤマトHD(同76)、東レ(同73)、日本生命(同72)などがある。
これらは、業種的に時代の変遷や趨勢に影響されにくい企業、他社・他業種の参入が難しいジャンルを押さえている企業、特定の分野で圧倒的な力や強みを持つ企業群と言っていい。
「三菱地所は丸の内の大家さん≠ナすが、意外と海外にもビルをたくさん持っている。日本がジリ貧になっても丸の内は大丈夫でしょうし、安定した経営ができるでしょう」(小宮氏)
「ヤマトHDは、少子高齢化にうまく乗れるサービスに期待。この時代にあって、泥臭いビジネスモデルは簡単にマネできない。特に海外では圧勝できる」(長田氏)
「東レは炭素繊維やユニクロ向け特殊繊維など開発力が抜群。今後も水処理技術など有望市場に向けて開発が進んでいる。50年後も期待できる」(小宮氏)
ただし、人口減少問題の他、TPP(環太平洋経済連携協定)の絡みで外資との競争にさらされる可能性も高い生保業界については、やや厳しい評価もある。
「日本生命は、30年ほど前に比べると財務健全性は落ちているが、現在も安泰。しかし、外資系ネット保険の増勢は止まらず、提携等で後れを取れば、いずれは知らない保険会社≠ノなる可能性はある」(井上氏)
長いスパンで見れば、生保や損保など機関投資家は、抱え込んでいる国債の暴落リスクなど、不確定要素が多いことも間違いない。世界的な業界再編の波に巻き込まれていく可能性もあり、国内トップのスーパー生保と言えど、安泰とは言えないということだ。
そういう意味で、三菱UFJFGや野村HDなど日本を代表する金融機関も、現在の存在感は群を抜いているとはいえ、長期的に見れば課題はある。
「三菱UFJは海外で勝てるかどうか。旧三和の庶民的な精神や発想があれば、アジアでも勝てる気がします。もちろん、再編もあり得る」(長田氏)
「スマートフォンが金融環境を変えつつある。今の金融機関がそのまま50年後も残っている世界は想像したくない。金融業はITの進化とともに、その在り方を根底から変えられてしまうはずです」(小樽商科大学ビジネススクール准教授・保田隆明氏)
アイフォーンを巡るスマホ戦争が象徴的なIT業界は、文字通り日進月歩の世界だ。100年、50年どころか、2~3年でその勢力図は一変するのが通例。
その宿命とも言える構図に、モロに巻き込まれたのが、大規模リストラに踏み切ったグリーである。
グリーは携帯電話でできるソーシャルゲームで一世を風靡した。しかし、ゲーム中の希少アイテムなどを得るため高額の課金が必要なシステム、いわゆるコンプガチャが批判を浴び、同時に旧式の携帯(ガラケー)からスマホへの移行がうまくいかなかったことも状況悪化の原因となった。
「グリーの凋落は、急激に拡大した反動が出たこともありますが、ビジネスモデル自体、簡単にマネされやすいことに原因がある。参入障壁がきわめて低く、極端に言えばパソコンが1台あれば誰でも参入できる。結果として、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが出した『パズル&ドラゴンズ』のようなヒット作が他所から出ると、途端に顧客が逃げてしまうのです」(小宮氏)
グリーなどソーシャルゲーム会社は、設備投資の負担が少ないことによる高収益体質が持て囃されてきた。だがその反面、判断力のない子供たちをコンプガチャに誘引して大金を使わせるなど、その企業姿勢に対する社会の目は厳しくなっている。今後は、業態やその経営理念も、大きく変わっていく必要に迫られていると言えるだろう。
■理念はあるか
そんなIT企業の中で、異彩を放っているのはソフトバンクだ。米国の大手携帯電話会社を買収するなど、チャレンジングでリスクを恐れない孫正義社長の経営姿勢には、賛否両論が渦巻いているが……。
「ソフトバンクは、日本の企業史を見ても例がない特別な企業です。創業から30年ほどの間に、パソコンソフトの販売会社、ADSL事業者、そして携帯電話会社と、中心事業をめまぐるしく変化させ、そのすべてで結果を出してきました」(帝国データバンク産業調査部・昌木裕司氏)
同社が並の新興IT企業と異なるのは、通信インフラの整備という社会貢献も果たした上で、成長を続けていること。業態の変化=リロケーションと、公共性の双方を兼ね備えている点で特筆すべき企業であるのは間違いない。
しかし、そのアグレッシブ経営がどこまで通用するのか。そして、
「カリスマ経営者への依存度が高い会社なので、将来はリスクもある」(証券アナリスト・植木靖男氏)
というように、会社の命運が社長の双肩にすべてかかっているという状況は、不安要素にもなる。
「カリスマ、天才がいなくなると急速に求心力は失われるもの。後継問題は大きなネックとなる」(小宮氏)
同じ問題は、やはり創業経営者のリーダーシップが成長の原動力となっている、ファーストリテイリングや楽天にも言える。
ここまで、主な企業の将来性を診断してきたが、本文で取り上げられなかった企業については、表中の解説を参照していただきたい。長寿力の最下位は、残念ながら東京電力(27)となったが、福島第一原発の事故収束は遠く、血税注入でようやく支えられている現状では、致し方ないものと思われる。
総合的に言えることは、時代やニーズの変化に柔軟に対応できる体質、世界でも通用するサービスや技術力、製品の開発力があるかどうかが重要ということだ。ただし、前出の昌木氏は、それとは別の視点で「長寿企業」についてこう語る。
「長生きしている老舗の企業に共通しているのは、地元の評判がすこぶるいい、ということです。戦争や災害で困った時に、『あの会社に助けてもらった』という声を、そうした企業の地元ではよく耳にします」
つまり、単に自分の会社だけが儲かればそれでいいというのではなく、冒頭でも触れたように、いかに社会に貢献していけるか。顧客を騙すような形になってもカネを搾り取ろうという企業は、やがて綻びが出て退場していく。
慶応大学ビジネススクール准教授の小幡績氏はこう語る。
「日本人は長生きする企業が好きですが、それは企業としてあるべき儲けとは別に、何か軸があるということ。その軸は、やはりお客さんということでしょう。顧客といかに真剣なキャッチボールができるか。本当に好きなものを買おうと考え、本当の意見を言ってくれる顧客を大切にし、そういう良いお客さんをいかに持ち続けるか。具体的な顧客層が見えていない企業は、やはり長生きしません」
どんなに時代が動き、変わっても、ビジネスの根本にあるものは変わらない。それを貫けるかどうかが、企業の命運を左右する。
採点してわかった!「長生きする会社」ランキング
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「週刊現代」2013年11月2日号より
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