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フル生産が続く群馬製作所(太田市)
"売れすぎ"が問題に、スバルのぜいたくな悩み 米国での販売台数は5年連続で過去最高の見込み
http://toyokeizai.net/articles/-/23269
2013年11月05日 中川 雅博 :東洋経済 記者
富士重工業(車名ブランド・スバル)が米国で快走中だ。同社は13年(暦年)の米国での小売り販売台数計画を36万5000台から42万台(前年比8万4000台増)に引き上げたことを明らかにした。5年連続の過去最高更新となる。
今年1〜9月の米国での小売り販売は31万3400台と、2年連続で2割強の増加となった。主力車種の「アウトバック」(日本名:「レガシィ アウトバック」)や「レガシィ」(日本名:「レガシィB4」)が安定した売れ行きを見せているうえに、今年3月に米国での販売が始まった新型SUV「フォレスター」や、「インプレッサ」の派生車種である昨年9月投入のクロスオーバーSUV(スポーツ多目的車)「XV」が牽引役となっている。
■品薄状態が続く
スバルの車が人気になっている理由は、米国人の好みに合うように車幅や車内空間を広くしている点だ。マーケティングや安全性の側面からの訴求、有力ディーラーが取り扱いを拡大していることも大きい。
米国の順調な販売を受け、富士重は14年3月期の通期業績予想を上方修正し、売上高2兆3000億円(前年比20.2%増)、営業利益2780億円(前年比130.9%増)とした。売り上げ、利益のいずれも過去最高を更新する見込みだ。
ただ、この好調ぶりが富士重の頭を悩ませる事態になっている。生産能力の逼迫だ。決算会見に臨んだ吉永泰之社長は「生産については逐次能力を増強してきたが、1年で約9万台も増えるとは思っていなかった」と“想定外”であることを認めた。同社によれば、米国での全車種の平均在庫(9月末時点)は30日分。売れ筋の「フォレスター」は約15日分と、品薄状態が続いている。
富士重は米国の生産子会社、スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ(SIA)の年間生産能力を14年夏に現在の27万台から30万台、16年末に40万台に増強する投資計画を公表済み。さらに群馬製作所の本工場を14年夏に現在の18万台から20万台に増強する計画を発表した。
同社が「チョコット能増(能力増強)」と表現するように、需要に応じて少しずつ生産対応を進めるのがスバル流だ。
吉永社長は「たとえば新たに工場を建設して生産能力を20万台に増やしたとしても、今の販売の好循環を守れるか。ちょっと足りないくらいがちょうど良い」と話す一方で、「米国のディーラーからは全然足りない、と言われていますが…」と明かす。
さらに、今年夏に日本で投入した「XVハイブリッド」を米国でも発売する予定だ。「ハイブリッドも生産能力を倍にしているが、米国で発売するとまた足りなくなる。正直怖い部分もある」(吉永社長)。
■トヨタからの受託生産は「続けたい」
実は、SIAの年間生産能力27万台のうち、スバル車の生産能力は17万台。残りの10万台は筆頭株主であるトヨタ自動車の主力車種「カムリ」の受託生産だ。もともとは、米国での生産が落ち込んだ07年にトヨタから救済を受ける形で始まった。だが、スバル車の生産能力が逼迫しているだけに、一部報道ではトヨタからの受託生産を取りやめ、スバル車の生産に振り向ける方向で協議に入ると取りざたされている。
これに関し吉永社長は「当社からやめたいという要望はまったくない。今まで通りやらせていただきたい。ただトヨタ側で計画があるのであれば、そのときはきちんと検討せざるを得ない」と話す。
富士重は米国でのシェアが2%強のニッチプレイヤー。巨大の投資をして生産能力を急拡大するのはリスクが高い。一方で、現在のような品薄状態では機会損失につながってしまう。富士重にとってうれしい悩みではあるが、難しい舵取りが続く。
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